087 冒険者カードを不正に作ってみよう
邪魔が入らないうちに問題点だった『ごぶリン』の人達のステータスを調べてみましょう。
「邪魔って……偉い人が来たらぼく達じゃどうしようもないんじゃないかな?」
「この人達の罪を暴けばギルドマスターさんと交わした契約書を盾にできるわ。だいじょうぶ、この人達は絶対赤金級冒険者じゃないから。」
ビンタした感じで分かる。あれは弱い。体力のステータス値なんて10あるかないかじゃないかしら。
「うええ、なんでコイツら汗びっしょりなのよ!えーっと……あったあった、コイツらの冒険者カードね。たしかに赤金級になってるわ。」
魔法士さんがすっぱい顔して『ごぶリン』達の荷物の中から冒険者カードを取り出してくれたわ。
「じゃおじさん、この人達のステータスの調査をお願いします。私達にステータスとギルドカードの関係性を教えてくれた人の話によると、冒険者カードの等級はステータス値の合計した数値で決まるってことが分かってるんです。」
「うーむ、今ここへ来たばかりの俺の気持ちとしては、厄介事に巻き込まれたくねえなって気持ちだよ。だがエリーゼちゃん……アンタうちのミルフィの為にやってくれてるんだよな。ありがとう!」
おじさんは私の手を握って頭を下げたわ。そんなことしなくていいです、だってミルフィは私の親友なんですから。
ミルフィはそんな感極まってる自分の父親の襟首を掴んで引き剥がしてるわ。ちょっと照れてるみたい、可愛いわね。
「さっそく計測しましょう!」
ミルフィのお父さんは背中のカバンから板状のアイテムを取り出した。
そうそう、これがステータス確認用の魔導具なのよね。真ん中の宝石みたいなのが付いてる部分を触ればステータスが確認できるの。
まずはそこで寝てる『ごぶリン』のリーダーっぽい剣士の人からね。
「えーっと、カードの表示に影響のあるステータスは『体力』『知力』『敏捷』『器用』だったな。」
「そうです、今回は他の数値は無視してください。」
「なになに?体力13、知力7、敏捷9、器用11、だな。なんだこりゃ、うちのミルフィの半分以下どころじゃねえなぁ。」
はぁ?何そのステータス。子供並じゃないのよ!
こんなの絶対赤金級冒険者じゃないわ!カードに何らかの不正がされてるのが確定ね。
「えーっと、確か合計が40ポイントごとに等級が上がるんだったわよね。この人のステータス合計は丁度40だから、ギリ黒鉄級ってところじゃないかしら?」
魔法士さんが呆れたような顔でつぶやいたわ。
他の人のステータスも似たり寄ったりだったみたい。チラッとあの女の人のステータスを見たんだけど、なんと彼女は回復士だったの。
レベル7で生命力38ポイント精神力74ポイント。ステータスは知力が15あったけど他は5とか6程度しかなかったわ。
その辺に普通にいる普通の駆け出し冒険者よりも低いステータス。これじゃあ決して赤金級にはなれない。
「私の見解では、この人達は何らかの形でハッタリを掛けて赤金級冒険者の肩書きを手に入れた。そして周囲を上手くだましてこの冒険者ギルドグレース支部の筆頭冒険者になったのよ。赤金級冒険者なんてめったにいないからなってしまえば反発する人はいないでしょ?やりたい放題出来ちゃったって所かなぁ。」
サブマスさんの見解は私も当たりだと思う。とはいえ冒険者カードを不正に作る方法がないとこの話はただの想像で終わっちゃうわよね。
「冒険者カードってどうやって作るのかなぁ。」
「エリーゼちゃんこの前自分の冒険者カード作ろうとした時見たでしょ?血を塗りつけたり角を舐めたりして体液を付着させて認識されるの。」
「それは知ってます。私が知りたいのは不正カードの作り方ですよ。ん?もしかしてその付着物って他人のでもできるんじゃないんですか?あと、複数の人の体液を混ぜたりとかできたりして。」
「それは……聞いたことないわ。前例なんかないんじゃない?」
取ってあったギルドの荷物から魔道具が入ってそうな金庫を出してきた。冒険者カード製作の魔導具を探さなきゃ。
「きっとこの金庫の中に魔導具が入ってます。使い方が分かんないからひとり受付嬢を起こしましょう。」
サブマスさんがさっきミルフィに意地悪してたギルド職員さんのところに行って揺すって起こしてる。
「……はっ!ごめんなさいもうしません!」
「なに言ってるのこの人。」
目を覚ました受付嬢さんは少しの間ぼーっとして周囲をキョロキョロしてたけど私の顔を見て飛び上がったわ。
「あ、あなた!私を叩いた子ね!なんてことしてくれたの!?私に手を出したらギルドきっての上級冒険者パーティ『断罪の大鎌』が黙ってないからね!覚悟しなさい!」
「ああ、その人達もそこらで寝てますし、さっきステータス測ったらめっちゃ弱かったので伝えちゃって構いませんよ?」
「え、えええ……」
すっごいプンスコしながら息巻いてるけど、あなたの頼みの上級パーティはもういませんよ。
パーティ名も『ごぶリン』に改名しましたからね。
それに、ギルド職員と冒険者がお互い便宜を図っちゃダメですよ!
「ああそうだったわ、ちょっとお願いがあるんですが、冒険者登録のための冒険者カードを調べたいので登録の魔導具を操作してください。」
「何を馬鹿な、冒険者のギルドカードはおもちゃじゃないの!出来るわけないでしょ!?」
「そうですか、それじゃあなたに用はないわ。おやすみなさーい。」
「ひいいいぃぃぃ!ち、ちょっと待って!なんでそんなに手を振りかぶるの!?やります!やりますからもう叩かないで!」
うふふ、効果はバツグンね。
私はなんにも書かれてない冒険者カードを1枚受け取り、エリーゼと名前を書いてからミルフィに渡した。
「ミルフィと魔法士さんで冒険者カードの角を舐めてください。現在ふたりとも緑銀級冒険者ですよね?」
「ええ、もうちょっとで赤金級になるんだから!」
「ぼくは3日前に緑銀級に上がったばかりだよ。」
ならちょうどいいわ。もし2人分のステータスが足されるならこのカードは赤金級以上のカードになるはずよ。
「こ、こんな事しても無駄よ!こんな不正で等級が上がったとしてもズルだからね!」
「いいから黙って処理してください。」
右肩をグルグル回してみせると意地悪受付嬢さんは渋々と魔導具の操作を始めた。
ていうか語るに落ちたとはこのことよね。この人ボロを出しちゃったわ!
「出来たわよ。不正カードだから使えないけどね!」
つべこべ言いながらもキチンと仕事はした意地悪受付嬢。悪いことを覚えなかったらきっと優秀なんだろうな。
「ありがとうございます、えーっとどれどれ?おおおっーー!!」
受け取ったエリーゼと書かれてるその冒険者カードは、なんとキラキラと輝く真っ白なカードになってる!
「ま、まさか!それって白金等級!?凄いわ!」
「初めて見た!」
「私も!」
ミルフィと魔法士さんを足したら白金等級になるらしいわ。これで不正による冒険者カードのランクアップの謎が解けたわね。
あと、それを知ってて『ごぶリン』達のために不正冒険者カードを作ってた人も発覚したわ。
「受付嬢さん、あなたが『ごぶリン』の人達に不正カードを渡していたんですね。」
「ギクリ!は、はぁ?なんの事かしら?そんな訳ないでしょ!?あなた言い掛かりはやめなさいな!」
意地悪受付嬢は額から汗をダラダラ流しながら私の言葉を否定し続けてる。
「じゃあなんでさっき私が冒険者カードを作る時、ふたりが舐めたカードが不正に等級アップすることを知ってたの?私ふたりでカードを作ったら等級が上がるなんて一言も言ってませんよ?なのにあなた、等級が上がることを知ってましたよね。」
「あっ!!」
「言ってた!『不正で等級が上がったとしてもズルだ』って!確かに言ってたわ。」
「エリーゼちゃん凄い!名探偵みたい!」
ふふん、口は災いの元ね。この人は自ら自分が関係者だと言っちゃったってわけ。
「ち、ちくしょう!こんなことでバレるなんて!このガキ!」
「あはは、そんな怖い感じで叫んでも滑稽なだけですよ。あなた知ってます?冒険者カードって高いステータスを受けると溶けて穴が開くんですよ?あなたのことだから試したことあるでしょ。」
私がそう言いながら意地悪受付嬢が手に持ってた新品の冒険者カードを奪った。彼女は驚いたような顔で私を見たわ。
「ええ、なぜか沢山の人が登録に加わるとカードに穴が開くのよ。だから赤金級位で止めとくのがコツなのよ。」
「そう、カードに登録する人のステータス値が高過ぎた場合、このカードは体液に含まれる飽和魔素に耐えきれず溶けるの。こんな感じにね。」
私は口の中に指を突っ込んで、指にたっぷり唾液を付着させたわ。そして新品の冒険者カードに指を当てて唾液を塗りつける。
グジュグジュととろけるように穴が開く冒険者カードを見た意地悪受付嬢の顔は青ざめ、その口からはカチカチと歯が鳴るのが聞こえてくる。
「じ、10人位でやったら穴が開くのは知ってたわ!でもなんでアンタはひとりで穴開けてるのよ!?」
「それが私の強さだからです。」
「ば、バケモノ……」
ひ、ひどい!失礼しちゃうわ!
こんちわ!ぴ〜ろんです。
今週はここまで!楽しんでいただけましたか?やっぱり冒険者カードは出来損ないの魔導具でした。きっと他の街や国単位でも似たような事やってるんでしょうね。
さて、来週はでかく広げた風呂敷を畳まないといけません。どないしましょ!?がんばります。
禁煙成功してますよ。健康診断で胃カメラ飲んだら胃の中が傷だらけでした。そんながんばるぴ~ろんさんに励ましのお便りを!
評価の方もよろしければお願いします。ではまた月曜日にお会いしましょう。




