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054 花形といぶし銀

「まあ嬢ちゃんのステータスならぶっ飛ぶこたぁなかったか。でも気を付けるんだ。ブームを伝って高くまで上がったコンクリートがホースを伝って真っ逆さまに落ちてくるんだからな。」


「び、びっくりしたぁ。」


 下に向けてたホースから出た水は鉄筋の下の地面を穿って土を跳ね飛ばしてしまったの。


 すごい勢いだったけど……私の体力ステータス、もう200を超えちゃってるからこのくらいの力なら全然問題なかった。


 ふう、真面目に冒険者ギルドで訓練しといてよかったわ。


「通水は終わったな。じゃあ本番といくか。生コンを入れるぞ。生コンは1番遠くから打設していけ。そうすれば嬢ちゃんの足場が確保される。ミルフィちゃんはそこの棒で打設された生コンを突くんだ。そうすりゃ中に含まれる空気が抜けてコンクリートが強くなるし、割れやひけになりにくくなるぞ。打設された生コンの中に入るから躓かないよう足元注意だ。黒オヤジのダンナはミルフィちゃんの処理が終わった所からそこにあるレーキで平らに慣らしていってくれ。あんまり掻き回すと生コンの中の粗骨材が掻き出されて強度が落ちるから手早くやるんだ。アンタも足元注意だぞ。因みにコンクリートの強度は『ヤング値』っていう係数で表されるんだ。」


「最後の説明は今必要ですか!?」


「いらね。」


 それじゃやりますか。


 私はテレコンを操作してポンプ車のブームを動かし、木枠の1番角に進んだ。


「いきます!スイッチ、オン!」


 テレコンのスイッチを入れて構える。


 後ろの方からガーガーと生コン車のミキサーが回る音がしてるわ。


 ミノルおじさんがポンプ車に生コンを送り込んでるんでしょうね。


「ほ、ホースが揺れる!」


 突然ホースが揺れ始めたわ。上を見るとポンプ車のブームがグイングイン揺れてる。


 きっと1番上まで生コンが送り込まれたんだわ。来るわね!


 ダザアアアア!!


 手元のホースから勢いよく生コンが噴き出してきたわ。すごい勢い!


「嬢ちゃん、生コンを定量打設しながら横移動だ。型枠に線が引いてあるだろ。そこまでは打たなくていい、ギリギリを攻めろ。後は黒オヤジのダンナが均してくれる。ダンナは明らかに生コンが足りなかったら掻き集めながら嬢ちゃんに追加を頼め。ミルフィちゃんは頑張って突け!自分とダンナに『デトックス』掛けるのを忘れるなよ!いいか、生コンは打設された端から乾き始める!スピード勝負だぞ!」


 ミノルおじさんの的確な指示が飛んだけど、なぜか私にデトックスを掛ける指示がないわ!


「ミノルおじさん、なぜ私にデトックスは掛けてもらえないんでしょうか?」


「いるのか?」


「……たぶんいりません。」


 わかってるけど、なんか仲間外れ感があるじゃないの!




 順調に生コン打設を進めていくわ。ミルフィは汗びっしょりで生コンを突いてるし、黒オヤジのおじさんがすっごく綺麗に生コンを均してくれてる。


「嬢ちゃん、生コンが切れちまう。追加を頼むわ。」


「は、はい!」


 ステータスを開いてコンクリートミキサー車を選び、生コンの追加をしていくわ。


 1立米5,000mpね。最近また精神力を貯めてるから貯金はたっぷり。


 生コン車に満タンのコンクリートを追加したわ。


「ようやく柱周りか。嬢ちゃん、その箱の周りに生コンを打設したら箱の中にも打て!」


「は、はい!」


 周囲にたっぷり生コンを打って、ミルフィがガシガシ突いたのを確認してから箱の中に生コンを打つ。


 ちょっと技を身に付けたのよ。少しホースを上に向け、手で蓋をしたらちょっとの間だけ生コンの排出を止めれるの。


 それを利用して木箱の中に生コンを打ったわ。


「おっ!上手いな!そういう小技を使えば周囲を不必要に汚さなくて済む。よくやった!」


 遠くからミノルおじさんの声が聞こえてくる。褒められちゃった。


「えへへ。」


「いいなぁエリーゼ、ミノルさんに褒められた。」


 ミノルおじさんって不意に褒めてくれるからうれしいな。


「ね、ミノルおじさんって優しいでしょ?」


「うん、そうだね。」


「何の話をしてるんだ?仕事中だぞ!?」


 真後ろにいたのはミノルおじさん!びっくりしたぁ!


「な、なんでもないです!」


「そうか、まあいいや。2人共頑張ってるからその調子で頼むな。」


 そう言ってから手に持った筒を今生コンを打った木箱の中にズボッと突き刺したミノルおじさん。


 そして反対の手に持ってた金属のヘラのようなもので木箱の上から溢れた生コンをシャッと撫でた。


「す、すごい!表面がピカピカだわ!」


「ミノルさん何をしたの!?」


「この箱の中が建物の柱の土台になるんだよ。だからこの紙で出来た筒を差し込んで柱を建てる穴を作ったんだ。溢れた生コンはこのコテで叩いた。」


 おじさんはコテをシャッと振り付着してる生コンを振り捨てる。


「箱の中には黒オヤジのダンナに頼んで鉄筋が仕込んであるんだ。それを生コンで固める。後でこのスリーブって言う紙の筒を破るなり燃やすなりすれば良い感じの穴が空くだろ?強い柱の土台の出来上がりだ!」


 そう言いながらまたピョンピョンと飛び跳ねながら生コン車の方へ帰って行っちゃった。


「さ、さすがミノルおじさん……なんかカッコイイね。」


「ちょっと……カッコよすぎだよね。」


「うん。」


 まあミノルおじさんはデキるおじさんだからカッコイイのは知ってたけどね。


「カッコイイといえば、黒オヤジさんの仕事も丁寧だよね。すっごく平らに均してる。」


 見上げると黙々と生コンを均してる黒オヤジのおじさんの向こうには光を反射してる平らなコンクリートの表面が見える!


 すごい!ピカピカだわ!


 それにしてもミルフィったらよく見てるわね!


「ミノルおじさんが花形なら黒オヤジのおじさんはいぶし銀なのよ。カッコイイわ。」


「うん、分かる。ふたりともすっごくカッコイイ!ぼく達もがんばろうね。」


「うん!」


 私達はカッコイイおじさん達に負けないようにがんばって自分の仕事をこなしていきました。




「……聞こえてるって、あんまりおっさんにカッコイイを連呼するんじゃねえよ……照れちまうぜ。」


 どちらのおじさんも同じことを言ってたのはまた別の話です。

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