私の命の終着地を探して。〜元婚約者さん、私の事なんて忘れて幸せになってください〜
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――私は、雨の日に馬車に轢かれて呆気なく死んでしまった。
庭の外れの方にある私の石の前で、婚約者……いや、元婚約者がさっきからずっと泣いている。顔が溶けてしまうんじゃないかとこっちが心配してしまう程だ。
生きているときは、泣いている姿なんか見たことも無かった。寧ろ、笑顔すら数えられるくらい。
俯いている元婚約者の背に実際は浮いているけど座って、何時もの笑顔、何時もの話し方で元婚約者に話しかけてみる。
「そんなに泣かなくても、ミリュエさんはもうこんなに元気ですよ」
本当なら、私のおちゃらけた言葉に彼が言葉を返してくれるのに、今日はうんともすんともない。
当たり前か。だって私はもう死んじゃったんだから。
彼との出会いは、私達が6歳の頃だった。お父様にお茶会に連れて行かれて、そこで仏頂面だった彼に出会ったのだ。
本当はお茶会ではなく、私の婚約者との面会だったとは、後で知った。
私のことを、ジッと不機嫌そうに見る彼に、手を差し出す。
「私はミリュエ。貴方と仲良くなりたいです」
ニコッと笑ってみせると、彼は自分の名前を名乗った後に、私の手を握ってくれた。
それから、10年の付き合いだった。
私達の婚約者としての生活は、とても順調だったと思う。燃え上る様な恋ではなかったけど、相手を深く慮れる、そんな愛が私達にはあった。
そんな風に、彼に対して恋愛感情を私は持ち合わせていなかったから、私の石の前に来るときはいつも一人なのに、今日は知らない女性を連れていても、特にショックは感じなかった。
「ちょっと〜、隅に置けませんね、このこの」
そうして小突いてみても、彼らはなんの反応も示さない。ただ、女の人が「ごめんなさい」と繰り返すだけだった。
私から婚約者を取ってしまったと思っているのだろうか。それなら本当に気にしないでほしい。寧ろこんなにかわいい子が新しい婚約者となって鼻が高いくらいだ。
暫く二人が黙って祈ってたかと思うと、女の人が立ち上がって、彼に話しかけた。
「アルバート様。もう冬で冷えます。帰りましょう」
「あぁ、そうだなビオレッタ」
そうだ、元婚約者の名前はアルバートだった。もう私にはこの世とのけじめをつけるためにも呼ぶこと許されない、彼の名前。
それを、彼女――ビオレッタさんは、容易く呼んでみせた。
「そっかぁ、死ぬってこういう事か」
今まで、言葉は通じなくても、私も、周りも何も変わらないと、変な考えを持っていた。そんな事、あり得るはずがないのに。
死んだらもう、同じ場所にいても、私はきっと見えない壁に阻まれているんだ。二度と、交わることなんて出来ない。
彼等が去った後、チラチラと雪が舞い落ちてくる。こんなに寒くなっていることにも、私はちっとも気づけなかった。
チラチラ降っていた雪が、ゴウゴウ降りになって、次の日には一面が銀景色だった。朝、石の上に腰掛けてボー、としていると彼が一人で歩いてきた。私の石の前で、彼は口を開く。
「……彼女との、婚約が決まった」
それはとてもめでたいことだ。それなのに何故、そんなにも罪悪感に濡れた様な顔をするのだろう。
言い訳をするような口調で、彼は続ける。
「君が居なくなってから、僕の世界は色が失くなったみたいだった。そんな時に、僕に寄り添ってくれたのが、ビオレッタだったんだ。彼女の側は心地よかった。ミリュエの事を名前ぐらいしか知らないはずなのに、同じくらいの悲しさを共有しているようだったから」
そんなに怯えなくていいのに。寧ろ私は安心しているのですよ。貴方が大事だと思える人と婚約する事が出来て。貴方は、表情は出る事はあまり無かったけど、マメで、とても誠実だったから。
だからこそ、このまま一生一人でいる気なのではと心配したから。
「ごめん」
ポツリと彼が呟く。また泣いていた。最近彼は泣き虫だ。
「もっともっと君に、言葉を重ねれば良かった。君の好意に甘えていた。こんな事になるなら、もっと一緒にいれば良かった。もう一度で良いから、君に会いたい、ミリュエ」
情熱的な言葉、だけどそれは、ビオレッタさんに言ってあげてほしい。彼女はまだ生きているから。私の事なんか忘れて幸せになって欲しい。
「貴方は幸せになっていいんだよ」
その権利が貴方達にはあるから。
でもやっぱり声は届かなくて、私も一筋涙を流した。
❖❖❖
ようやく泣き止んだのか、彼が帰ろうとする。だけど言い忘れた事でもあったのか、私に振り返った。
「君は、自分には何もない人間だと思っていたのかもしれない。だけど、どうか声が届くなら聞いて欲しい。君の周りには、沢山の人がいたよ。それは家柄なんかは関係無い。君のその愛が、とても優しかったからだ。――君には、誰にも代えがたい価値があったんだ」
もぞもぞとした。心臓が一つ大きな音を立てた。彼には見抜かれていたんだ、私の心の劣等感。
だって私にあるのは『公爵令嬢』、『格好いい婚約者』、『綺麗な顔』ぐらいだった。でもこれは、誰かが私にくれたものであって、私が自分自身の力で身につけたものじゃない。
頭は普通くらいだし、礼儀作法だって人並み。よく出来るのは人当たりくらいで、優しい人になれるよう頑張った。
そうしたら沢山の人が集まってくれたけど、次に訪れたのは不安だった。
私には何もない事、皆に気づかれたらどうしよう。そんな気持ちを何時も身近に感じながら、生きていた。だから、人助けをしなきゃ、良い人でいなきゃ、と私は心の中にはずっと、焦りがあった。
私が死んだ日もそうだった。
カフェテラスで皆でお茶をしている時、一人の小さな女の子がすぐそこの道路で転んでしまった。雨で見通しが悪いせいか、その子が汚かったせいか、誰も助けに入らない。
だから私が行った。女の子を助け起こす。
「ありがとう、お姫様」
「いいえ」
何か音がした。雨でよく見えない視界の中で、さっきまで一緒にいた皆が、焦ったように手を振っている。
その手の指す方向に目を向けると、もう近くに、大きな馬車があった。私と女の子に気づいていないのか、止まる気配は無い。
咄嗟に女の子を突き飛ばす。
そして、逃げ遅れた私は轢かれた。
血にまみれて体が熱い。朧げな意識の中で、女の子は無事そうだった。それにホッとする。
近くからは、私を呼ぶ声がする。あらあら、皆さん濡れるの嫌いそうだったのに走ってきてくれたの? そんなに濡れて、ボサボサになって。
なんだか涙が出た。
ゆっくり瞼を閉じる。
そしてそのまま、私の人としての生は終わった。
そこまで思い出して、私は小さく笑みを作る。
――私に誰にも代えがたい価値がある? それはきっと間違いだ。だから私はまだここに居る。
だって、私は命をかけて人を救ってもまだ、自分に価値を感じられない。
自分に価値が欲しい、それが私の未練。きっと一生叶わない願い。
あの日と同じ様に、私は瞼を閉じた。
❖❖❖
「ミリュエ様、見舞うのが遅くなって申し訳ありませんでした」
私の友人達が石の前で祈った。どうやらあの事件の日から、精神などが参ってしまい、自宅療養をしていたらしい。そんな風に心に傷を負わせてしまって申し訳ない。
友人の一人が、口を開いた。
「ミリュエ様が、私のコンプレックスだったそばかすを可愛いと褒めてくださった時、とても嬉しかったです」
それに追随するように声が上がる。
「私も、ミリュエ様に将来の事で悩んでいた時力になってくださり、ありがとうございました」
「私は、まだ作法がしっかりと出来ていない頃、ミリュエ様に庇って頂いて、とても嬉しかったです」
合わせた訳でもないのに、皆の声が重なる。
「ミリュエ様、こんなにも沢山の幸福を、ありがとうございました」
まるで色とりどりの花を貰ったみたいな気持ちになる。嬉しくって切なくって、心臓がきゅぅ、とした。
暫く辺りには沈黙が流れる。
「冷えますので、そろそろ屋敷に入りますか?」
そんな沈黙を、いつの間にか現れたビオレッタさんがかき消した。
「貴方……」
「ビオレッタと申します。アルバート様の、新しい婚約者です」
新しい婚約者、という言葉に皆が気色ばむ。一人が口を開いた。
「なんで、なんでもう婚約し直したんですか?」
「え?」
「どうしてまだミリュエ様の魂がここに居るかもしれないのに、アルバート様と婚約したんです。ミリュエ様は気になさらないかもしれませんが、私は、貴方とアルバート様を心底軽蔑しましたわ」
私がハラハラと見守っていると、ようやくビオレッタ様が口を開いた。
「アルバート様に今必要だったのは、『義務感』だと思ったからです。きっとあのままだと、アルバート様は死んでしまっていた。だから、私という新しい婚約者を作ることによって、婚約者を残して死んではいけない、そうやって思わせるしか、引き止める術はなかったんです」
確かに、一人で彼が私を見舞っていた時、今にも彼は死んでしまいそうだった。だけどビオレッタさんと一緒に来るようになってから、彼は後悔を滲ませているが、随分と安らかな顔になったと思う。
「でも、私がアルバート様の事が好きなのも本当なので、きっと私は、一生自分を許せない」
ビオレッタ様は、ポケットから一枚のハンカチを取り出した。
「でも、これだけは知っていて欲しいのです。私がアルバート様を気になりだしたのは、ミリュエ様が居たからだと」
はて、どういう事だろう。皆も私と同じ様な顔をしている。そんな皆に一つ笑いかけてから、ビオレッタさんは続けた。
「昔、入学式の日、魔力が緊張のせいか昂って体調が悪くなって座り込んでいた私に、付き添ってくれたのがミリュエ様だったのです。このハンカチとお水をくださり、私が落ち着くまでそこにいてくださいました」
キュッと大事そうにハンカチをビオレッタさんは抱きしめる。
確かに思い出して見れば、後輩となる子たちの入学式の日、気持ち悪そうにしていた子に付き添ったしたことがある。それがビオレッタさんだったのか。
「それから、このハンカチを返したいと、ずっと思っていて、だけどミリュエ様はとても高貴で私が気安く話しかけられる人ではありませんでした。それでミリュエ様を眺めていた時に、そのすぐ側に居るアルバート様に気づいたんです」
ビオレッタさんの話を遮るように、友人の一人が声を出した。
「それで、二人の仲を割いてやりたいと思ったと?」
ビオレッタさんの顔が青くなる。慌てた様に首をビオレッタさんは振った。
「いいえ、いいえ断じてそんな事は御座いません。私は確かにアルバート様に恋に落ちました。ですがその気持ちと同じくらいミリュエ様の事も大好きだったんです。奪う気なんてありませんでした。信じてください」
彼女の言葉には、嘘が無かった。
「私は信じますよ」
だからそう声をあげてみた。聞こえる事はないだろうけど、あげずにはいられなかった。
それまで流暢に話していたビオレッタさんの話が止まった。罪悪感に駆られたようなそんな酷く真っ青な顔をしている。
まるで罪人の様な口調で、ビオレッタさんは吐露した。
「本当に奪う気なんてありませんでした。……しかし、ミリュエ様の訃報を知った時、私は少しだけ、もしかしたらアルバート様と……、と不埒な思いも抱きました。
だから、私は確かに皆さんが言う通り、嫌な女かもしれませんね。私は大義を使ってアルバート様の隣を射止めたのですから」
ぽたりとビオレッタさんの目から涙が溢れる。
「私はきっともう、ミリュエ様には許してもらえない」
「――それを言うなら、私だってそうかもしれません」
唇を噛みしめ、友人が言葉を漏らした。
「私はあの事件の日、雨で濡れるからと、女の子を助けに行くのを躊躇しました。ミリュエ様は悩みもせず助けに入ったのに。もし私も助けに入ってたら、私が馬車に気づいて、ミリュエ様も助かったかもしれないのに」
「それを言うなら私も」
「私も、一緒に助けに行かなかった」
皆が懺悔する様に言葉を発する。私に許してほしい、と祈っているような様を見て、ここは本当に墓場みたいだと思った。
行場のない感情がここに留まっている。一言私の声が聞こえたなら、皆は救われるのかと思ってしまった。
――あぁ、こんな、救われない場所が終着地だなんて事があっていいのだろうか。
でも、もう死んだ私にはどうすることも出来ない。それが歯がゆくてしょうがなかった。
❖❖❖
死にたい人間、という者はいつの時にもいるもので、それに巻き込まれる者、それの理由にされる者はたまったものじゃないと私は思う。
だけど、彼女の死にたい理由に私は存在していた。私が引き金を引いてしまった。だったら、責任を取らねばならないと思うのは、元来の性格か。――それとも、そう求められたからなのか。
私の前には、あの日助けた少女が薄着でいた。こっそり侵入したのだろう。少女は私の前で座り込んだ。
数日前に雪が降ったばかりなのだ、寒いはず。少女の肩は震えていた。
どうしたら良いのかと悩んでいると、不意に少女の口が開いた。
「お姫様、あの日は私の命を救ってくれて、どうもありがとう」
そして、私を嘲る様な、幼い顔に似つかわしくない乾いた笑みを浮かべた。
「でも、お姫様が死んじゃったから、私お父さんとお母さんに怒られて、殴られて、家を追い出されちゃった」
「え」
嘘だ。だって、私は良いことをしたはずなのに。なんで。
そんな私の胸中には答えず、少女は私の石に腰掛けた。
寒そうに手を少女はすり合わせる。鼻を赤くしながら、少女はぼやくように言った。
「馬車の持ち主の人にも恨まれて、私、どう生きたってきっと殺されちゃう。それならせめて、ここで誰にも邪魔されずに死にたい」
「そんな事、私ちっとも知らなかった」
「そもそも私、貴方に助けられなくたって起き上がれた。私だけなら死なずに済んだのに」
知らなかった。全く知らなかった。
知らないのは、悪だった。
「だって皆、私の行動を褒めてくれたわ」
――あぁだけど、そばかすを褒めたあの子は、私の白い肌を羨むと同時に少しだけ妬んでいた。
将来を悩んでいたあの子は、優秀で格好いい私の婚約者を欲し、悩みを聞く私をうざがっていた。
礼儀作法で悩んでいたあの子だって、腕のいい講師を付けられる私を疎ましく思っていた。
私の行動に、ありがとうと感じたのも本心。だけど恨んで妬んで憎く思ったのも本心。
そんな感情を、私は見ないようにした。だって否定されでもしたら、今度こそ私という人間には何もなくなってしまう。
父は、厳格な人だった。
「お父様、歴史のテストでこんなに良い点が取れました」
「ふむ。……しかし、これが解けてなぜこの問題が解けない? これも一文字間違えて減点されている。もっと精進しなさい」
「……はい」
出来た事より、出来なかった事をあげつらう人だった。
どんな事をしても、どれだけ良い点が取れても、結局最後に残るのは「もっと精進しなさい」だけ。
こんな日々に疲れていた。だけどどんなに願っても私の人生は変わらない。
もう私の大事な何かすらいなくなろうとしていた時ふと思い出したのは、婚約者との初めての顔合わせの時のこと。
無自覚ではあったが婚約者である彼に愛想を振りまき、人を寄せ付けなかった彼と仲良くなった時、お父様に言われたのだ。
「よくやったな。優しい性格をした娘を持って、私も幸せだ」
私が優しくすると、お父様は幸せ?
成る程。私が頑張るべきだったのは、人に優しくすることだったのか。
その日から、私は親切になれるよう頑張った。
最初は侍女に欲しがっていた物を贈った。だけどそんなに侍女に物を贈っては駄目だと叱られてしまった。
次に学園で色んな人に親切にした。男女、身分関係なく。
そうしたら、「男に媚を売っている」、「自分の方が身分が高いからってこっちを見下している」と陰で言われるようになった。
誰かに親切にした分だけ、それと同じくらいの悪意が返ってくる。
「本当に、私って何のために生きてたんだろう」
命をかけて救った少女にも嫌悪されて、お父様は見舞いにすら来ない。
元婚約者も、ビオレッタさんも、友人達も、きっと数年後には、この墓場なんてきっと忘れてしまう。
震える少女をゆっくりと見る。どうして、こういう日に限って誰も来てくれないのだろう。
「誰か、この子を助けて」
どうして誰もが、死んだ後に、お礼なんて言うの? 謝罪をするの? 後悔するの?
生きている時は、何もしてくれなかったくせに!
その瞬間気づいた。誰もが無条件に人に優しくなど出来ないのだ。でもそれが、私には出来たのだと。
「……あ」
私は走り出した。この墓場から出れないと思っていたのは思い込みで、あっさりと私は走り出す。そのまま彼等の住む屋敷にたどり着いた。
「何処、何処に居るの!?」
必死に駆けずり回る。
あの、人を助けたいと思う感情はつくられたものだと思っていた。だけど違った。あの感情は私の体に馴染んでいた。
だから私は誰に何を言われても自分の行動を卑下することはなかった。
だって、私は私が大好きだから! それと同じくらい周りの人も好きだったから!
「どうしてこんな、簡単な気持ちに気づかなかったんだろう。誰かに手を差し伸べられる私は、素晴らしいんだって」
人の気配を感じた扉をくぐると、そこにはビオレッタさんと彼がいた。
「お願い、死んでしまいそうな子がいるの。お願い」
偽善でも良い。あの子に死んでほしくない。
お茶を飲んでいる二人の周りを叫びながら周る。だけど二人はうんともすんとも言わない。
静かにお茶を飲んでいたビオレッタさんの手が止まる。
「どうかした?」
「……いえ、なんだか今ミリュエ様の声が聞こえた気がして」
そのビオレッタさんの言葉を聞き、慌てた様に彼はコートを羽織った。
「なんだか胸騒ぎがする。行こう」
そして、私の墓場に来た二人によって、あの子は保護された。
良かった。
❖❖❖
それから三年の月日が流れた。
あの子は二人の養子としてスクスク育っている。そして今日は、そんな二人の結婚式だ。
なんと二人は、私の家族、知人全員から祝福されるまで頑張ったのだ。
お父様に彼が殴られたり、友人に紅茶をかけられた時は焦ったが、彼等は本当に全員と和解した。
「それにしても、私ってめちゃめちゃ愛されていたんだな」
ふふふっ、と石の前で笑っていると、ウエディングドレスと白いタキシードに身を包んだ二人がやって来た。
「僕達は今日結婚するよ」
あともう少しで結婚式が始まるのに主役がここにいていいのかとため息をつく。
「今まででありがとう。そして、すまなかった」
「ミリュエ様、ありがとうございました」
私は嬉しくなって二人の背中を叩いてこう言った。
「赦してあげるから、どうか幸せになってね!」
二人が、顔を見合わせた。
そして、ふわりと微笑む。
そんな二人を見守っていると、私の体がキラキラと光りだした。どうやらお迎えのようだ。
―――さようなら。
未来でどうか、会えますように。
きっと生まれ変わった先の私の居場所が、命の終着地だから。
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