069 ラフテレーンクレーン
翌日。
工事現場に着いたらたくさんの人に囲まれました!なにごと!?
「このお嬢ちゃんがワシらの為に宿舎を提供してくれたのか?」
「し、信じられん……」
「だがよ、このお嬢さんが街と街の間の道を整備してくれたのはカバルの皆が知ってる事だ。ならこの宿舎だって本当だろうよ。」
「ワシ、ちょっとした旅行気分なんじゃけど。ありがとうよ嬢ちゃん。」
どうやらこの人達は黒オヤジのおじさんが呼んだ建設作業員さんのようね。
全部で14人いるわ。わざわざカバルから来てくれたみたいね。
「みなさんおはようございます。私はエリーゼっていいます。みなさんがお仕事に来てくれてとってもうれしいわ。ありがとうございます!」
「な、なんだこの可愛らしい少女は……」
「天使だ!天使がいるぞ!」
「任せとけ!おじさん達頑張るからな!」
「うちの娘はこんなに可愛くないぞ……この子の父親がうらやましい!」
あ、あれ?なんだかみなさんの反応がおかしい気がします!
「おう嬢ちゃん、早速囲まれてるな。相変わらずのオヤジキラーっぷりだな!」
腰に変な袋をぶら下げたミノルおじさんが私を見ながらニヤニヤしてる!
「み、ミノルおじさん!言い方!」
ひどいわ、オヤジキラーってなによ。たしかに称号は『おじさんキラー』ってなってるけど、私そんなつもりは全くありませんから!
「エリーゼさんが着いたから早速始めよう!まずは図面通りに柱を建てる。その柱から梁や桁を這わす。そちらのミノルさんが提案した『プレカット工法』とか言う新しい建設方法だ。ちなみに梁や桁は既に加工済みで、この図面通りに嵌め込んで固定するだけだ。」
ミノルおじさんの後ろからやってきた黒オヤジのおじさんがそう言って手に持ってる板を私達に見せたわ。
みなさんその板をのぞきこんでる。そこには複雑に書き込まれた木の柱や梁の絵が書いてあったわ。
よく見てみると……上から見た絵、前から、右から左から、そして後ろから見た絵が書いてある。そして、柱や梁に文字や数字が書いてある。
私にはよくわからないけど、どうやらこの文字や数字通りに木材を組んでいけば建物が建つみたいね。
「な、なんだこりゃ?本当にこの通りに木材を組めば建物が完成するのか?」
「それにこの絵を見るに、この敷地いっぱいの建物なんだろ?すげえデカいじゃないか!無理じゃね?」
「おいおい、そもそも建物を建てるっていうのはもっと匠の技を使ったり力自慢が抱えあげたりするんじゃないのか?これっぽっちの人手で出来るのかよ?」
「いくら嬢ちゃんが可愛くてもこんな無理難題を言われちゃあな!」
集まった人達はそれぞれに苦情を言ってる。たしかにこんなでっかい建物をこれだけの人数で建てるのはたいへんだよね。
でもそこは……私の重機達がいるからだいじょうぶです!ついでに私力持ちです!
「じゃあ先に俺と嬢ちゃんと黒オヤジの旦那で柱を建てるわ。あんたらはとりあえずそれを見てな。出来そうだったら一緒に仕事をしてくれればいいよ。」
ミノルおじさんはそう言いながら基礎の近くに行き、腰に付けてた袋を外して中身を出していく。
目の前にぱっと出てきたのは積み上げられた木材の束!
「うおっ!材木だ!何処から出した!?」
「まさかあの袋は……アイテムボックス?」
「凄ぇ、初めて見たぜ。」
その木材には文字が書かれてる。それに、すでにでっぱりや切り込み、穴なんかも開いてる加工済み木材のようだわ。
なるほど!さっきの絵にあわせてあらかじめ材木を加工しておけば後は組み立てるだけなのね。
そっか、これが『プレカット工法』ってやつなんだ!ここで木材を切ったり削ったりするより断然早い。
それになんだか積み木みたいで面白そうね。私この木材を抱え上げられるからチャチャッと組み立ててみたい。
「この工法は正確な図面を引く事が出来ないと成立しないんだ。俺もミノルさんから習ってる最中なんだが、これは算術が出来ねぇと理解出来ない。この中で算術に自信がある奴は是非ミノルさんに図面の引き方を習えばいいぞ!」
黒オヤジのおじさんが腕組みをしながらみなさんに説明してる。
「嬢ちゃん、それじゃあ早速『クレーン』を頼むわ。みんなの度肝を抜いてやろうぜ!」
「えっ?この木材を『クレーン』で組むつもりだったんですか?」
「ああ、クレーンとはそういう高層建築物を立てる時非常に有能だからな。頼むぜ!」
……私が抱えて組んでみたかったな。ちょっと残念。
ちなみにクレーンとは巨大なものや重いものを長いブームやワイヤー、フックなどで吊り上げて運ぶ重機のことよ。
「そういうことなら……えーっと、『25トンラフテレーンクレーン』にしようかな?大は小を兼ねる、でしたっけ?」
「おう、デカい方が安定するから使い易いぞ。小さいクレーンのメリットなんか狭くても使える事位のもんだからなぁ。」
「へー」
それだけじゃないと思うけどな。運転しやすいし小さいからひとりで準備とかできるし。
でもやっぱりでっかい方を手に入れちゃうわ!25トンラフテレーンクレーン購入!ポチッとな!
「それじゃあ出しますよ。重機ラフタークレーン、召ー喚!!」
ぱっと右手を横につきだしてぐるっと回してから左手の手のひらに拳をぶつける。パシっと音がすると、目の前に真っ黒な壁が現れたわ。
中から現れたのは巨大な腕を生やした鉄の塊。青い車体がとっても綺麗。
ラフテレーンクレーンとは走行とクレーン操作が1つの運転席で行える形式の重機のこと。タイヤでわりと高速で自走できることから、本来他の重機に積載しての移動になりそうなところ自ら移動できちゃう。自走のおかげでセッティングの手間が省けるし、少々の荒れた地形などを走行することができる。
建設荷役のエキスパート。
「で、出たぞ、エリーゼちゃんの不思議な荷車だ!」
「あの子一体どれだけの荷車持ってんだよ。ていうかあの荷車があれば俺達居なくても問題なくね?」
「儂はエリーゼちゃんを近くで見れるんならなんでもええわい。」
「オレもオレもー!!」
よ、よーし、みんなにクレーンの凄さを見せてあげるわ。
私はクレーン車を所定の位置まで移動させ、アウトリガー張り出しを開始した。




