068 仮設住宅
「えらい時間掛かったな、なんかトラブルか?」
「なんにもない、なんにもないわ……」
ちゃんと空き地の使用許可は取ってきた!それでいいじゃない!
「では気を取り直して、ユニットハウスを出してみよっかな。」
「おう!どんな感じかな?近頃のやつは壁の中に注入式のウレタンが入ってて断熱性も高いしガラス窓もペアガラスだから結露知らずらしいからなぁ。」
「ミノルさん、アンタたまによくわかんねぇ事言うよな?」
とにかく、1番スタンダードなユニットハウスを召喚!
ポン!
「うおっ!やけにあっさり出てくるな!」
いつもなら重機達を呼び出すと壁が現れて中からばーんと出てくるんだけど、ユニットハウスは木箱を出すときみたいにポンと出てくるらしいわね。
「どうやらユニットハウスは道具や物資扱いみたいですね。」
出てきたユニットハウスは、横幅10メートル奥行6メートル高さ3メートルほどの四角い小屋でした。
淡く黄色がかった白い壁の建物は、圧迫感がなくて周囲にすごく馴染んでる。
長手側の壁に付いてる入口は引き戸になってて、鍵まで掛けられるようね。入口の付いてる壁面には窓が2つ、奥の壁面には窓が3つ、短手側の壁には窓がないわ。
中に入ってみましょう。
なんにもない内部はけっこう明るくて広いわ。天井に細長くて白い棒のようなものが付いてる。ミノルおじさんが発電機を繋いだら点灯する照明だって教えてくれた。
ああ、まゆげちゃんのヘッドライトみたいな電気とかいう力で光る明かりね。
そして面白いと思ったのが、ユニットハウスの下側に空いてる細長い2つの穴。
この穴はフォークリフトで持ち上げて移動させるために付いてるんだってさ!よくできてる!
「ミノルおじさん、このユニットハウスを連結したら大きなお家になりそうですね!」
「ああ、家にするにはちと無骨だがな。住めるっちゃ住めるぞ。持ち運びが出来るから災害なんかで困った人の為の仮設住居にしたり出来る。よく出来てるんだ。」
「へえ~。」
ミノルおじさんがいた世界ではこんな便利な物で助け合ってたんだね。素敵な話だわ。
「ま、無駄口はこれ位にして早速設置しちまおう。嬢ちゃん、まずは整地だ。空き地を平らにしてくれ。」
「は、はい!」
ミノルおじさんの指示でクシナダちゃんを召喚して空き地を掻いて均し、ローラちゃんで締め固めた。
「はあ、エリーゼさんは更に手際が良くなってるな。数分でしっかりとした地面が出来てるし。」
「うふふ、ありがとうございます。でもこれって全部重機達の力ですからね。」
「いやいや、エリーゼさんがその重機を持ってるから出来るんだ、エリーゼさんの力だよ。」
黒オヤジのおじさんが褒めてくれたわ。うれしい。
「黒オヤジの旦那、人足は何人位手配出来てるんだ?」
「20人はいないな。15、6人ってとこか?」
「そうか……折角嬢ちゃんが整地してくれたんだから使わねえ手はねえな。嬢ちゃん!大部屋を2つと個室をひとつ、風呂をひとつとトイレ2つ、食堂をひとつ頼むわ。これだけあれば数日誰も困るやつはいねぇだろ?」
「えっと、全部で追加6つと。精神力の貯蓄は充分だからだいじょうぶです。」
次々にユニットハウスを出してクリフトくんで運んでいく。
最初に出したユニットハウスは工事現場の近くに置いて作業員さんの休憩所に。
大部屋のユニットハウスは積み上げて2階建てにしてみたわ。積み上げもオプションの階段を設置するのもフォークリフトでできちゃう!すごい!
食堂の上に個室のユニットハウスを積んでみた。これにも階段を設置したわ。トイレは工事現場の休憩所近くにひとつ、食堂の裏手にひとつ、お風呂は大部屋の裏手に置いてみた。
「黒オヤジの旦那、得意のユンボの出番だ。浄化槽を埋める穴を掘ってくれ。接続は俺がやるよ。」
「おう、心得た!」
黒オヤジのおじさんはヒラリとニュートに飛び乗って、器用に穴を掘ってる。
たった1日でこんなに乗りこなせちゃうんだ!すごいわ!
「まあエリーゼさんがパイラーやらボウリングやらやってたの見てたし、昨日散々練習したからな。これ位出来るぜ!」
「いやぁ黒オヤジの旦那はなかなかセンスあるぜ?商業ギルドの職員は未だにリフト乗るの下手だし。」
そうなんだよねぇ。なぜかギルドの人達はフォークリフトに乗るのが下手なの。
さすがに私は買い付けや他の仕事をしたいわ。だから倉庫の管理だけをやるわけにはいかない。何とかしないと。
「後は発電機を置いたらおしまいだ。結線は俺がやっとくよ。嬢ちゃん、商業ギルドの裏に燃料を注入する為のスタンドを置いてるから発電機の近くに置いてくれ。」
「はーい。」
クリフトくんで商業ギルドに行ったら少し背の高い台の上にドラム缶を横向きにして固定してあるものがあったわ。これね。
「持ってきましたよ~」
「おう、こっちに置いてくれ。黒オヤジの旦那、これに屋根と壁を作りたいんだが良い方法ないか?」
「急拵えは難しいな。職工に作らせようか?」
「んー、工事の間だけだからな。燃料に太陽の光が当たらないようにするだけなんだがよ。発電機とも仕切らねぇと火事も怖ぇ。」
なるほど、燃料は燃える水だから温まらないように覆いを掛けたいのね。
なにかないかなぁ?
私は自分のステータスを調べてみたわ。えーっと、各種重機用備品の中にいいものないかなぁ?
バリケード、パイロン、工事看板、トラロープ、足場用鋼管一式、くさび緊結式足場一式、吊り足場用チェーン……
これ、使えるんじゃない?もしかしたら重機LV4の恩恵は重機周りの資材拡張だったのかも!
うーん、超便利!!
「ミノルおじさん、備品の中に『足場材』ってのがあります。これ使えませんか?」
「な、なんだって!?足場材!?使えるぜ!何があるんだ?」
「足場用鋼管とか固定式クランプ、自在式クランプ、足場板、ジャッキなんかがありますよ。階段とかもあります。」
「そ、それだ!えーっと、4メートル鋼管4本、2メートル鋼管12本、足場板6枚、固定クランプ16個、自在クランプ8個だ!あとジャッキ4つ!」
「りょうかーい!」
言われた通りに足場材を出すと、ミノルおじさんは楽しそうに鋼管を組み立ててドラム缶のまわりに背の高い箱を建ててしまったわ。
「ラチェット1本で組めるから楽だよな!後は周囲に木の板でも張りゃあバッチリだ!ありがとうよ嬢ちゃん!」
うふふ、お役に立ててなによりです。




