090 雪を捨てに行こう
街中の雪を集めたら、なんと30万立方メートルありました。
もうね、いまいち量がわからないのよ。1メートル四方の雪ブロックが30万個ある……やっぱりよく分からないわ。
重さにすると約5万トンになってる。とんでもない量ね!
「この雪で商売が出来そうだな。空間収納のバッファー自体は足りてるんだろ?なら置いとけばいいんじゃねえか?」
「うーん、性格的な問題ですね。私、タンスの肥やしは作りたくない主義なんです。」
「相変わらず嬢ちゃんは真面目だな。いい嫁さんになるぜ。」
ミノルおじさんのアドバイスの中で雪を海や川に捨てるのが1番簡単そうだったので、さっそく捨てに行くことにしたわ。
雪深い街道をクシナダちゃんでラッセルしながら進んでいく。
カバルの街を越えて酪農村に行き山手の方に少し入れば大きな川が流れてるの。
グレース市の辺りで海に繋がってる川で、グレース市が大きくなったのもその川のおかげだと言っていいって聞いたことがあるわ。
なんといってもその川の上流には、この辺り一帯を治めてる領主様の館がある。
ここの領主様は変わった方らしく、若い時に自ら家を出て仲間と共に開拓にあけくれて、何年もかけてこの辺り一帯を自らの領地として国から認めてもらったそうなの。
ギルドマスターさん達はその時の領主様のお仲間だったんだって。
ん?ということは冒険者ギルドのギルマスお姉さんはもしかしたらお姉さんじゃなくておばさ…….むぐぐゲフンゲフン、これは考えないようにしとこう。
誰も得しないからね。
「さて、そろそろ酪農村なんだけど……ああ、あったわ!あの小道から山手に行けそうだわ。」
私が拡げた道に接続してるほっそい道を発見。きっとこれが話に聞いた領主様の館に続く旧街道ね。
グレース市の方にメインの道が出来たことからいらなくなった道らしいけど、地図スキルで確認したところ川までは間違いなく繋がってるようね。
「よーし、せっかくだから道幅拡げて通り易くしておこう。もしかしたら領主様がこの道を通ってマールまで来られるかもしれないからね。」
まずはドレイクを召喚して道沿いの樹木を処理していこう。
ドレイクの双腕がまるで雑草を抜いているかのようにポンポンと樹木を引き抜いていってる。中には抜けないのもあるけどそれは後から地面を掘って取り除くから大丈夫よ。
まゆげちゃんは器用に距離を取りながら私達の前を走行していくわ。その荷台に引き抜いた樹木を載せて収納する。
「うーん、地図によると道が曲がりくねってるなぁ。せっかくだから真っ直ぐにしますか。」
元の道から外れてただひたすら真っ直ぐな道を作り続ける。元々はきっと大きな木や岩なんかを避けつつ道を作ったんだろうなぁ。
私は『重機』の力で道を作ってるけど、過去に自らの力と知恵で道を作った人がいるかと思ったら感動しちゃうな。
ここの領主様とかね。
すごいことだと思います。
大根や人参の収穫みたいな時間が過ぎていくこと1時間、川沿いの道に突き当たりました。
川幅はだいたい8メートルくらいで流れはけっこう早い。
きっとここから右に行けばグレース市に着くのでしょうね。
ということは左側は多分領主様の住んでいらっしゃる館へ通じる道なんだと思うわ。
地図スキルで確認してみる……ああ、この大きな建物が領主様の邸宅ね。
んで道は……あれ?なにこれ?この新しく拓いた道を使えばここからグレース市よりもマールの方が近くなってる!
「よーし、次はブルータス様の出番ね!削って均して埋めまくるわよ!」
ブルータス様はMAXまででっかくなってるから一気に削れちゃう。途中の小山になってるところを削って延ばせば綺麗な平坦になったわ。
さらにローラちゃんを召喚して締め固めればもうバッチリ!
「完成!いやーいい道ができた!」
今までと違って綺麗にしただけじゃない、キッチリ開拓して作った道。
森の中を抜ける道幅8メートルはある重厚な道。
ふふーん、どうよ。
いいのができたわ。
「あっいけない!道を作りに来たんじゃない、雪を捨てに来たんだったわ!」
本来の目的を忘れるところだった。満足して帰るとこだったわ、あぶな。
私はまゆげちゃんを川辺りまで走らせ、バックで寄せたわ。
「まゆげちゃんのダンプ機能で川に雪を捨てましょ。PTOレバーを入れて、アクセルオンと。」
PTOとは『パワーテイクオフ』っていう言葉の略で、通常走行中に繋がってない作業用駆動系に力を伝える装置なの。
ダンプカーなら荷台揚床用の油圧装置を作動させるってことね。
フィーンって音を立てながら空の荷台が斜めにせり上がる。いっぱいまで上げたら後部あおりが口を開いてるか確認した。
「うん、だいじょうぶそうね。ならまゆげちゃん、雪を少しずつ荷台に出してみてちょうだい。」
『了解しました。毎秒1立方メートルずつ荷箱に均一になるよう降雪を排出します』
音もなく荷台に現れる雪。文字通り滑りながら川に落ちてゆくわ。
ドドドドドド!
けたたましい水音が辺りに響いた。
「上手くいってるわね。じゃあこのまま待ちますか。」
『マスターに進言。このまま降雪を排出し続けると作業時間は単純に30万秒、途轍もない時間が掛かります。我をカスタマイズしてサイズアップを図り、降雪の秒間排出量を増やすことを提案いたします』
そ、そっか。毎秒1立方メートルずつ排出すれば30万立方メートルある雪は当然排出されるのに30万秒掛かっちゃう。
30万秒は5,000分、それは約80時間以上時間が掛かるってことよね。
「それはまずいわ!まゆげちゃん、サイズアップよ。いったん荷箱を降下させてすぐにカスタマイズに入りましょう!」
『了解しました』
すぐに油圧の抜ける音がして荷台が下がった。まゆげちゃんにちょっとだけ前進してもらい、カスタマイズをスタート。
10トンダンプカー、スライド機能付き水平ゲート式荷箱にカスタマイズして展開!
まゆげちゃんはピンク色の壁に囲まれた。ガガガガってすごい音がしてる。
音が止まり壁の中からまゆげちゃんの姿が現れたわ。
で、でかっ!流石に10トンダンプはでかい!荷箱の幅も長さも段違いだわ。それも今回は荷箱のスライド機能が付いてるからより川の中央側に雪を出せるし、水平ゲートにして後部あおりを無くしたのでさらに効率良く雪が出せるんじゃないかな。
『マスター、これなら毎秒42立方メートルの降雪を排出することが可能となります。掛かる時間は7,143秒へと短縮されます』
えーっと、時間にすると……120分、2時間か。それならありだわ。
「じゃ始めてちょうだい。」
『了解しました、マスター』
フィーンと音がして荷台が後方へ飛び出す。そして斜めに持ち上がる。
おー、かなり川の真ん中に近いへんまで雪が出せそうだわ。
ドドドドドドドドドド!
雪が勢いよく流れ出た……あっダメだ!川がせき止められる!
「まゆげちゃん雪を減らして!川がせき止められて流れなくなっちゃいそうなの!」
『了解しました、毎秒30立方メートルに設定します。排出終了まで10,000秒』
時間にして約3時間か、仕方がないわね。
ドレイクを召喚、アームで溜まってしまった雪をどかすとせき止められた水は流れ出し、雪を押し流していくわ。
「うん、これならよさそうね。このまま作業を続けながら川面を監視しててね。詰まってきたら出す量を減らすのよ。」
『了解しました』
まゆげちゃんは高性能なので多分これ以上手はかからないと思うわ。賢くて素直ないい子だからお母さんは安心です。
さて……私は3時間待つ間、何をしよっかなぁ?




