064 お使い
「あら?あなた達もう帰ってきたの?ポーション素材はフリーのクエストだから別にいいけど、結構あのオヤジからせっつかれてるのよね。しっかり取って来なさいな。」
冒険者ギルドに帰るとギルドマスターのお姉さんからわりとメタい挨拶が返ってきました。
「ああ、薬草はエリーゼの嬢ちゃんがしっかり取ってきたから大丈夫だ、心配ない。」
「え?あなた達エリーゼちゃんに薬草集めさせて何してたのよ!酷いわね!」
「何勘違いしてるんだバカマス!」
「誰がバカですって!?」
「アンタだよバカマス!俺達は周囲警戒してたに決まってるだろうがよ!エリーゼちゃんに薬草採集の勉強をして貰おうとしてたの知ってるだろうが!まあ勉強どころか採集の女神が降臨したんだけどな。」
「どこに?」
「ここに。」
『そよ風の輝き』のみなさんが周りに集まって手をヒラヒラさせながら私をヨイショしてるし。
もう、採集の女神ってどんな女神様なんですか。
「あーはいはい、それじゃ集めた薬草持って商業ギルドに納品してきて下さーい!」
お姉さんはカウンターに頬杖を突いたまま反対の手のひらをシッシッと振ってる。
え?ポーションの素材は冒険者ギルドへの納品依頼だったわよね?相手先への納品は依頼とは違う。
「はあっ!?なんで俺達が!?」
「お使いみたいなものよ。」
「ほ、報酬は?」
「ではみたいを削除します。お使いです。」
こ、これは酷い!依頼の中身を確認しなかったら完了にならないからこの依頼はただ働きになっちゃうわ!
「おいバカマス!ちゃんと働けよ!」
「あ、領収書確認したら払ってあげますからね。」
「ほんとにお使いじゃんか!」
「馬鹿にしやがって!!」
みんなめっちゃ怒ってる!そりゃそうだわ。
はあ、仕方がないわね。
「みなさん、多分言っても無駄ですよ。商業ギルドに行きましょ。ついでに談話スペース借りてお話ししたらいいんじゃないですか?」
私はため息混じりにそう提案したわ。ほんとに言っても無駄だもの。
「ぐぬぬ!確かに!ギルマスに掴みかかった所でアイツの方が強えしな、時間の無駄か。」
「そうですね!ホントに時間が無駄だわ!」
「もう薬草採集の依頼は受けねぇからな!」
「はいはーい、行ってらっしゃーい!」
ニコニコしながら頬杖突いて手をヒラヒラ振ってるお姉さん。
はぁ、この人はホントにダメな人だわ。うちのお兄ちゃんと共通するなにかを感じるわね。
「……という訳ですよ。ほんとに腹が立つぜ!」
「で、こっちへ来たと。全くあの小娘は……まあ使うのは商業ギルドだ。受け取ろう。」
商業ギルドは冒険者ギルドの目の前だからすぐに到着。商業ギルドに入り、受付カウンターに行くと私に気付いた女性の職員さんがギルドマスターさんを呼びにいきました。
ギルドマスターさんはすぐに来てくれたわ。
冒険者のおじさんが代表してギルドマスターさんにことの次第を説明しました。
てかさ、この距離を渋ったんだあのお姉さんは。そんなことしてるから冒険者ギルドに職員さんがいないんじゃないのかな?
ギルドマスターさんはさっきまでいた職員さんを呼んだわ。職員さんは手提げの籠を持ってきた。
「エリーゼ様、この中に薬草を入れて下さいね。」
エリーゼ様って!お姫様になったみたい!
「ははは、良かったなエリーゼ様!高ランク商人だから当然じゃねえの?……ああ済まないなお姉さん、籠じゃ入り切らねぇよ。木箱が必要だ。」
「え?」
冒険者のおじさんが私を見てニヤニヤしながら返事したわ。
「どういう事だ?」
「採集したのがエリーゼちゃんだっつったら理解して貰えますかね?へへっ。」
ギルドマスターさんが私を見た。
「ふむ、成程な。ならエリーゼ嬢、納品数を教えてくれ。正確にだ。」
「は、はい!『いやしそうの葉』が2357枚、『いやしそうの花』が259輪、『ヒールマッシュルーム』が192個です!」
私の話を聞いたとたん、ニヤニヤしてた『そよ風の輝き』のみなさんはギョッとした顔でこっちを見た!
「えっ!?さっき花とキノコの話はしなかったじゃねえか!」
「だって、聞かれてないですよ?」
「た、確かに……いやしそうの葉を見ただけで騒いじまったからなぁ。」
「そりゃあ当然だったな。なんせ『探知』で探したんだ、他の素材も探せるぜ。」
「やってるとは思わなかったわね。」
『そよ風の輝き』のみなさん!顔が怖いですぅ!
「む、君、ここはいいから業務にもどれ。」
「はい、失礼致します。」
ギルドマスターさんは職員さんに退席を指示したわ。職員さんは笑顔のままお辞儀をして受付カウンターから離れていきました。
冒険者ギルドのお姉さんは職員さんのこういう所を見習ってほしいわ。
「『そよ風の輝き』、私と一緒にギルドマスター室に来て貰おう。どうやら聞かれてはならない話になるようだ。」
「了解しました。みんな、商業ギルドのギルドマスタールームだぞ?良い機会だから堪能させて貰おうや。」
「ふうう、ちょっと緊張するな。なにせ商業ギルドのトップの部屋だし、あの『粉砕鬼』の部屋だぞ。」
「うわぁ、緊張してきた!」
「私も……」
そういえばギルドマスターさんは元赤金等級で二つ名持ちの冒険者さんだったんだわ。同じ冒険者なら緊張するんだろうね。
私は冒険者見習いだから緊張しないわよ。でもあのダンディなギルドマスターさんのお部屋を見れるのはワクワクしちゃうけどね。
私達は案内されるままにカウンターの中を通り、階段を昇って3階にあるギルドマスター室へ向かったわ。




