058 ミルフィ専用機
そりゃもうミルフィのごきげんっぷりったらすごかったわ。
終始にこにこしながら残りの道を『ローラ』ちゃんに跨って締め固めていった。
いろいろ検証した結果、ローラちゃんはミルフィの眷属なんだけど私の管理下に置かれてて、召喚や送還は私が把握してないとできないみたい。
あと、仕事をして得られるワーキングポイントは私に入ってくるし、カスタマイズも私がやらないとダメ。
ミルフィだけでローラちゃんを運用するのは難しそうね。
でもメリットもあったの。なんとミルフィがローラちゃんに乗るとレベルが上がるの。これはすごい。
今まで私以外の人が重機に乗った場合、ステータス値が上昇することはあってもレベルは上がらなかったわ。だけどミルフィがローラちゃんで仕事をした時に限りレベルが上がったのよ。
マールの街からカバルの街まで締め固めを行った結果、ミルフィのレベルが4になりました!
さらになぜかミルフィに『操車LV1』のスキルが生えました!
「すごいねエリーゼ、ローラちゃんがぼくの眷属になっただけでレベルが上がるようになったうえ、操車のスキルまでついたよ。」
「そのスキル私にはないのよね。もしかしたらミルフィは重機だけじゃなくて馬車も運転できるかも。」
「ああ、そっか!それはうれしいなぁ。馬車が運転できればきっと冒険者の依頼も増えるよ。」
護衛任務や荷運びの依頼を受けるにあたって『操車』のスキルは有能だと思う。
なぜ他の操車スキル持ちの人達が重機の運転を苦手とするのかは分かんないけどね。
そんな話をしながらもミルフィはしっかり残りの道をローラちゃんで締め固め、私は後ろからまゆげちゃんとかけるくんで追いかけながら端に寄ってる土砂を回収したわ。
「よーし、マールの街からカバルの街までの道が完成よ!」
「やったー!」
お弁当に持ってきたパンを食べながら重機を走らせ、カバルの街到着は午後1時20分。さっきよりは速かったわ。
しっかり踏み固められた横幅5メートルほどの道。高低差もほぼないし緩やかなカーブはあれどもほぼ真っ直ぐ。
「これなら走っても数時間でマールまで行けそうだね。いやあがんばったよ。」
「そうね。こうやって地味に道を整備しながらグレース市まで行けたらこの仕事はおしまいよ。」
マールからグレースまでは約150kmあるからあと7倍くらいの距離があるわ。さらに酪農村から向こうはまだ未開地だからブルータス様で切り開かなきゃいけない。
まだまだ掛かりそうね。
「エリーゼ。」
遠くグレースへ続く道を眺めていたところへ声がした。
振り向くと、さっきまでの笑顔がうそだったってほど神妙な面持ちをしたミルフィが立ってるわ。
「なあにミルフィ。」
ミルフィはモジモジして話しにくそうにしてる。
うーん、これはもしかしたら……
「ミルフィ、グレースへ帰るのね。」
単刀直入に聞いてみる。
「…….やっぱり分かっちゃうんだ。エリーゼはすごいね。」
やっぱりそうか。ミルフィは回復士としてやっていくために私のところへ来たんだもの。とりあえずミルフィには回復士として充分な能力が備わってるわ。
なら、ミルフィがグレースへ帰るのは当然の行動よね。
「ぼくグレースに帰るよ。このままお世話になりっぱなしっていうのもいけないしね。君には感謝してる。本当はこのままローラちゃんやエリーゼの重機達といっしょにグレースまで道を作りたい。でも……」
分かってるわミルフィ。みなまで言わないでもわかってるから。
だってあなたは冒険者なんですもの。
冒険者とは魔物から街を守ったり、誰かが必要な物を手に入れてきたり、困った人を助けるために依頼を受けて活動するのが仕事だもの。
決して道路工事や建設工事を請け負う人じゃないわ。
私はミルフィの話の腰を折るように話しかける。
「さみしいけど、ミルフィも早くおうちに帰ってお父さんに報告しなきゃ。精神力も増えたしいろんな力を身につけたよってね。」
「あ……うん、素敵な友達ができたことも伝えるよ。当然だよ。だってエリーゼはぼくの恩人で親友なんだからね。」
そう言ったミルフィの目から涙が溢れてた。
うふふ、ミルフィは何を思って涙が出たんだろう。帰るのがうれしいのかな、お父さんに自慢できるのがうれしいのかな。それか、道路工事が文字通り道半ばだから最後までやれないのが悔しいのかもしれないわね。
でも……でも、もしかしたら、もしかしたら、私と離れるのが寂しいからだったら、私も……
「ミルフィ……」
私は思わずミルフィに抱きついた。
さみしい!かなしいわ!
ミルフィは私を優しく抱きとめてくれた。
「エリーゼ……離れてもぼくは君の友達だよね!」
「あ、当たり前でしょ!?なんてこと言うのよ!道が完成してグレース市に着いたらミルフィのお家に行くからね。その時私を忘れてたら許さないんだから!」
「わ、忘れるわけないじゃん!」
ミルフィは顔をクシャクシャにしながら微笑んでる。
たぶん、私の顔もクシャクシャね。
「ならいいわ。よーし、じゃあ明日はマールでお世話になった人達にあいさつをかねてお別れ会をしなきゃ。きっと冒険者さん達は模擬戦を仕掛けてくるわよ。そうだミルフィ、レベル上げをかねてこのまま酪農村までローラちゃんを走らせましょう!私モータグレーダで先行するわ。」
「うん!ぼくもこのまま終わりってのはちょっといやだったから次の村まではがんばるよ!」
うふふ、ミルフィったらさっきまで泣いてたのにもうやる気まんまんね。
そうだ!それならローラちゃんをミルフィ専用にカスタマイズしちゃお!
「ミルフィ、ローラちゃんはあなたのロードローラーなんだから、あなた専用にカスタマイズするわ。タイプや形は今までの経験上でやっちゃうからミルフィは色を決めてちょうだい。」
「ええ!?ぼく専用のカスタマイズ?いいの?」
「当然よ。だってローラちゃんはミルフィのものなんだから。」
ミルフィは嬉しそうに笑いながら、もっと濃い青にしてほしいって言ったわ。
「じゃあいくわよ!サイズは大きく10トンサイズ、運転席はキャビンのドア両開きと後部ハッチ開閉式で、パワーウィンドウとマイクとスピーカーを付けるわ。ローラタイプは振動機構付きコンバインド式にチェンジ!そして、色はコバルトブルーよ!ポチッとな!」
お代はしめて2,800万wp!高っ!でも、ミルフィのためなら問題なしよ。
「ミルフィ、ローラちゃんを呼んであげて。大きな声で呼ぶのよ。」
「う、うん。」
すーはーと深呼吸をするミルフィ。大きく息を吸い込んでから右手を高らかに上げて、大きな声で叫んだ。
「ローラちゃん!ショーターイム!!」
パチィン!
ドゴゴゴゴゴゴ!!
指を弾いた音に合わせて地響きをさせながらオレンジ色の壁がそびえ立つ。中から現れたのは巨大な青い姿だったわ。
「ええええ!ローラちゃんでかっ!」
「青が眩しくて目に刺さるぅ!」
丸っこいフォルムはそのままだけど、キャビンが埋もれたように配置されているせいでいちだんと車体が大きく見えちゃう。
ていうか、大きい!
後ろタイヤが鉄輪からゴムローラーに変わったわ。鉄輪は小石とかをそのまま締め固めるのに対しゴムローラーは砂や泥、水気を含んだ土を締め固めるのに適してる。どっちもいけるからコンバインド式なのよね。
雲ひとつない空のように深い青のボディに白い文字で書かれていたのは『E07RR-M1 ROLA』ってロゴ。
『エリーゼ7号機ロードローラー、ミルフィ1、ローラ』ってことなんだろうなぁ。うんうん。
「すごい!これがぼくの重機なんだね。エリーゼありがとう!」
私達はそのまま酪農村に向かって重機達を走らせたわ。




