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8.猫、拠点造りを始める

 マイホーム建造予定地が決まった。


 ぼくの希望通り起伏のある山岳地で、とっても自然豊か。周りに雪山もあるし、洞窟もあるし、湖もある、そんな場所。

 ちょっと足を延ばせばシジマの住む静寂の森や、あと海とか砂漠とか沼とかもあるよ。

『ちょっと足を延ばせば』っていうのは、マシロが高速で移動した場合のことだけど。マシロってあんなにでぶっちょなのに、本気だせばびゅんびゅん空も飛べるんだよね。


 この辺りは少なくとも『遠回しに苦情を入れてくる程度に発言力を持った幻獣はいない』とのことで、ご近所問題も気にしなくてよいそうだ。

 色々突っ込みどころはあるけれど、あんまり気にしてても埒が明かない。ぼくはもうその辺のことには目を瞑ることに決めた。

 怖がられようともマシロは別に悪いことをしていないのだし、堂々と引っ越しを進めようじゃないか。


 手始めにぼくは、小さな山の中腹辺りに一軒の家を建てることにした。

 家っていうか、作業場、倉庫みたいな意味合いが強いかな。これから居住空間含め色々作っていくための、大前提的な拠点ってかんじ。


 宇宙鞄は便利なんだけど、結局出し入れが面倒になってきちゃって。窯とか作業台とか、本来据え置きの生産ツールは、一か所に纏めておきたいなと思った次第。

 あと宇宙鞄の収納にも実は限界があるらしいんだよね。マシロ曰くまだまだ入るとのことではあるけれど、であれば限界が来る前に物置部屋を作っておきたいところ。


 幸い、宇宙収納は材料があれば作業台から作ることもできるらしい。だからそういった収納アイテムを沢山作って、それらを置いておける空間が欲しいなー、って思ってる。


 何はさておき、まずは最初の拠点作り。人化したぼくは作業台に座って、ざっとしたデザインや必要な資材などを書きだしていく。


 そういえば、この【紙】も数に限りがあるらしいんだよね。紙の主原料は木材なんだけど、他にも薬剤が必要で、その薬剤を作るのに【炎幻石】と【水幻石】がいるんだ。

 こういうちょっとしたメモにも設計図にも紙は必要になってくるから、いずれ材料を集めるために策を考えないとなあ。


 閑話休題。

 今回メインに使う素材は石。切り出した四角いのも使いたいし、自然のままのも使いたい。柱用にも加工したいな。

 あとは瓦。


 ガラス窓や扉は使わず、敢えて開放的で簡易なデザインにする予定。

 出入りの激しい場所になりそうだし、いちいち開けたり閉めたりするの、めんどくさいもの。それに食べ物とかなら兎も角、作業台や建材を盗んでく不届き者なんてこの世界にいないでしょ?


「少なくとも僕の匂いのついた物を持ち出そうとする豪胆な奴なんてそうそういないから、まあ気にしなくて平気だろうね」


 マシロのお墨付きも貰えたことだしと、ぼくは早速材料集めに向かう。まずは拠点の西にある岩山に行って、石切り作業を行うことに。

 灰色の岩塊を、ノコギリを使ってぎこぎこ切り出していく。

 さすがに木材のように二、三回鋸を引くだけとはいかないものの、大体倍くらいの工程でもりもり四角く石を剥がすことができたよ。いや~ぼくってとっても力持ち。


 岩山の麓には石灰石がごろごろ転がる野原があったので、そこで石ころ拾いもしていく。石灰石はモルタルを作るのに必要だからね。

 あとは沼地と砂漠で粘土と砂をざくざく掘って、一旦材料集めは終了。


 拠点に戻ったら、まずは石の加工から。ちょっと不規則なかんじに積みたいので、敢えてブロックの大きさは揃えなかった。

 作業台のレシピ機能を利用して、大きな石の柱も数本形成していく。


 次は接着補強をするためのモルタルを準備する。【石灰石】、【粘土】、【砂】、【水】を容器に入れて、まぜまぜねりねり。


 あとは瓦。

 作業台で粘土の形を造って、ぽいぽいぽいっと窯に放り込んでいく。赤土素焼きの、香ばしい瓦が焼き上がったよ。


 さて、整地作業をしよう。けど今回はこの段階で、設計図を発行してしまう。

 このたび選んだレシピは、家の土台がちょっと小高くなってるんだ。

 なので整地の際、土台の骨組みに合わせて地面を削っていくことにする。そのほうが効率的だからね。

 まあ代わりに設計図を深くに埋める必要はあるけれど。


 土台が生えてほしいちょっと下の位置まで穴を掘って、【設計図】を落とし、土を被せる。

 しばらくすると、にゅるっと育つ白い針金。きたきたきた~っ。

 ぼくはその針金を目安に、土を削っていった。


 さあいよいよ此度のメインテーマ、石積み作業の時間である。

 土の盛り上がった土台の周りに、形の不揃いな自然石を積んでいく。モルタルを塗りつつ、なるべく隙間が生まれないように。


 こういうの、上手くやらないとすぐ崩れちゃいそうだけど、骨組みさんが石をしっかり吸着してくれてるので安心なのだ。その割にちょっと失敗して素材を剥がしたいなー、ってときには結構簡単に剥がれてくれるのがありがたい。

 感覚としては接着剤というよりも、マジックテープとか吸盤とかヤモリの足とか、そんなかんじかも。不思議素材である。


 よーしできた。石垣だーい、わーい。

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