059 ギルドマスターは心配性。
ローラちゃんは横幅が4メートルになっちゃって走る速度も時速25kmくらいは出るようになったから、作業効率が跳ね上がったの。
道幅よりちょっと小さいだけだから、往復すれば充分締め固めれちゃう。
というわけでモータグレーダの眷属化が急務となりました。
「よーし、この子にいい名前を付けてあげなきゃね。モータグレーダっていえば地面を削るでしょ?削る削る、削ってなだらかにするから……けずらか、は違うな。」
削るから発想を転換させようかな…うーん、削るといえば梳く?梳くといえば櫛かなぁ。そうだわ、梳くって書いて梳るとも読むから梳ってなだらかにすると……
「あなたの名前を『くしなだ』にするわ。梳ってなだらかにするから『くしなだ』。わあ!かっこいいかも!ついでにカスタマイズもしなきゃね。えーっと、サイズや重量は12トンクラスだから充分だし、運転席ももともとキャビンタイプだから快適だわ。それなら色を変えてあげましょ。」
くしなだってなんだか女性っぽい響きがあるからこの子は女の子に決定ね。
そういえばこの子のフォルム、ちょっと細長いから女性っぽいといえばそうかもしれないわ。
色もみんなと同じエメラルドグリーンにチェンジ!しめて10万wpなり。
「カモン!くしなだちゃん!引き続き道直しの旅に出るわよ!」
真っ青な壁の中から現れたのはモータグレーダ改めくしなだちゃん。エメラルドグリーンのボディが美しくてお姫様感があるわ。
当然『E08MG KUSHINADA』のロゴも入ってる。
くしなだちゃんったらルルルルルってアイドリング音もなんだかうれしそう。
「よし、くしなだちゃん、発進!」
ルルルルルってエンジン音を立ててくしなだちゃんは軽快に走り出したわ。
「うーん、最近分かったんだけど、名付けをして眷属化すると重機の性能が明らかに上がってるわよね?」
ミルフィより速く酪農村に着いちゃった。ちょうどいいから待ち時間で少し考えてみよう。
まゆげちゃんは最初から眷属になってたから分かんないけど、他の子達は名付けたら掘ったり削ったりする能力が高くなってる気がする。
ブルータス様もそうだったわ。はじめて道を削った時も優秀だったけど、名付けとカスタマイズをしたあとは以前より明らかにパワーやスピード、施工の仕上がり具合がよくなってた。
くしなだちゃんもそうなのよね。さっきまでとスペックは同じなのに明らかに振動は少ないし、なんといっても作業が速いのよ。
結論から言うとカバルの街から酪農村まで1時間掛からなかったわ。距離は倍くらいあるのに。
そのスピードはなんと時速50km。少々の凸凹は綺麗に削っちゃうし、それでいて削って排出されている土砂もなんだか少ないし。
これってすごく効率がいいってことよね。このまま開拓村まで行っちゃえそうな勢い。
「でも、開拓村の周囲は木の切り株とか岩山とかあったからね。ニュートやブルータス様とかが出ないと終わらない気がするわ。もしかしたらドレイクも出動しなきゃいけないかも。」
開拓村だけにまだまだ周囲が拓ききれてないもの。きっと重機の出番があるわ。
うふふ、楽しみにしとこう。
そうこうしているとミルフィを乗せたローラちゃんがやってきたのでくしなだちゃんを送還して私もローラちゃんに乗り込み、ふたりで仲良く酪農村を後にしたわ。
マールに着いた時もうあたりは薄暗くなってた。
ちょっと肌寒いわね。
もう冬だもの、日が落ちるのが早いわ。
「あっ隊長さんこんばんは!ただいま戻りました。」
「おお、エリーゼ嬢にミルフィさんか。お帰り。」
「はいギルド証です。」
「ははは、確認しました。もう暗くなるから早く帰りなさい。」
「「はーい。」」
マールの門でふたりとも隊長さんにそれぞれのギルド証を見せてから門をくぐる。
隊長さんもミルフィと打ち解けてきたわね。まあそんな彼女は明後日グレース市へ帰ってしまうんだけど。
「とりあえずミノルおじさんのところに行って今後のことを話しましょ。その後冒険者ギルドに行って報告しなきゃね。」
「エリーゼ、ミノルさんと冒険者ギルドはぼくがひとりで行ってくるよ。君は商業ギルドに道の整備のことを報告しないと。ぼくもお話が終わったらエリーゼのお家に向かうからね。エリーゼのご両親にも報告しなきゃ。」
以外にもミルフィはひとりで行動するつもりらしい。確かにその方が効率はいいけど……だいじょうぶかなぁ。
「ホントにひとりでだいじょうぶ?」
「平気だって!もう!ぼくは冒険者なんだよ?エリーゼは心配症だなぁ。」
ミルフィはまかせろ!とばかりに胸を叩いて得意げな顔を見せてくれた。
「そっか、それじゃお家で待ってるからね。ミノルおじさんによろしく!」
私はミルフィと別れて商業ギルドに向かうことにしたわ。
まゆげちゃんを走らせて商業ギルドに行き、ギルドマスターさんに道路工事の進捗を伝えました。
ついでに明後日ミルフィがグレースに帰ることも伝えたわ。
「うむむ、残念だな。彼女はエリーゼ嬢とチームを組んで商品の輸送などをやってくれそうだと思っていたのだが。」
ギルドマスターさんはちょっとガッカリしてるみたい。
「ミルフィはグレースの冒険者ですからね。それにやっぱりお父さんのところにいた方がミルフィだってうれしいでしょ?」
「彼女の親御殿もご息女が近くにいた方が安心されるか。そうだな、それが良いかも知れん。しかし……」
ギルドマスターさんはお髭を撫でながらうむむ、と声を漏らしたわ。なにか考え込んでるみたい。
どうしたのかしら。
「エリーゼ嬢、君は寂しくないのか?」
ああそっか、ギルドマスターさんは私の心配をしてくれてるのね。この人はほんとに優しいおじさんです。
ふふ、だいじょうぶよ。だって離れてたってミルフィは私のお友達なんだから。
「寂しくないかって言われたら寂しいです。でも、ミルフィは冒険者だから。グレースの人達のためにがんばりたくてここに来たんですもの、笑顔で送り出したいです!それに…….ミルフィは私のお友達ですから!!」
「友か、そうだな。いや失礼した。歳を取ると心配性になるものでな。済まなかった。」
ギルドマスターさんは私の頭に手を置いて優しく撫でてくれたわ。
心配してくれてありがとうございます、私もがんばります!
「そうだ、明日ミルフィのお別れ会をしようと思ってます。よかったらギルドマスターさんにも参加してほしいです。」
「分かった、是非参加させて頂こう。エリーゼ嬢の友人の旅立ちだ、盛大に祝ってやろうとも。」
「はい!」
私の元気なお返事にギルドマスターさんはニコリと笑顔を返してくれました。




