084 赤金級冒険者は偽物?
「いやぁスッキリしました。」
「まったく派手にやったわねぇ。」
とりあえず冒険者ギルドにいた人達みんなにビンタ1発ずつおみまいしときました。ミルフィは気を失うことなく耐え抜いたのはおみごと。あとはみーんなノックアウト。
なんでミルフィをバカにできたのかが不思議です。
「もう、エリーゼはあいかわらず無茶するなぁ。ま、ぼくもなんだかスッキリしたけどね。」
そんなミルフィだけど、彼女だけグーパンにしたからさっきまで顔が変形してました。自分でヒール掛けて治しちゃったけど。
ミルフィごめんねと心の中で謝っときます。
現在ミルフィは他のみなさんにヒール掛けてまわってます。どうやら怒ったりはしてないみたい。よかった。
「エリーゼちゃんを怒らせちゃ駄目よ、分かった?」
「は、はいい!て言うか私この前エリーゼさんのギルド証取り上げちゃったんでした!殺されなくて良かったあ!」
「そ、そうね!良かったわね!」
お姉さんふたりが私を見てなんか言ってる!失礼な、そんなことで怒りませんよ!
サブマスさんもおしゃれさんも分かってないなぁ。私基本的には優しいんですよ?
「さて、うるさいのが気を失ってる間になぜこんな事になったのかを調べなきゃね。絶対黒幕がいるわよ。」
「黒幕?」
魔法士さんは腰にぶら下げてるステッキを取り出し構えてる。
「そりゃあそうでしょ。多少の新人イビリならよくある話だけど、ギルド職員までが新人イビリに参加してるのはおかしいもの。だいたいあの職員だけじゃないわよ?他の職員のコ達もミルフィちゃんがいびられてるの見て笑ってたものね。ほんとありえないわ。」
魔法士さん、プリプリと怒ってる。
そうだったのね。冒険者を統率、保護するはずの冒険者ギルド職員がそんなことするなんて!
腹立つからもう1発ずつくらいキッついのいれとこうかな!?
「ぼくはやられてた側だから詳しいことは分かんないけど、多分ここの冒険者の代表格の人が影響してるんだ。冒険者主幹の赤金級冒険者の人だよ。」
ミルフィが倒れた人を綺麗に並べながら言ったわ。
「冒険者主幹って……マールでいうところのうちのリーダーみたいな人か。まあうちのリーダーは緑銀級だけどね。」
へえ!『そよ風の輝き』のおじさんが冒険者ギルドマール支部ではまあまあ偉い人だった件。
魔法士のお姉さんはそう言いながら2階に上がる階段に向かってステッキを構えたわ。さっきから凄く警戒してる。誰かいるのかな?
2階を探知してみると、5人ほど人がいる。
「2階に誰かいますよ、探知に掛かりました。内訳は……あんまり強くない人間の男の人4、あんまり強くない女の人1ですね。みんな降りてきてます。」
「5人か……気配はしてたけど5人とはちょっと多いわね。あんまり強くないってのがエリーゼちゃん基準なら当てにならないし。」
「し、失礼な!魔法士さんやミルフィより弱いですけどサブマスさん達よりはマシってくらいなんです!」
だってみんなレベル8くらいなんですもの。もしかしたら冒険者じゃないかもってくらい。
「来ます!気をつけて!」
階段からドタドタと音がして誰かが降りてきた。
「なんか騒がしいなぁ、何騒いでやがる!うるせぇぞ!」
「ん?なんでみんな倒れてるんだ?」
降りてきたのは剣を持った戦士風の男と背の低い斥候風の男、大柄の斧使いの男とローブを着た魔法士っぽい男、そして、やっぱりローブを着た女。
あれっ?冒険者だ。こんなに弱いのにおかしいわ。
その人達は階段の中腹くらいで周囲の冒険者達が倒れてるのに気付いたらしい。キョロキョロしてる。
「いったい何があったんだ?」
「魔物じゃ無さそうね。」
「どうなってやがる!おい女、お前がやったのか?」
「お姉さんは見てただけです。私がやりました。」
剣士風の男が魔法士さんに向かって叫んだからそう答えてやると、その人達は私を見て笑い始めた。
「ギャッハッハ!おいお嬢ちゃん、その歳でハッタリかい?そりゃ無理があり過ぎるだろ?」
「こんな小さいガキが冒険者を何人もぶっ飛ばすって、冗談かよ?」
「あら?受付嬢まで倒れてるし。全く容赦ないガキンチョね、きゃはは!」
まあそういう反応くるわよね。
「あなた達がミルフィを嘘つき呼ばわりするように指示してた人達ですか?」
「はぁ?なんだそりゃ、嘘をつく指示なんか出してねえよ!ふざけんな。」
「でも、あなた達はギルドの2階から降りてきました。ということはここの偉い人ってことですよね。普通の冒険者はカウンターから向こうになんか入れませんもの。」
私がそう言うと、剣士はニヤリといやらしい笑みを浮かべ、両手を広げてみせた。
「よく知ってるな、確かに俺達がこの冒険者ギルドグレース支部冒険者主幹パーティ『断罪の大鎌』だ。」
剣士がそう言うとこころなしか他のメンバーもちょっと胸を張って私達を威嚇してる。
「じゃ、あなた達がミルフィを嘘つき呼ばわりしてる人達の親玉ってことなんですね?じゃ、叩きます。」
私は身体強化を行って床を蹴り、彼らのいる階段までジャンプした。そのまま前にいる剣士と斥候、その後ろの大男の頬を張る。
バチィッ!バチィッ!バッチーン!
「ギャッ!」
「ぐわあっ!」
ぶっ飛ばされた彼らは3人仲良く壁に突き刺さったわ。
「え?なに?」
「何が起こった?」
「いえ、ここの人達はみんなして私の親友を嘘つき呼ばわりしたので成敗してるんです。だいじょうぶ、すぐ終わりますから。」
私は右腕をブンブンと回しながら魔法士の男の人とローブの女の人に近付いた。
「わっ、我々は赤金級冒険者パーティ『断罪の大鎌』だぞっ!こんなこと許されると思ってるのか!?」
『断罪の大鎌』ですって?うぷぷ、なんという恥ずかしい名前なのかしら。
だいたいあなた達は自分が断罪される立場ですよね。
「ええええ?私の親友を嘘つき呼ばわりしてみんなに締め出させて、たくさん泣かせたのが許されると思ってるんですか?」
「な、何言ってんのこの子!」
ふたりとも自分達のパーティ名と赤金級冒険者だってことを連呼しながらイヤイヤしてる。
はぁ、この人達赤金級っていう言葉になんの意味があると思ってるのかしら?
「冒険者の等級はその強さで決まるんです。駆け出しより倍強いから黒鉄級は駆け出しより偉いんですよ。青銅級は3倍、緑銀級は4倍、赤金級は5倍です。あなた達が赤金級?笑わせないで!あなた達の強さはよくて黒鉄級、もしかしたらそれ以下です!」
赤金級って肩書きにじゃなくその強さに意味があるのよ!
目の前の女の人の胸ぐらを掴む。
「いやぁ!やめて!お願いだから!」
「赤金級の実力を示したかったら私のビンタに耐えてくださいね!」
バチーーン!
「ひぶぅ!!」
女の人はその場で綺麗に3回転して崩れ落ちたわ。残念、意識はなさそう。
そのまま魔法士の男の人の前に移動して胸ぐらを掴む。
「ひいいいい!ごめんなさいいい!」
「ミルフィは私のグーパンに耐えたわよ!」
ビッターーーン!
「はぶらっ!」
綺麗な放物線を描きながら男の人は飛んでいく。こっちもどうやら意識はないようね。
「うーん、あの人達絶対赤金級冒険者じゃないわよね。なぜここでそんな嘘がまかり通るんだろう?」
魔法士のお姉さんが私の肩にポンポンと手を当てたわ。
「いやーエリーゼちゃん、そもそもこれだけの人数をビンタでのしちゃうあなたが特殊だからね?私も一応緑銀級の冒険者だけど、あのビンタに耐える自信ないから!」
「ぼくだってミノルさんがくれた魔法がなかったら耐えれてないからね!?だいたいエリーゼは白金等級よりも強い『カード崩壊』だよね?ならみんな倒れちゃうって!」
いーえ、ミルフィは倒れませんでした!だからやっぱりあの『断罪の大鎌』の人達はおかしい。
「そうだ!ミルフィのお父さんがステータス測る魔導具持ってたわよね?それでこの人達のステータスを測ればちゃんとした等級が分かるんじゃない?」
「えっ?それならこのギルドにもあるでしょ?」
このギルドにある物は全く信用ないからね、当てにならない。
「ぼ、ぼくお父さん呼んでくるよ!」
ミルフィは自宅に走って戻るみたい。結構距離あるわよ?元気ね。
それならミルフィを待ってる間、どうやらもうひとりいるらしい気配の正体を突き止めるとしましょうか?




