060 お別れ会
「それじゃあミルフィちゃんのお別れ会と今後の活躍を期待する壮行会を合わせて行います!」
「おーー!」
「パチパチパチ」
冒険者ギルドの飲食コーナーをお借りしてミルフィのお別れ会&壮行会をすることになったわ。
参加したのは私と私のお父さんお母さん、お兄ちゃん、ミノルおじさん、モジャおじさん、隊長さん、黒オヤジのおじさん、『そよ風の輝き』のみなさん、たまたまギルドにいた冒険者さん達、そしてギルドマスターのおふたり。
場所を提供してくれた冒険者ギルドのギルドマスターさんには感謝しなくちゃね。
「がはは、ここの利用料金は商業ギルドが出してくれたから安心して飲み食いしてね。いやぁ儲かっちゃうわ!」
やっぱりこの人は美人なだけのポンコツさんだった。
「俺達も一緒でいいのかい?」
たまたま居合わせた冒険者さん達はちょっとバツが悪そうね。
「えー、みなさんミルフィにいろいろ教えてくれてたじゃないですか。ぜひ参加してください!」
「ははは、エリーゼちゃんにそう言われちゃ参加しない訳にはいかねえな。」
追い出すわけにはいかないし、ぜひ参加してください。
「さて、やりますか。」
『そよ風の輝き』のおじさんがそう言ってお酒の入ったカップを掲げたわ。
「ミルフィちゃんまた来いよな!それじゃ四の五の言わず、かんぱーい!」
「「「かんぱーい!!!」」」
かなり乱暴なあいさつにミルフィは困った顔で笑ってる。
うふふ、こういうノリってかなり冒険者っぽいわね。
「おいミルフィちゃん、後で模擬戦やろうぜ。ちったあ強くなったんだろ?」
「うわぁ、エリーゼの予想通りの展開だ。いいですよ、やりましょう!」
うふふ、『そよ風の輝き』のメンバーさんはさっそく模擬戦の約束を取り付けてるわ。ミルフィもふんすとしてる。やる気まんまんのようね。
「なんだよ、先に飲めよ。折角只酒が飲めるんだぞ?」
「全くだ。たまにはゆっくり酒飲んで語らうのも悪くねぇぜ。」
ミノルおじさんと黒オヤジのおじさんはがははと肩を組んでお酒の入ったカップを抱えてるわ。
最近よくいっしょにいるから仲良しになったんだね。いいことだわ。
「こう見ると我らがマールの街も人が増えてきた。素晴らしい事だ。」
商業ギルドのギルドマスターさんがグラスに入ったお酒を掲げてそう言った。グラス越しに辺りを見渡してる。
「ギルドマスターさんはいつからこの街にいるんですか?」
「ん?そうか、エリーゼ嬢はこの街で生まれたのだったな。我らがここへ来たのはもう20年以上も昔の事だよ。ここは領主様自らが開墾され作った街なのだ。当時領主様は伯爵家の3男で無役だったのだよ。」
「へええ、じゃあギルドマスターさんはその時からここにいるんですね。」
「当時私は冒険者だった。領主様の開墾作業の護衛でこの街へ来たのだ。領主様は手勢20名程度で木を切り土地を耕し囲いを作った。その功績でこの地の領主になったのだ。」
そういえばマールから向こうには街がないって聞いてる。なんでかなって思ってたけど、どうやらここが開拓の橋頭堡だったみたい。
「あの方に頼まれて私や冒険者ギルドの小娘達はこの地にとどまったのだよ。当時冒険者だった君の父君もその頃この街にやってきて商人になった筈だ。『商人』スキル持ちの冒険者なんて珍しかったからよく覚えているよ。」
へえ!お父さんはこの街が出来たころからここにいたんだ。知らなかったな。
「みなさんいろいろ経験してるんですね。私は将来どうなるのかなぁ?」
「ははは、君はまだまだ大きくなれるさ。ミルフィさんだってそうだ。君達には未来がある。」
ギルドマスターさんは嬉しそうに自分のお髭をなでながら反対の手で私の頭をなでてくれました。
「ミルフィちゃんよ、アンタにプレゼントがあるぜ。」
ミノルおじさんがミルフィに腕輪を投げつけてる。女の子に対してする態度じゃないわよね。
「わっわっ!!」
あっ!ミルフィ受け取り損ねてお手玉してるし!
「あ、ありがとうございます。なんですかこれ?」
「貰いもんなんだが『腕輪型アイテムボックス』だ。冒険者には便利だろ?やるよ。」
「ええええ、アイテムボックスって超レアな<アーティファクト>じゃないですか!貰えませんよ!」
「いいって、要らねぇんなら捨てちまえ。」
「す、捨て…あわわ、ありがとうございます……」
……落とさなくてよかったわね。
ミノルおじさんってば私にも空間収納付き指輪をくれたもの。まゆげちゃんにも組み込んでたしいったいどこから仕入れてるのかしら?
「ミノルさん!俺達も欲しいです!」
『そよ風の輝き』の人達がミノルおじさんに詰め寄ってるわ。
「はぁ?求める者には与えられないのだよ。人はこれ『物欲センサー』と呼ぶ。」
「どういう意味?」
「欲しがるやつは手に入れられず、何も考えてなければひょんなタイミングで手に入るのさ。」
「ぐぬぬ……」
「まあがんばれや。」
ミノルおじさんはカラカラと笑いながらまたお酒を飲み始めた。
「て言うかさ、最初にそんなレアアイテムが出たら俺達プレゼント出しにくいじゃないかよ!」
「そんな事ないぞ、こういう物は気持ちだから。ミルフィさん、マジックポーションの詰め合わせだよ。エリーゼと仲良くしてくれてありがとう。これからも頑張りなさい。」
お父さんはミルフィにマジックポーションの入った箱を渡した。
「俺は状態異常を治すポーションだ。毒と麻痺に効くぞ。」
モジャおじさんもポーションのセット。
「ありがとうございます。大事にします!」
「ははは、余り大事にされても困るからジャンジャン使いなさい。」
お父さんったら……よかったねミルフィ。
「私からは靴と手袋だ。昔使っていた物をミノル殿に仕立て直して頂いた。」
商業ギルドのギルドマスターさんからはかわいい白の靴と手袋。
「わあ、かわいい!ありがとうございます!」
「白く染めたのはミノル殿だな。しかしよく染めたものだ。ワイバーンの革は染物に向かなかったと思うのだが。」
「ははは、あんな黒い革じゃ女の子にはちと無粋だからな。染め方は企業秘密って事で。」
「ひいい!わ、ワイバーン……」
ワイバーンって、ドラゴンの仲間みたいなやつよね?
ミルフィは固まっちゃってる。
「ドラゴンの革ならなにか効果があるんじゃないですか?」
「防汚に硬化、軽量化、だったかな?」
「ついでに防水と浄化を付けといた。お手入れ要らずだぜ?」
「ありがとうございます。大事にします……」
すごいわミルフィ。ちょっと初級冒険者が身に付けるには早い気がするけど、絶対に役立つはずよ。
「私からはエリーゼ嬢と同型の盾を送ろう。ふたりともこれから大きく強くなるのだ。頑張って欲しい。」
隊長さんからは盾だって!あの皮に金属の補強が入れてあるかっこいい盾!
「ありがとうございます!エリーゼとおそろいだって!嬉しい!」
「うふふ、私もうれしいわ。ありがとうございます隊長さん!」
「喜んで貰って何よりだ!」
隊長さんのなでなでは優しいのよ。ふたりともなでてくれました!
「俺達からはこれだよ。ミルフィは結構力持ちだからな、ちょっと大型の戦槌だ。戦う回復士を目指してくれよ。」
『そよ風の輝き』のみなさんからは大きめのメイス。頭が四角くて鋲が付いてるわ。柄は細くてグリップに皮が巻いてある。けっこうかっこいいかも。
「わあ!ありがとうございます!エリーゼ見て見て!すごく強そう!」
「よかったわね、冒険者なんだから見た目も強そうじゃないとだめだもの。」
「ああ、なら俺はこれをやろう。余り物だがまだ使えるぞ。」
急な参加になった冒険者さんがくれたのはメイスを背中に背負うためのストラップだったわ。
「サブの武器でメイスを使ってた事があるんだ。左側の籠にメイスヘッドを入れて、右側のホルスターにグリップを固定する。ワンタッチで外せるから便利だぞ。」
「素敵です!ありがとうございます!大事にします!」
「ははは、中古だが喜んでもらえるなら嬉しい。」
急な参加なのにプレゼントをくれるなんて、すっごく粋な人ね。
「お前……点数稼ぎやがって……俺も負けてられねぇぜ。嬢ちゃん、俺からは冒険者証を入れるケースをやるよ。首から下げて懐に入れときな。落とさずに済む。」
もうひとりの冒険者さんも負けじとプレゼントを用意したわ。赤い紐のパスケース。
「ありがとうございます!」
ミノルおじさんがくれたアイテムボックスに入れた方がいい気もするけど黙っときます。
こういうのは気持ちがだいじ!
こうして楽しくて幸せな時間はゆっくりと流れていきました。
でも、それはミルフィとのお別れが近づいているってことでもありました。
こんちわ!ぴ〜ろんです。今週はここまで!
おかしいな、今週中にミルフィ編が終わりませんでした。ちょっとだけ来週に続きます。
ミルフィはエリーゼの友達として街に残ってもらおうかと迷いましたが、『一期一会』も大事なイベントだと思うので予定通りグレース市へ帰ります。
まあ道が完成したら車で3時間程度だからいつでも会いに行けるよね。
来週からは倉庫建設の続きですが、とりあえずエリーゼさんの出番はあんまりないのでステータス回になりそうです。頑張って書きたいと思いますが、明日新型コロナウイルスワクチン接種2回目……ちょっと心配です。
体調がよかったらまた来週お会いしましょう!ご感想や評価もよろしくお願いします。




