065 複合スキルと悪巧み
ギルドマスターさんのお部屋は縦横8メートルほどの真四角な部屋でした。床は緑色の毛足の短い絨毯、壁は淡い色の木の板が縦向きにびっしり張ってあり、天井は白くて1番奥が窓になってる。
中央に向かいあわせのソファとローテーブルがあり、奥に片付けの行き届いた書斎と質素なチェア、右奥には正面がガラス張りの木製チェストがあったわ。
そして、左の壁には沢山の賞状が貼ってあり、その真ん中に商業ギルドの紫色の旗が貼ってあった。
「し、シブいです……さすがギルドマスターさんです。」
「ホントに、性格が出てるわね。ある意味素敵なお部屋だわ。」
「質実剛健ってやつか?緊張するぜ。」
「職場だからと思いたい所だな。自分の家だったらヤバいだろ?」
「いや、きっと自宅も同じだぜ。そうであって欲しい!」
ギルドマスターさんはそんな言葉を聞き流しながら奥の書斎に腰掛けたわ。
「ふむ、私のプライベートルームは隣の部屋だ。そんなには変わらんよ。ベッドと身体を洗う水場とクローゼットがある程度だ。まぁかけたまえ。」
ギルドマスターさんは住み込みで働いてた!一人暮らしなのに白い髪やお髭はピッチリ整えられてるし、シャツもスーツもシワひとつないわ。
ダンディなおじさんは生活面もダンディなうえ、ストイックな人でした。
「で、話を聞こう。エリーゼ嬢、それだけの素材をどうやって集めたのだ?始まりから詳しく教えてくれ。」
「はい、私達は今朝セルマンの森にポーション素材を集める依頼を達成するためまゆげちゃんに乗って出かけました。森の中を進み、まゆげちゃんが木々に阻まれて動けなくなるまで進んだあたりで『そよ風の輝き』のみなさんが周囲の警戒をはじめました。」
ギルドマスターさんはお髭をなでてる。
「ふむ、まゆげちゃんに乗って行ったこと以外は通常の行動だな。それで?」
「はい、まず私は『地図』というスキルを使用しました。これは今まで通ってきた場所から半径1キロメートルまでの距離を正確に、その他の場所はおおざっぱに表示してくれるスキルです。その地図上に『探知』というスキルを重ねました。これは私を中心に半径2キロメートルまでの指定したものを表示してくれるスキルです。それを使って『いやしそうの葉』を探知しました。地図は拡大するとかなり細かくなります。その地図にそっていやしそうの葉を探知して採集しました。ついでに『いやしそうの花』と『ヒールマッシュルーム』も探知しました。素材は冒険者ギルドにあった植物の本を読んで覚えてました。葉は1ヶ所の群生地にだいたい50枚から100枚くらいは生えてますし、そこに必ず1本は花が生えてました。ヒールマッシュルームは大きな古木の根っこに生えてました。」
「ふむ、私の知っている『探知』とは使い方が違うな。」
ギルドマスターさんの言葉にほかのみなさんも口々に意見を始めたわ。
「俺も探知スキルを持っていますが、基本探知は任意の場所を探知、異常がないかを調べるスキルです。ダンジョンで罠を探知したり、通路の辻に魔物が隠れていないかなどを探知するものだと。」
斥候のおじさんが丁寧に話してる。やっぱりギルドマスターさんが怖いのかな?
「私も概ねそう考える。エリーゼ嬢が使っているのはどちらかと言えば『千里眼』などの固有スキルのようだ。」
固有スキルっていうのは、鑑定会なんかで見つけてもらう自分が最初から持ってるスキルのことよ。私でいえばとうぜん『重機』よね。
あのとき一緒に鑑定を受けたジーク君の『従者』やマリアちゃんの『聖女』、それにミルフィの『回復士』もそれにあたるわ。
「そんなレアスキルをどうやって真似してるんだ?もしかして『地図』と『探知』の組み合わせでそうなってるのか?」
そう言ったのは剣士のお兄さん。
「スキルを組み合わせるなど出来るのか?私は知らないな。」
「魔法で考えれば可能かもしれません。私も『ファイアウォール』を『ウインドブラスト』で煽って火炎を増加させたりしますから。もしかしたらエリーゼちゃんは『地図』を『探知』してるんじゃないでしょうか。」
魔法士のおねえさんは自分の経験を交えて話したわ。おねえさんったらそんな物騒な魔法の使い方してるのね。
でも、考察はあってる気がする。元々は道に人がいないかを地図上で探知してたことから始まった使い方だから。
「エリーゼちゃん、その『地図』のスキルはどうやって手に入れたんだい?差し支えなければ教えてくれないか?」
おじさんがそう聞いてきた。ちなみにこのおじさんはふだん大きな盾と斧で戦ってるのよ。確か『タンク』とかいう職業だったっけ?
「いいですよ、簡単だもの。マールの街をまゆげちゃんの走行訓練で走り回ったら手に入りました。道を覚えるためだったんです。ちなみに探知はケガをしたみなさんを冒険者ギルドに運んだ時身に付けました。まゆげちゃんで人をはねないよう必死だったわ。」
「ううむ、確かにエリーゼ嬢には簡単だな。我々にはきついか?」
「いえ、俺達はマールの街に長く住んでいたからなんとなく道を覚えているだけです。ですからよその街やダンジョンの道を覚えようと歩き回れば身に付くかもしれません。」
歩くなら時間がかかりそう。私はまゆげちゃんに乗ってだから楽ちんだったわね。
「ふむ、どうやらその線が濃厚の様だ。地図上で指定したものを探知する……複合スキルとはなかなか面白い発想だ。流石はエリーゼ嬢だ。」
複合スキル!とくにそんなつもりはなかったんですけどね。
「これは他人に知られても良いのでしょうか?」
「余り好ましくはないな。極論を言えば暗殺などに使えてしまう。暗殺対象を探知すればどこにいるかも分かるし、やり方によっては無防備な時を選んで暗殺を実行出来る。実際『千里眼』持ちの暗殺者は実在するぞ。」
「固有スキルをそんな事に使うのか…….勿体ない!」
さらっと恐ろしい話を聞いちゃった!私ったらなんて不用心にスキルを使ったのかしら!
いえ、ある意味『そよ風の輝き』の人達の前で使ったからその危険性が理解できたんでラッキーなのかもね。
「と言う訳で今の話は君達の胸に秘めていてくれ。礼と言ってはなんだが、これを渡そう。」
ギルドマスターさんは書斎の引き出しからなにかメモ書きみたいなものを出してペンで書き込み、ハンコを押しておじさんに渡したわ。
「ん?受領書?って、0アストル!?なんだこりゃ?」
アストルってのは、お金の単位。でも0アストルってことは、ただの紙切れじゃない!
「これを持ってあの小娘に叩きつけてやるがいい。君達には買い取った素材の金額を渡そう。なに、冒険者ギルドの中抜きがないから結構な額になるぞ。ちなみにいやしそうの葉は10枚単位だったな?普段は幾らだ?」
「銅貨2枚、200アストルですね。」
それを聞いたギルドマスターさんはため息をついたわ。
「それはかなり中抜きされているぞ?商業ギルドからは800アストル支払われている。税で4割取られても500アストル位にはなる。あの小娘は300アストル抜いているな。」
「は、半分以上ですか!?酷ぇな!それを俺達に納品までさせたのかよ!それも無料で!」
ほんっっと、あの人にはガッカリだわ!私の脳裏にニヤニヤしながら金貨を積み上げてるお姉さんの笑顔が浮かんだ。
「それに、これからはエリーゼ嬢を介して商業ギルドから直接『そよ風の輝き』に依頼を出そう。エリーゼ嬢はBランクの商人だから彼女を介せば規約違反にならないだろう。いやしそうの葉10枚、税を差し引いて銅貨5枚だ。良い稼ぎになるかな?」
この世界の人の日当はだいたい大銅貨5枚って聞いたことがあるわ。ということはきちんと日当を稼ごうと思ったらいやしそうの葉は最低100枚取ってこなきゃダメみたいね。
でも、今日は6人で2000枚オーバー、それも葉っぱだけでよ?
『そよ風の輝き』のみなさんは顔を見合わせて……すっごい悪い笑顔になったわ!
どうやら契約は成立したようですね。
私の脳裏には冒険者ギルドのカウンターを叩きながら涙目になったお姉さんの顔が浮かびました。
こんちわ!ぴ〜ろんです。今週はここまで!
感想や誤字報告ありがとうございます。すっごく助かってます。元気は分けてもらえるし、作品はより完璧に近付くしいいことずくし!
さて、来週1週間おやすみをいただきます。理由は書き溜めが全く無いから!読んでくださるみなさんにより良いものを楽しんでいただくため、しっかり書き溜めてしっかり推敲していく事を目標にしていましたが、ここ数週間のイベントや体調不良で全く追いつかなくなってしまいました。これでは本末転倒!なにとぞご理解よろしくお願いします。
感想や励ましのお便りは受け付けております。自分お返事書くの大好きなんで、是非よろしくお願いします。
それでは1週間後におあいしましょう!みなさんぴ〜ろんを忘れちゃダメですよ!では。




