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097 裁き

 私が当事者なんだから自分で話すべきだと思います。


「お聞き届けくださってありがとうございます。私はまゆげちゃん……そちらにある荷車に載せられている人達に襲われました。ですがこの人達はどうやら貴族様で私を捕らえることが目的だったようなんです。その理由が、先日グレース市の冒険者ギルドの赤金級冒険者さんを不当に追い詰めた罪だって言うんです。あの事件はきちんと司法の判断で決着が付いたと聞いてます。ですが彼等は自分達は貴族だから同じ貴族の仲間が不当に扱われているのが気に入らないので事件を起こした私を捕らえればいいって言うんです。」


「ふむ、全く意味が分かりません。私もその事件についてはよく知っております。何故ならその事件の後始末に遣わされたのが私だからですよ。」


「え?それじゃあ冒険者ギルドグレース支部を解体させちゃったのはバトラー様なんですか?」


「ははは、私は一介の使用人だと言ったではないですか。敬称など不要です、バトラーとお呼び下さい。」


「ええええ、誰であろうと年上の方を呼び捨てはできません。ではバトラーさんとお呼びしますね。」


「結構です。」


 どうやら冒険者ギルドの方は説明不要のようだわ。裁定をした張本人なんですからね。


「ではバトラーさんは私を罪人と認定しておられるのでしょうか?」


「ふむ、事情聴取の必要はあると思っています。ですが、今回取り調べを行った赤金級冒険者達は結託したギルド職員が行った不正……この場合は等級の虚偽を行う事……を使用してギルド証を作成した事は明らかでした。また、自らが貴族の子弟と嘯き当ギルドのギルドマスターをはじめとする多くの人達に脅迫、恐喝、場合によっては暴行傷害を行っていた事が判明致しました。さらにギルド職員の中には彼等の威を借りて新人冒険者の行った依頼を失敗扱いにしてその報酬を掠めていた事も判明致しました。よってエリーゼさん、あなたが行った行動で罪に問われるとすれば、ギルドマスターと少し乱暴な契約書を交わした事と少々手荒な指導に対して口頭注意程度だと判断しております。」


「ごめんなさいやり過ぎました。親友が辛い目にあってるのが許せなかったんです。」


「ま、冒険者ならこれくらいの荒事は日常でしょうから。エリーゼさんの反省の弁は聞けましたから良しとします。」


 バトラーさんはとっても優しい笑顔で私を見ました。


 ほっ、よかった。一安心。


 あとは貴族様の方かぁ。


「おいバトラー、この縛を解け!貴族である私をいつまで拘束しておくつもりだ!」


 まゆげちゃんの上でぎゃーぎゃー騒いでる騎士様。


 今騒ぎ始めたわけじゃないわよ?ずっと騒いでるから無視してたの。


 騒いでるのはひとりだけじゃないからね。


 みんなが口々に騒いでるからけっこううるさい。


「早くしろ、今なら不問にしてやる。それとその娘は不敬罪で処分だ!奴隷にでもしてしまえ!」


 その言葉を聞いたバトラーさんの眉毛がピクリとしました。


「我が国では奴隷制度を禁じています。それでもこのお嬢さんを奴隷にせよと。」


「当然である!この私に手向かった挙句この様な辱めを与えた張本人だ!許してはならない!」


 奴隷って……奴隷とはその昔まだ国内で戦争があった時代に勝った人達が負けた人達を捕らえて、服役罪人として無理やり使用人にしたり過酷な労働を課したりした制度なの。


 その人達はモノとして扱われ、たとえ死んでもかまわないってルールだったらしかったわ。だから悲しい事件が多発したみたい。


 ある日国中を揺るがす大事件が起きて戦争は終了、奴隷制度も撤廃されたの。


 それから何年もの間戦争はないし当然奴隷もいないはずよ。


「それが結構いるんだよ、奴隷。強制労働や使用人はもう見る事なんかないが……幾つかの貴族達は裏で奴隷を持ってたりするんだよ。男は戦闘訓練の練習台にされたり、女はまあ……エリーゼちゃんには余り聞かせたくない理由で囲ったりするんだ。」


『そよ風の輝き』のおじさんがそっと囁いてくれたわ。


「でもそれは罪なんでしょ?」


「ああ、罪だ。国は禁止しているし見つかれば最悪処刑される。国は対応に強気だよ。」


「だが、人とは1度吸った甘い汁を手放すのに苦労するものでね。こういった輩が後を絶たないって訳さ。」


 人をモノ扱いするなんて私には理解できない。私にとってはモノである『重機達』ですら大切な仲間、家族なのに。


「エリーゼ嬢、ここであの不思議な映像を見せる事が可能か?」


 ギルドマスターさんが言ったわ。


 ”モニターがあれば可能です。この方に至高である我が主の勇姿を見せつけてやりましょう”


 あのーまゆげちゃん、私なにも言ってませんけど……まあいいけどね。


「ミノルおじさん、モニターありますか?」


「あるよ、任せとけ!」


 ミノルおじさんはサムズアップで応えてる。


「ならだいじょうぶです。」


 テキパキとモニターの準備が整い、さっき見た映像をバトラーさんに見てもらったわ。


 ついでに騎士様達も見たみたいね。


「おお、やはり私に楯突いた愚か者はこやつだった!バトラー、これが証拠だ!この者を奴隷にせよ!5日程私が利用してから売却してやるからな!」


 この人……最低!


「ああ、理解しました。エリーゼさん、ひとつ質問があります。この映像が真実だという証拠はありますか?」


 バトラーさんから質問があったけど、これはなんだか試されている気がするなぁ。


 うーん、証拠はないわね。だってこの映像が証拠なんだもの。


「私はこの映像を証拠として出しました。内容にはその騎士様も納得されたみたいです。証拠の真偽を問うならば、まずはその映像が偽物だって証明をしてください。」


 私の返答を聞いたバトラーさんはウンウンと頷いた。


「うむ、良い答えでした!それでは……そちらのお方々、この場で自裁なさい。服用毒を準備させましょう。苦しまずに済む物を準備させます。」


 え!?じ、自裁?自殺しろってこと?


「誰か、服用毒を8つ用意して下さい。我が国の貴族が8名決闘にて名誉の死を迎えられます。」


 服毒死!?バトラーさんが淡々と怖いこと言ってます!


「なんだと!?巫山戯るな!なぜ我等が死なねばならない!」


 当然とばかりに騒ぐ騎士様。当然っていえば当然なんだけど苦い薬を飲まされる子供みたいで見苦しい。


 まあその薬は甘い毒なんだから仕方ないけど。


「今ご覧になった証拠となる映像を見てあなた方もこれが証拠だと語りました。またこの映像の真偽を問うた所、その返答は理にかなっており私にそれを覆す手段はありませんでした。その映像の中であなた方は言われなき少女を徒党を組み襲い、助命を無視し、殺害を口端に乗せ、武力で負け決闘で負け、あまつさえ拘束される愚を犯し、司法の判断した犯罪に加担し、その後国が禁ずる奴隷制度を助長する発言をしました。ここまでやれば栄えある貴族なら生きて行けません。今なら決闘による死亡だと報告出来ます。立派な貴族として死になさい。」


 バトラーさんは目を細めてそう言い放った。その目はまるで汚い物を見るような目だったわ。


「ぐううっ……わ、私は貴族とはいえかなり身分は低いし三男であるからほぼ平民と変わらぬのだ。へ、平民であれば服毒死など有り得ないだろう?」


 それに対して作り笑いを浮かべて懇願する騎士様。自分は平民だって主張を始めちゃった。


 その主張は私に対する言い分が通らなくなるやつよね。それにバトラーさんってあなた達の貴族の誇りを大事にするためあんな提案をしたんだと思うわ。そうしなさいっていう提案だったんだもの。


 だからその答えはちょっとまずい気がしますよ。提案じゃ済まなくなっちゃう。


「平民が貴族を騙るか……不敬である!」


 バトラーさんの手がスっと動いたと思ったら、8人の騎士様の首が……ポロリと落ちた!


「うおっ!?」


「きゃあっ!!」


「バトラー!淑女達の前だぞ!」


 はわわわわ!マジか!バトラーさん……


「おっと失礼エリーゼさん、あなたの荷車……まゆげちゃんでしたか、汚してしまいました。申し訳ないです、平にご容赦を。」


 バトラーさんはさっきと同じ笑みを浮かべて私に謝罪をしたわ。


 まゆげちゃんの荷台は噴水のように飛沫を上げる首のない8人の遺体と血の海で満載でした。


 こ、怖過ぎだわ!身体が芯から冷えた気がする!それに謝るポイントはまゆげちゃんを汚したところじゃないわよね!


「は、はい……けっこうなお点前で……」


 私は驚きと恐怖でそう答えるのがせいいっぱい。ていうかどう答えるのが正解なのか全く分からないわ!


 心から恐怖耐性スキルがあってよかったと思ってます。はー怖かった。



 あとで確認したら恐怖耐性スキルがLV3に上がってました。ははははは……

週末ですがなんだか切りが悪いです。がんばれたら100話までを今週分にしたいです!がんばります。


無理だったら……また来週お会いしましょう。

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