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067 ギルド証再発行

 私は商業ギルドにやってきたわ。


 理由はほかの空き地にユニットハウスを建設して働く人達の宿泊施設を作る了解を取るため。


 事後報告でギルドマスターさんにお願いしたら多分許可が出るとは思うけど、ちゃんと先に言わないとダメだもの。


 私、ちゃんとした大人になるんですからね!


「こんにちは、私はエリーゼです。ギルドマスターさんはおられますか?」


 ずらーっと並んだギルドのカウンターのひとつに行って、私は自分のギルド証を提示しながら中にいる職員のお姉さんに聞いてみた。


「あら?何故ギルド内に子供がいるのかしら?あなた、ここは子供の来る所ではありませんよ、お帰りなさい。」


 あり?私たしかBランクの商人だったわよね?


 このお姉さんは私がふざけてると思ってるみたい。子供のイタズラに見えてるのかな。まあ私子供だし。


 でも私もギルド員なんだからいちおうできることはしとこう。


「あのー、私は商人です。これギルド証ですけど。確認してください!」


「なんですか……まあよく出来てますけど、子供の工作は家に帰ってからにしたらどうですか?まっ!Bランクなんて中途半端に高等級な物を!いいですか?これは偽造ですよ?あなたは犯罪を犯しているのです。私が見つけたから良いようなものを……これは没収します!」


 なんと!職員のお姉さんは私のギルド証を取り上げちゃった!


 ど、どうしよう……困ったなぁ。


 あれがないと街の外に買い付けも行けなくなるし、冒険者のお仕事もできなくなっちゃう!まずいわ。


 とはいえ多分このまま押し問答をしてもムダっぽいし、このお姉さんだって悪気があるわけじゃないと思うの。


 なんとかこのままギルド証を取り戻さなきゃ。私がギルド証を持ってないことが他の人にバレたら面倒なことになりそう。


 今のやり取りが露見したらきっとこのお姉さんはあの怖いギルドマスターさんに叱られちゃう。


 それはさすがにかわいそう。ただの勘違いなんだし。


 えーっと、確か、ギルド証はお金を払ったら再発行できる決まりがあったわね。


 銀貨1枚掛かるけど!


 最近買い付けなんかでお金を使うことが増えたから、お金の単位を覚えました。


 お金は、鉄貨、半銅貨、銅貨、大銅貨、半銀貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨の順に分類されて、鉄貨10枚で半銅貨になるわ。その後もそれぞれ10枚単位で上の貨幣の価値になるの。


 そして、お金の単位は世界共通で『アストル』に統一されてるんだって。それを管理しているのが商業ギルドなんです。すごいよね!


 アストルって、どこかで聞いたことあるんだけど……なんだっけ?


 とりあえずそれは置いとくとして……銀貨1枚は10万アストルってことか。


 高いなぁ。でも、背に腹は変えられない。でも私も商人のはしくれ、それくらいは持ってる!


 ていうか、たぶんこの辺りのどんな11歳よりもお金を持ってると思うわ。個人資産なら負けない。


 だってめっちゃ仕事してるもの。買い付けの利益だってあるし、道を作ったお金もちゃんといただいたし、昨日手に入れた薬草の素材もけっこうな収入になりました。


 ただ働きなんかしてないわよ?


 私はお金という武力を使ってこのピンチを穏便に、スマートに切り抜けるわ!


 大人っぽく、スマートにね!


 当然今の職員さんに言ってもダメなのはわかってるから、別のカウンターに行くことにしましょう。


 でも一般カウンターでギルド証の再発行なんてできるのかな?うーん、わかんない。


 とりあえず私は知ってる職員さんがいないか辺りを見回してみたわ。


 あっ!あの『会員様相談窓口』ってところの職員さんは知ってる人だ!昨日『いやしそうの葉』を入れるカゴを持ってきてくれた人よ。


 緑色のショートカットがカッコイイできる女全開な雰囲気のお姉さん。


 私はいそいそと会員様相談窓口の職員さんのところに向かったわ。


「こんにちは、私はエリーゼです。お姉さんごきげんようです!」


「あらエリーゼ様、御機嫌よう。本日はどの様なご要件でしょうか?」


 よかった、私の事覚えてた!それにまたエリーゼ様って言ってくれた!うれしいわ!


 んんん、冷静に、冷静に対応しなくちゃ。


「あのー、すみませんがギルド証の再発行をお願いしたいのですが……銀貨1枚はお支払いしますからできれば内緒でお願いします。」


 自分で言ってて怪しさ満点だけど、言うしかないもの。


「すみません、ギルド証は大変重要なアイテムですので理由なく再発行は致しかねます。再発行にはこちらの書類に必要事項を書き込んで頂き、ギルドマスターの決裁を受けてから再発行手続きを行い、10万アストルをお支払い頂き発行となります。」


 お姉さんは『ごめんなさいね』っていうような困った笑顔で私にそう説明しました。


 くうう、やばい、ギルドマスターさんに絶対バレちゃうシステムだったわ!


 どうしよう……さすがにギルド証がないのは困るわ。でも、正直に話したらあのお姉さんが悪く言われちゃう。それは嫌なのよね。


「むむむ、また来ます……」


 1度退散しよう。ミノルおじさんにお願いして穏便に交渉してギルド証を返してもらえるよう話してもらおう。


 穏便にいけばいいけど……ミノルおじさん口悪いからなぁ。でもさ、私のまわりの大人の人達ってすっごく優しくみえてけっこう怖い人が多いのよね。


「あの、エリーゼ様……いえ、エリーゼちゃん、なにか困った事があったんじゃないの?よければ私に相談してみない?」


 振り向くとさっきの相談窓口にいたお姉さんがカウンターから出てきて私に声を掛けてきてたの。


「あ、いえ……なんでもないというか、だいじょうぶです。」


「ああ、そっか、ギルドの人には言えないのね。それなら……」


 お姉さんは着ていた上着を脱ぎ、首から下げた受付嬢の名札を外してみせた。


「ほら、これなら私はギルドの人じゃなくてただのお姉さんですよ。ただのお姉さんなら相談できるよね?」


 そう言ってお姉さんは私の頬に手を当ててニッコリと微笑んだわ。


 なにこの人!どこの女神なの!?


 隣のギルドのカウンターにひっくり返ってるお姉さん、見習った方がいいわよ!


「あの……怒らないでくださいね。」


 いちおう念押ししとこう。


「さっき別のカウンターでギルドマスターさんへの面会を申し出たんです、倉庫の工事の件で土地を借りたくて。そしたらどうやらその職員さんは私がイタズラをしにきたと思ったらしく……私が提示したギルド証を持っていってしまったの。しかたがないからギルド証を再発行してもらえばいいと思って……」


 あっ!お姉さんのこめかみがビキってなった!こんな理由でギルド証の再発行はダメだったみたい!


 ひいい!怖い!


「ご、ごめんなさい!そんな理由でギルド証の再発行をしてもらおうとしたことは謝ります!でもそうしないと私お仕事できないし、誰かに言ったらあのお姉さんはきっとギルドマスターさんに叱られちゃうでしょ?あのお姉さんだって悪気があったわけじゃないと思うの!だから、私がギルド証を再発行してもらえば問題ないと思ったの。」


 するとお姉さんは、ほぅ、とため息をついたわ。


「エリーゼちゃんに対して私はただのお姉さんという事で話を聞いたのだから、怒らないようにはします。でも、これはギルドと商人様との間にある信用や沽券に関わる問題なの。子供とはいえ立派なギルド会員様に対してやっていい事と駄目な事があるのよ。そしてこれは……絶対やっては駄目な事!」


 ひいいい!怖あ!


「エリーゼちゃん、どの人にギルド証を取られちゃったの?」


「い、言ったらお姉さんを怒らない?」


「怒らないけど叱ります。これは大事な事だから。エリーゼちゃんも叱りますよ、ギルドで問題が発生したらきちんと報告しなきゃ駄目。もしこの事があなたのお父様や他の大人に知れてしまったら、再発行どころの騒ぎじゃないでしょ?あなたなら分かるわよね?」


 ………分かります、いい大人達が徒党を組んでギャアギャア騒ぎ立てる画が脳裏に浮かびます!


 はわわ、大問題だった!!まだまだ私は考えが甘かったようね。


 大人にはほど遠い、大失敗。


「とりあえずエリーゼちゃんの気持ちを尊重してギルドマスターには報告しません。その代わりその職員には私がしっかりと指導するわ。当然ギルド証は返します。それならいい?」


 お姉さんの笑顔がとっても怖いです。


「あ、あまりきつく言わないであげてくださいね……」


 私はしぶしぶ、右から3番目のカウンターの職員さんです、と答えました。


 ごめんなさいお姉さん、私あなたを売りました。だって怖かったんだもの!


「ギルドマスターはマスタールームにいますよ。誰かに案内させますね。お話が終わったらまた相談窓口に寄って下さい。ギルド証をお返ししますから。」




 ギルドマスターさんとお話が終わり、私がギルドの1階に降りてきたところであのお姉さんが泣きながら必死に謝ってきました。


 だいじょうぶですから!誰だって間違いますから!だからそんなに泣かないでください!


 そしてこの人から、あの相談窓口にいたお姉さんがここの『副ギルドマスター』さんだったことを知らされました。



 ああ、納得、怖かったあ。私ちゃんとした大人になることを誓ったわ。

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