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072 初めてのおつかい

「エリーゼ、そろそろ雪が降るようだ。すまないがその前にグレース市まで買い付けに行ってくれないか?」


 お父さんからお店の買い付けを頼まれたわ。


「はい、わかりました。さっそく行きましょう。まゆげちゃんはいつでも出れますよ!」


 久しぶりにグレース市までの買い付けよ。道がよくなってるから前より早く着くわね。


「今回は何をメインに買い付けるつもりですか?」


「うーん、うちは先日商業ギルドからAランクの商会として認められただろう?そのためその他の小規模商会や個人商店に品物を卸す必要が出てきたんだ。だから最近買い付けていた物はそちらがメインでうちの店に置く物が不足している。」


 どうやらうちのお店の商品が足りていないらしいわね。ほかのお店と業務提携して商品をそっちにまわしたってことみたい。


 うちの商品より他のお店を優先したってことだわ。傘下のお店を大事にして自分のお店を後まわしってのは問題ありよね?


 でも、御者不足で商品がなくなってしまった前の時よりちょっとはマシみたい。うちで足りない物を傘下の個人商店さんで賄えているのが大きな理由みたいね。


 ということは、お父さんの商会がAランクの商会になったのはこの街のためになってるってことだわ。


 お父さん、えらいです。素敵よ!


「そうだエリーゼ、今回はお前の好きに買い付けてきなさい。」


「え?私ひとりで!?」


 は!?ちょっと褒めたらもう変なことを言いはじめたわ!私だけで買い付けに行けですって?


 何の冗談ですか!?


「お父さん!お店をちゃんと切り盛りしてください!お母さんが困ってしまうわ。まあお兄ちゃんはちょっと困ったくらいがちょうどいいですけど。」


「知ってたかエリーゼ、その母さんと兄さんは最近工事現場の厨房で働いてるんだぞ?なんでもお前の近くで働きたかったらしい。まあ母さんは料理得意だからな。」


「は、初耳です!」


 なにやってるんですかお母さん!


「おかげで私は店を空けられないんだよ!だからエリーゼ、お前の好きに買い付けてきなさい。」


 お父さん超悪い笑顔だわ。これは半分ヤケになってるわね。ちょっとかわいそうになってきちゃった。


 エリーゼ、しっかりするのよ!あなたの買い付けしだいであなたの父が助かるんだからね!


「分かりました!お任せくださいお父さん!」


 お父さん、あなたの娘は立派にお務めを果たしてまいりますから!


 初めてのおつかい、行ってきます!




 とはいえ子供ひとりで大きな街になんか行っちゃダメだってことで、すぐに商業ギルドへ相談しに行きました。


「はっはっは!ウォール商会さんも中々豪胆だ。エリーゼ嬢ひとりに任すとはな。まあ実質は全く問題ないが、外聞的には問題があるな。」


 ギルドマスターさん、めっちゃ笑ってますけど、外聞だけでなく実質も問題ありますよね?


 か弱い少女が一人旅なんて……まあ私それなりに強いし日帰りですけど。


 それでも道中魔物や盗賊が出てきたら……交通事故が起きるだけです。それも相手が痛いやつ。


 もし買い付けで騙されたりしたら……ああ、私交渉術スキルLV3あったわ。たいがい騙されないだろうなぁ。


 実質は本当に問題なかった!?


「おい君達、エリーゼ嬢に同伴してグレースまで行くのだ。業務はエリーゼ嬢が行うので同伴するだけでいいぞ。大好きな女子会でもやってくればいい。」


 ギルドマスターさんが呼んだのはサブマスさんとお洒落お姉さんだった。


「かしこまりました、職員2名エリーゼ様に同伴致します。折角ですので倉庫に搬入する物品の視察も行いたいと思います。」


「許可しよう、何なら買い付けても構わない。積荷はエリーゼ嬢に持ち帰って貰う様になるが、良いかな?」


 ギルドマスターさんが私に訊ねたわ。当然問題ないです。


「はい、構いません。こちらこそありがとうございます。」


 うんうんと頷きながらお髭を撫で始めたギルドマスターさん。


 これは……多分先日のギルド証の一件はギルドマスターさんにバレてるな。お姉さんに私の能力を分かってもらうためグレースについて行かせるってわけね。


 サブマスさんもお洒落お姉さんにいろいろ説明してる。多分グルだわ。


「それでは明日早朝出発といきましょう。あなたもそのつもりで準備して下さい。」


「き、急ですけど!」


「急ではありません、明日ですから。」


 お姉さんは私のことあんまり知らないみたいだからなぁ。ちょっと説明しとこ。


「お姉さん、明日中に帰ってきますから普通にギルド勤務する感じで来てください。着替えとか要りませんからね?あ、グレース市でお買い物するならお小遣いを多めに持ってきてくださいよ。力は貸しますけどお金は貸しませんから。」


「え?えええ!?」


 困惑してるお姉さんをスルーして、ギルドマスターさんとサブマスさんに挨拶をしてから商業ギルドを後にしました。




「んで、私にも一緒に来て欲しいって?」


「はい、女の人ばかりのドライブですよ?楽しそうでしょ?」


 お向かいの冒険者ギルドに来て、『そよ風の輝き』の魔法士のお姉さんに声を掛けてます。


「こないだの『いやしそう』関係で割とお財布もあったかだし、冬になる前にショッピングもいいわね。」


 あはは、参加する気マンマンみたいね。声を掛けてよかったわ。


「んふふ女子会かぁ、楽しみだわ。リーダー、私明日エリーゼちゃんと出掛けてくるわ。問題ないわよね?」


 お姉さんはおじさんに確認を取ってる。ちゃんとパーティメンバーに伝えるのはだいじだもの。


「ああ、懐に余裕があるから街の外の依頼は受けねえよ。街中の依頼なら俺達だけでなんとでもなるから。それよりお前、しっかりエリーゼちゃんを守れよ!」


 おじさんがお返事してきたわ。私を守れですって、相変わらず親切な人だなぁ。


 でも、それを聞いたお姉さんはムッとした顔になっちゃった。


「はぁ?私がエリーゼちゃんに守って貰うんですけど。エリーゼちゃんの方が強いしレベル高いし!」


「なっ!?」


「ふーんだ、私だってか弱い女性なんです!それじゃあエリーゼちゃん、明日早朝門の所ね。了解しました!」


 お姉さんはそう言ってスタスタとギルドから出ていってしまった。


 まあ気持ちは分かるけどね。楽しくショッピングの気分に水を刺されちゃったわけだし。


 でも、言っちゃあダメな気がする。


「お前の方が年齢が高いだろ?頼むぜおい……」


「うーん、紅一点だからって甘やかし過ぎてるかな?」


「エリーゼちゃん、うちのがほんとにスマン。迷惑を掛けてしまうがよろしくな。」


 あわわ、彼氏のお兄さんなんかとうとう謝ってきちゃった!


「だいじょうぶですよ、ほんとにただの女子会ですから。」


 私はそう言ったんけど、『そよ風の輝き』のみなさんは申し訳なさそうに頭を下げてました。

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