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20.反逆の芽は闇夜に育つ。

 闇夜に紛れて訪れた教会の指定された密会場所でマリナは慣れた手つきで壁の細工を解除すると隠し通路に入る。

 真っ黒なフードを外したマリナはコツコツコツコツと足音を響かせて開けた空間に出ると待ち合わせの人物を見て微笑んだ。


「相変わらず、派手な装いだな」


 情報交換と交渉の場に真っ赤なドレスと高いヒールで現れたマリナを見て、仮面の男が呆れた口調でそう言った。


「あら、素敵な殿方に会うのだもの。着飾るのはレディーとして当然のことだわ」


 頬に手を当てふふっと笑ったマリナは、さして気にするでもなくそう切り返すと、


「さっそくだけど、バーレーとアルヴィン辺境伯の動向を教えてくださる?」


 まるで宝石店でショッピングでもするかのような気軽さで、マリナは小首を傾げてそう言った。



「へー意外。もっと冷遇されているか、いっそ人体実験でもされているのを期待していたんだけど」


 報告書を読んだマリナはつまらなそうにそう感想を漏らす。


「お父様が多額の金で売ったのは知っていたけれど、あの女を寵愛するでもなく、かと言ってカナリアの能力を調べるために魔法分析にかけるでもない。辺境伯はアレを一体どうするつもりなのかしら?」


 形の良い眉を寄せ、マリナは悩ましげにつぶやく。


「さぁな。探ってはいるが、意図がさっぱりわからない」


 仮面の男は肩を竦めると、


「カナリアが変革の障害になるならいっその事事故にでも遭ってもらおうかとも思ったんだが、何分ガードが固くてな」


 ため息混じりにそう漏らす。


「あら、ダメよ」


 マリナはパチンとわざとらしく手を叩き、小さな子どもみたいに頬を膨らませる。


「簡単に殺してしまってはつまらないわ。お姉様にはもっともっと苦しんで欲しいの」


 とても無邪気にそう笑う。


「それに、足を失くしたとは言え"戦乙女"が側仕えじゃ、おいそれとは手が出せないでしょう」


 すっと、エメラルド色の瞳が細められマリナはさらっとそう口にする。

 仮面の男が息を呑む雰囲気に、


「戦場で活躍した方達の名前くらい知っているわ。戦乙女リーファ・ブランシェは特に有名じゃない」


 動じる事なくにこやかにマリナは言葉を続ける。


「現在この国を支えている2大柱。難航不落の要塞都市バーレーを治める北部のアルヴィン辺境伯と王太子の後ろ盾でもあるサルビス公爵家。その実働部隊とも言える経済を握る南部のウェイン侯爵。金と武力。その両方を王太子が手中に収めている限り、この国に変革をもたらすことはできないわ」


 革命って素敵な響きだと思わない? とにこっと微笑みながらマリナはそう口にする。


「失礼した。あなたは第2王子のただの情婦ではないんだな」 


「あら嫌だ。そんな陳腐でつまらない関係に括らないでくださる? 私と彼は同志よ。自分と血を分けたきょうだいというモノが気に入らない、という共通点を持ったね」


 ああ、その点ではエリオット様も同志と言えるわねとマリナは楽しげに笑う。


「随分と婚約者と仲が良いようで」


 仮面の男の皮肉めいた言葉にも、


「ええ。私の言う事何でも聞いてくれるの。可愛いでしょう?」


 悪びれることなくそう言って、マリナは全く気にしない。


「扱いやすくて素敵よ。いずれ侯爵家を乗っ取ってもらわなくちゃいけないし。ふふ、でもお姉様ったら男の趣味悪いわ。アレは優しいのではなく、優柔不断もしくは意志薄弱っていうのよ」


 まぁ、他を知らないのだから仕方ないけどとエレナを見下した態度と隠す気のない悪意を晒す。

 まるで美しく咲く毒華のようだと仮面の男はマリナを興味深げに観察する。その視線を真っ向から受け取り、扇子で口元を隠したマリナは、


「あなたにも期待しているわ。亡国の皇子様?」


 凛とした声でそう言った。

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