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079 喫茶『ネコの尻尾』

 グレース市の中心街を真っ直ぐ進み、目抜き通りをちょっと越えて少し街並みが寂れ始めている辺りにそのお店はあるの。


 四つ辻の一角のちょっと日の当たらない所にある二階建ての建物。


 喫茶『ネコの尻尾』


 きちんと製材された柱や壁は真っ黒で、とはいえ木目はしっかりしてるから塗装されているわけではなさそうなの。


 本当に『黒い樫の材木』でできてるのよ。やけに存在感溢れる建物なの。


 でも、通りに面したところはガラス張りの大きな窓が付いてて中が見えてる。きっと中から街並みを見ればほっこりとした時間が過ごせるに違いないわ。


 屋根には銀色の瓦が葺いてある。ちょっと勾配がキツめな寄棟造のとんがり屋根がとってもキュートなのよね。


 重厚感がありながらとってもポップに仕上がってるこの建物、さぞ高名な建築家が建てたんだろうなぁ。


 ミノルおじさんなら建てれるかなあ?うーん、さすがに無理かもしれないわね。


 あら?前回来た時は気付かなかったけど、隣に空き地があるわ。どうやらこのお店に備え付けられた荷馬車を停める場所のようね。


 そこにまゆげちゃんを停車してみた。せっかくあるなら使ってみましょ。


 鍵を掛けるのを忘れないようにしなきゃね。


「ここがあの『コーヒー』を飲めるお店なのね。楽しみだわ!」


「私は食事よ。珍しい物が食べてみたいわね。」


「私コーヒー飲んだことありません。美味しいの?」


 まゆげちゃんから降りてお店の前にやってきたお姉様方は初めての喫茶店なのかちょっと落ち着きがないわ。お店の前で騒がないでほしいです。


「ま、まぁまぁ中に入りましょ。私だって以前お父さんに連れられて来ただけですからこれで2回目ですよ!」


 そう言って入口のドアを開けた。


 カランカラーン……


「きゃ!何?何の音?」


「うふふ、ドアにベルが付けてあるんです。お客さんが来たことを伝えるためみたいですけど、なんだか風情があって良くないですか?」


 ちょっと緊張気味なおしゃれお姉さんがドアチャイムに驚いちゃったみたい。私はこれけっこう気に入ってるわ。可愛いしね、カランカラーンって。


「いらっしゃいませ、4名様ですね。こちらへご案内致します。」


 前来た時から変わらない、すっごい綺麗なお姉さん店員さんが4人掛けの席に案内してくれたわ。


 私はサブマスさんと同じ側の椅子に座った。向かいが魔法士さんとおしゃれお姉さん。窓側をサブマスさんに譲ってあげた。私は前回充分堪能したからね。


 窓から辻がよく見える。良い席だわ。それにどうやら他にはお客さんいないみたい。まだお昼ご飯には早いもんね。


「ねえねえエリーゼちゃん、ここは何が食べれるのかな?こんなお上品なお店だとマナーとかあるんじゃないかな?私全然わからないわ!」


 魔法士のお姉さんも若干焦ってるみたい。私だって2回目なんだから何が食べれるのかわかんないわ。


「こういう時は聞くのが1番よ。すみませんよろしいですか?」


 サブマスさんがそう言って手を挙げた。さっすが!大人な女性は違うわね、卒がないわ。


「はい、ご注文ですか?」


「私達あまりこういうお店に慣れてなくて。お目当てのコーヒーをいただきたいのですが、その前に何か食べたくて。何かオススメはありますか?」


「当店は喫茶店ではありますが、御要望に合わせて様々な食事を提供させて頂いております。軽食から肉料理、煮込み料理や炒め物、お魚料理も提供出来ます。パンだけでなく米や麺もお出し出来ますよ。」


 そ、そうだったんだ!前回はパンとサラダとスープだったもの。それでも充分美味しかったわ。


「メニューも御座いますよ。ご覧下さい。」


 店員さんが紺色の板状の物を持ってきてみんなにひとつずつ配ったわ。それをパカッと開いたら中に料理が書いてある。


 帳面みたいになってるメニュー表だ!すごい、初めて見た!分かりやすいようにすっごい緻密な挿絵が描いてあるし、料金も書いてある。親切ね。


「うーん、私は軽くいただきたいわね。この『特製BLTサンドイッチ』という物をお願いします。」


「私はこの『クリームパスタ』というのが気になるわ。挿絵にはキノコとお肉が見えるわね。このニュルニュルのやつが麺なのかなぁ?」


「わ、私は『オムライス』っていうのがいいです。この黄色いのは何かなあ?見た目可愛いよね。赤いソースがビビッドで素敵です!」


 3人とも決まったらしい。私は何にしようかな?


 メニューをパラパラと捲ると『マスターのオススメ』って項目がある。サブマスさんが頼んだサンドイッチってのもオススメメニューみたいね。


 ん?オススメメニューの中に何やら気になるものがあるわ。


 な、何この真っ白のフワフワに茶色いソースがかかってるやつ!気持ち悪!


「すいませんこの『カレー』ってなんですか?すっごい茶色いんですけど。」


「カレーとは肉や野菜をブレンドされた香辛料で炒め、水分で溶いてから煮込んだ物を『ライス』に掛けて食すものです。美味しいですよ。」


 な、なんと!カレーとは香辛料のスープみたいなものだったわ。


 ピキーン!これだ!!


「これがいいわ、これを食べたいです。」


 私は『カレーライス』を注文したわ。見た目はアレだけど。


「かしこまりました。お嬢様には少々辛いかもしれませんので辛さ控えめなものをご提供致しますね。」


 なんかビビっときたのよね、これは美味しいって!辛さを控えめにしてくれるそうだし、これしかないわ!


 それに『カレー』っていう語感もいいじゃない?美味しそうな雰囲気しかしない。


 見た目に騙されちゃダメなのよ。


「ご注文を繰り返します。特製BLTサンドイッチおひとつ、クリームパスタおひとつ、オムライスおひとつ、カレーライス辛さ控えめおひとつですね、承りました。それでは食後のお飲み物をお選び下さい。」


 これは待ち遠しい。なんで前回食事のことを考えなかったのかしら?残念だわ。


 ま、過ぎたことは仕方がないから今回のカレーライスに期待しましょ!

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