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38.略奪者は楽しげに運命の糸を引く。

******


ーーノルディア王国、某所にて。


「随分と、綺麗に育ったじゃないか」


 待ち望んだ知らせを受けたその人、ノルディア王国王太子であるカルマ・イーリス・ノルディアは、満足気にそれを読み口角を上げる。

 

「向こうに着いたら、目一杯可愛がってやらないとなぁ」


 オレンジがかった茶色の髪を掻き上げて、クスッと笑みを漏らす。


「マリナ、キミは本当に最高の拾い物だったよ」


 カルマは自分に対して犬のように尻尾を振るマリナの姿を思い浮かべる。だが、油断してはいけない。忠犬のように見せかけて、彼女は意外と野心家だ。

 傲慢でプライドが高く、そして欲望に忠実で、自身の破滅を恐れない。

 つまらない、と思ったならきっとあっさり手のひらを返し狼のように喉元を食い破りに来るに違いない。


「まぁ、そんなやんちゃなところもマリナの魅力ではあるけれど」


 綺麗な花に擬態して、自身の中にある毒を持て余し燻っていたマリナ。

 アレは天性の才と言っていいほどの根っからの毒婦だ。

 だからこそカルマは彼女に声をかけた。

 それから僅か数年。彼女は標的マシール王国で、子爵令嬢を演じながらカルマの期待以上の手駒に育った。


「そろそろ"破滅の魔女"を返してもらおうか。アレはうちの道具だ」


 古い言い伝えのように記されている魔女の記録を手に取りカルマは不敵に笑う。

 かつてノルディアに混沌をもたらし逃亡したその魔女は、ノルディアでも簡単には手を出せない程の地位を他国で築き、名を変え今も生きている。

 彼女一人を取り戻す程度の事に時間を費やすくらいなら、いっそのこと国ごと奪い取る方がいい。

 そのための芽はもう何年も前から仕込んでいる。

 自国民を送り込むよりも警戒されずに事を進めるために、その国にすでに根付いている人間の不満や悪意、弱みを見つけ出して使う。それはカルマの常套手段だった。


「ふふ、私の可愛いマリナ。お待ちかねの国取りゲームの時間だよ」


 カルマは招待状を手に取って、綺麗に笑う。


「さぁ、一緒に楽しもうか?」


 マシール王国建国祭。

 それは、カルマにとって今から始める一方的な略奪行為の最初のイベント名だった。


******

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