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55.その歌姫は、キャパシティを超える。

 王城にあるアーサーの執務室で、まるで自分のソファであるかのようにどかっと座って足を組み、不機嫌を全面に貼り付けているルヴァルは、


「……いつまで笑っている」


 隠す気ゼロで腹を抱えて笑う悪友(アーサー)に冷たく言葉を投げかける。


「いや、だって何で一人で来たのかと思えば、自分の妻なのに害にしかならないから面会謝絶って……お前のところの使用人は相変わらずだな」


「……うるさい」


 アーサーの揶揄いに青筋を立てたルヴァルは、今朝の出来事を思い出した。


******


 ベッドに連れ込みあのまま一緒に寝たはずのエレナがいなかったので、エレナの部屋まで彼女を迎えに行けば、ドアの前にリーファが立っていた。


「おはようございます、お館様」


 恭しく礼をしてみせたリーファは、


「早速ですが、お引き取りください。当面の間エレナ様とは面会謝絶とさせていただきます」


 淡々とした口調でそういった。


「はぁ? 意味がわからん」


 なぜ急に面会謝絶? と首をかしげるルヴァルに、


「本当に、心当たりはございませんか?」


 と冷ややかな声がそう尋ねる。


「俺はレナに用がある。そこをどけ」


「聞けませんね」


 本来の雇い主であるルヴァルに対し、リーファは強硬な姿勢を崩さない。

 ルヴァルが動くより早くリーファは抜刀すると、


「ここより先、何人も通しませんよ」


 そういって言う床に線を引く。


「私、お館様直々に仰せつかっておりますので。"エレナを害するものは、何人であっても例外なく排除せよ"と」


「……つまり、俺が害だって言いたいのか?」


 ルヴァルはそう言いながらリーファの引いた線をあっさり越える。


「ええ、今のエレナ様にとっては」


 それを見たリーファはにこっと笑い、迷いない太刀筋でルヴァルに切り掛かった。

 軽々とそれを受けて立つルヴァルとの間で硬質な音が響く。


「どけ」


 短い命令を告げるルヴァルに、


「お館様が考えを改められるまでどきません」


 すっと紅玉の目を細めルヴァルを捉えたリーファは、左右の手でそれぞれ細めの刃を構える。


「お館様、お引き取りを」


「はっ、意味も分からず引く気はない」


 ちょうど寝起きで運動したいと思っていたと好戦的にリーファの視線を受け止めたルヴァルは、ニヤッと口角を上げると剣を構える。

 床を蹴ったルヴァルは軽々と飛び上がり、リーファに向かって攻撃を仕掛け、彼女の刃を叩き折る。

 その攻撃を受け流さず真っ向から受け止めたリーファは手持ちの刃を捨てると同時に足を高くあげ、ブーツに仕込んでいたナイフでルヴァルの首元を狙うが攻撃は届かず、ナイフは弾かれ壁に刺さる。

 2手3手と連続的に仕掛ける高速の攻撃を互いに交わし合い、両者まったく引く気のない争い。

 それは唐突に終わりを迎える。


「"捕縛"」


 ノクスの声と共に鎖が床と壁から現れ、一気にルヴァルを拘束した。


「!?」


「ノクス遅いっ!!」


 壁にもたれ肩で息をするリーファは、ルヴァルをサシで止めるなんて自殺行為なんだけどと文句を述べる。


「いや、このヒト捕えるの難しいんだって」


 ほとんどの術式効かないからと呆れたように声を上げたノクスは、


「陽動ご苦労」


 とリーファを労う。


「どーいたしまして。修理は任せた」


 ぐるっと辺りに視線を彷徨わせ、リーファはノクスに親指を立てる。


「って! 派手にやり過ぎだろうがっ!! 何でリカバリーかかってないとこでやるんだよ」


「構ってる余裕がなかったからに決まってる! ノクスならできる。やればできる子。あと任せた」


 ついでに義足の修理もよろしくとリーファはしれっとやる事を上乗せした。

 2人のやり取りを見ていたルヴァルはすっかり興を削がれ、抵抗する気力も失せたので。


「とりあえず説明求む」


 話し合う方向で白旗を上げた。


「あらあら〜派手にやったわねぇ」


 コツコツとヒールを鳴らしながら現れたソフィアはこの惨状を見て楽しげな声を上げる。


「でももう少し静かにしてくれるかしら? やーっとエレナ様が寝付いたというのに、高熱がぶり返しちゃうじゃない」


「エレナが熱? どこか具合が悪いのか!?」


 昨夜はそんな風には見えなかったが無理をしていたのかもしれないと焦った様子を見せるルヴァルの前まで来たソフィアは盛大にため息を付き、


「知恵熱です」


 と診断名を告げる。


「は?」


「いえ、ですから知恵熱です。考え過ぎでダウンしたんですよ、お可哀想に」


 おいたわしやと大袈裟にそう言ったソフィアは拘束されているルヴァルの喉元にびしっとボールペンを突きつける。


「私常々お館様の事を脳筋だアホだと思っておりましたが、救いようがございませんね。いかに私が天才医師でもバカにつける薬はございません」


「……おい」


 やれやれと肩を竦めるソフィアはルヴァルの言い分をまるっと無視し、


「いいですか、お館様。同意なき行為はどんなものであれ犯罪です。たとえ夫婦でもですよ」


 独り善がりダメ絶対。

 と冷たく言い放つ。


「はぁ、同意……って」


 言われたルヴァルは昨日のエレナとのやり取りを思い出す。

 特に嫌がられた覚えはないが、と考えたところで。


「お館様、自覚してから手を出すまでが早過ぎです。ちゃんとご自身のお気持ちをエレナ様に伝えました?」


 いい大人が何やってるんですか、とため息をつきつつリーファが話に割って入る。


「書類上は確かに夫婦かもしれませんけど、今までそういう事をして来なかった上にエレナ様にそんな役割一切求めてなかったでしょう? そうなりたいならちゃんと手順を踏んでエレナ様と関係性を築いてください。でないと大変な事になりますよ」


 なお首を傾げるルヴァルにノクスはトドメのように、


「そうそう。ひーさんが愛人家業って何すれば良いのかしら? って真顔で聞いた時はさすがに引いたわ」


 そこの2人(護衛と専属医)の怒り具合にとルヴァルが寝ていた間の出来事を端的に述べる。


「……愛人、って」


「ひーさん、ぶっちゃけお館様から好かれてるとか微塵も思ってないからなぁ。基本的にネガっ子だし」


 それで悩み過ぎて熱出した、と事の顛末をノクスは告げた。

 お分かりだろうか? とリーファとソフィアの目が語るのを見てルヴァルは冗談ではないと理解する。


「そんなわけでお館様が態度を改めるまで面会謝絶とさせていただきます。また倒れても事なので」


 ご理解頂けたなら良かったですと言ったソフィアは、主治医の指示はお守りくださいねと脅迫的な笑顔で告げる。

 一方通行だったらしい事を今更知ったルヴァルは改めて出された接近禁止令に頷かざるを得なかった。

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