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086 何もしないのも場合によっては罪になる

 コンコンコン、とドアをノックして扉を開けた。


「失礼しまーす、ここにいるのは誰ですかぁ?」


「はぁ?なんだそりゃ、ギルドマスタールームにいるのはギルドマスターに決まってんだろ?それに何勝手に入ってきちゃってんの?なんだよここの連中は、好き勝手やりやがって!」


 中から出てきたのはボサボサの青髪をガシガシ掻いてる長身の男性。


 年齢はお父さんくらいかな?ミノルおじさんよりは若そうかな?


「あなたがここのギルドマスターさんなんですね?私はエリーゼといいます。11歳です。マールから来た商人兼冒険者のタマゴです。」


「おおご丁寧に、一昨日来やがれ。さようなら。」


 ギルドマスターさんはクルリと振り返りバイバイと手を振ってる。


 冒険者ギルドのギルドマスターってこんな人ばっかりなのかな?


「エリーゼちゃん、冒険者ギルドのギルドマスターはこんな人ばっかりじゃないからね。安心して頂戴。」


 魔法士のお姉さんに心の中を読まれたようです。


「私達商業ギルド職員がどうこう出来る問題じゃないし、第一私達は他の街の職員だから。」


「どうします?ここにいる人がギルマスだって事は分かりましたよ。」


「うーん……」


 冒険者さんたちが冒険者ギルドぐるみでミルフィを邪険に扱い泣かせたことは許せないし、ギルドが冒険者のクエストを不正に失敗扱いしたなんて、もはや罪だし。


「エリーゼちゃん、穏便にね。あなた怒ると無茶するから……」


 それにここのギルドマスターさんが関与してるかどうかは分かんないけど、放置してるのは確かだわ。


 この人の態度、『勝手にやってろ』って感じだもの。


「ミルフィちゃんをマールに連れて帰るのは?あの子なら全然いけると思うわ。エリーゼちゃんとも仲良いしね。」


 ギルドマスターってギルドの責任者だから、ここであった不始末はギルドマスターの責任だと思うの。『ごぶリン』のメンバーの存在が許されてるのもきっとこの人のせいよね。


「エリーゼさん、顔が怖いです!商人なんですから話し合いで解決した方がいいですよ!」


 うん、決めた。ここの冒険者ギルド潰そう。たいして強い人いないし、更地にするのは得意だし。


 そうなると、ギルドマスターさんから了承を貰わないとね。


「あのちょっとお聞きしますけど、今このギルドで新人イビリが横行してて困ってるんです。実際私の親友が泣いてて。ギルドマスターさん、なんとかしてくださいませんか?」


「はぁ?何言ってやがる、勝手にやってんのはそっちだろ?ならケジメだって勝手にそっちで付けりゃあいい。俺は知らん。」


 椅子に座ったギルドマスターさんは頭の後ろで腕を組んで素知らぬ顔して答えてる。


「うーん、ギルドマスターさんが管理できてないギルドってもはやギルドじゃあないですよね?」


「そうね……。ある意味無法者のアジトって言われてもおかしくないわ。」


 そっか、なら……


「ギルドマスターさん、私はマールで商人をやっていますが、そっちで冒険者ギルドにも登録してるんです。同じ冒険者としてここで横行してることが看過できないんです。私達に始末を一任してください。」


「だから勝手にすれば?」


「ありがとうございます、じゃあ……」


 私は指輪の収納に入れていた契約書の紙を取り出し、『本日の冒険者ギルドグレース支部での出来事をエリーゼに全て任せます。人員、土地建物全てにおいて自由にして下さい』と書いてギルドマスターさんの前に出した。


 下に小さい字で『なお出来事にはギルド関係者の処遇、ギルド建物の取り潰しまで含みます。生命までは取りません。』と書いてあるけどね。


「私は商人ですから行動するのに契約書が必要です。ああお代はけっこうですから。私は自分の親友を助けられたらそれで満足なので。」


「ふーん、勝手にしな。俺は知らん。」


「契約書にサインを。」


 私は作成した契約書をギルドマスターさんに向かって差し出したわ。ご丁寧に下敷きとペンまで出して。


「めんどくせえなぁ、ほらよ。」


 ギルドマスターさんは本当にめんどくさそうな顔でろくに契約書を改めることなくサインをしたわ。


 ニヤリ。


「サブマスさん、魔法士のお姉さん、契約の見届けありがとうございました。」


「エリーゼちゃんあなた悪い子ねぇ……本来なら契約書は読まないと駄目よ。まあ決まりではないけど。」


 知ってます。普段ならちゃんと読みますしもっと確認を取りますから。


「ま、サインしたやつが悪いんでしょ?契約書はよく読んでサインしましょう、ご愁傷さま。」


 そうね、ちゃんと契約書を読まない人が悪いんです。子供だと思ってバカにしたこの人が悪いの。


「私悪魔の契約を見ました。」


 悪魔の……失礼ね、きちんとしたB級移動店舗型商人が作成した正式な契約書ですから!


「それでは始めましょ……そうね、まず手始めにあなたをぶっ飛ばしますか。」


「は?」


 上を向いていたギルドマスターさんが私の方を向き直したわ。


「そりゃあそうでしょ?このギルドでミルフィが泣いてた。嘘つき呼ばわりされて無理やりクエスト失敗にさせられて。そこのギルドのトップを私が許すわけないじゃない!」


 私は瞬時にギルドマスターさんの上に馬乗りになったわ。


「はっ!速い!」


「あなたはまあまあ手練のようだから、ミルフィと同じグーパンでいいですよね?お願いですから気絶しないでくださいよ。」


 椅子ごと倒れて私に乗られてるギルドマスターさん。脱出なんてできないし、させないわ。


「なんだこりゃあ!動けねえ!テメェ!一体何者だ!」


「私はB級商人のエリーゼです。あなたとここのギルドを取り壊す契約をしたエリーゼですよ。」


 私は身体強化した右拳をギュッと握り、振りかぶった。


「ちくしょう!なんで俺がこんな目に!何もしてねえじゃねえか!」


「何もしなかった、それがあなたの罪ですね。自分の罪を数えなさい!」


 ヒュッ、ゴシャア!


「がふっ……」


 マウントポジションから見事に顎を目掛けて振り下ろされた拳がヒットして、ギルドマスターさんは気を失ったわ。


 それでも私の肩に手を当てて防ごうとしたからちょっとだけ勢いが防がれちゃった。さすがはギルドマスターさんね。


「それじゃ、大掃除と行きますか。」




「ど、どういうこと!?」


 ミルフィが帰ってきた時、そこにはなにもなかったわ。


 道端に40名近い男女が並べられてる。ギルド内にいた気絶してる人達を並べただけだけど。


 そして、そこにあったはずの冒険者ギルドの建物は綺麗さっぱりなくなってた。


 ドレイクでみんなを降ろし、そのままバッグ缶に気絶してた人達を詰め込んで外に出したわ。


 とりあえず道端に並べて先程ギルドマスターと取り交わした書類と『これは不正や迷惑行為を行っていたギルド職員と冒険者達です。ギルドマスターとの契約により処理しました。触らないで下さい。触ると仲間として認定、処分します』と書かれた紙を看板にして立ててる。


 ドレイクの双腕で上からバリバリと建物を崩すのに10分しか掛からなかったわ。崩した瓦礫はブルータス様で掻き集め、かけるくんで掬ってまゆげちゃんに積み込んた。


 工事終了までおよそ45分。ミルフィが自分の家まで帰ってお父さんを連れて来るのとさほど変わらないってところね。


「何の騒ぎだ!……って、エリーゼさん!?一体何事なんですか!?」


「あっ衛兵さんこんにちは!冒険者ギルドの掃除の依頼を受けました。そこの看板を見てください。」


 さすがにここまで騒がしいと衛兵さんや野次馬がたくさん来たけど、看板を読むように勧めたら大人しくなりました。


 ローラちゃんで地面を締め固めてたところでミルフィがお父さんといっしょにやって来ました。いまここです。


「凄いわね、重機ってこんなにあっさりと建物を取り壊せちゃうの?」


「建てるのも得意ですよ?ついでに基礎工事もやっていこうかな。」


「や、止めといた方がいいよ。さすがにこれだけやったらまずいよ。」


 ミルフィが不安そうに私の手を取った。



「こんなことしたら、さすがに領主様が来ちゃうよ!どうするのエリーゼ!」

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