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046 マール紳士同盟

 ギルドカードが溶けた秘密は分かった。でも冒険者の人達はギルドカードを普通に使ってる。


 冒険者のおじさん達はともかくギルドマスターさんやお父さんですらギルドカードを使って冒険してたんだから、私のステータスが異常なのは一目瞭然、ってわけです。


「エリーゼが経験値を稼いでる事自体が不思議なんだよなぁ。」


「たしかに!私スライム1匹倒したことないわ。」


 自分の血が出るだけでも怖いのに魔物を相手に戦えるわけないわ。


「俺が嬢ちゃんと一緒に重機に乗った感想を言うぜ。嬢ちゃんの重機は魔素が発生してる。」


 ミノルおじさんは自分の座ってる椅子をカタカタとさせながら言ったわ。


「魔素?なんだそりゃ。」


「魔法の素?知らないわ。」


 冒険者さん達は知らないみたいね。私は知ってます。


 魔素とは精神力のことで、魔法やある一定のスキルを使う時に消費される力の元みたいなものよ。逆に自分の生命力を使って力を強くしたり素早くなったりすることもできるみたい。その時の力は『闘気』と呼ばれてるわ。


 生命力を使用して気力で管理されてるのよ。すごいよね。


 ミノルおじさんに教えてもらいました。えへへ。


「魔素の事は何故かよく知られてないんだよな。ちなみに闘気については巷の認識は更に曖昧だ。闘気は生命力で、魔素は精神力で使用してそれぞれ気力と魔力に依存してるんだが……まあそれは置いといて、人間が魔物を倒してレベルが上がるメカニズムが、倒した相手から発散した闘気や魔素を吸収するからなんだ。」


「魔素や闘気はおろか精神力すら分からねえ。俺が知ってるのは4つのステータスだけだぞ?」


「俺もだ。」


「私もです。でも生命力や精神力の存在は本で読んだ事があります。」


 そういえばグレースで会った雑貨屋さんも、精神力については知らない人がほとんどだって言ってたわね。


「何故その様な事を知ってるんだ、ミノル氏!あなたは一体何者なのだ?」


 あまりにも知らない知識を披露したミノルおじさんに対してギルドマスターさんが声を荒らげた。


 ミノルおじさんもギルドマスターさんを睨みつけてる!


 あわわ!や、やばい!!


「ギルドマスターさん、ミノルおじさんを責めないでください!今は私のステータスの問題を話し合ってるんですから!」


 私はギルドマスターさんの手を握ってお願いしたわ!ミノルおじさんの秘密を暴いちゃダメなの!


 ミノルおじさんは異世界人。でも、この街が大好きなただのおじさんなんです!


「そうだギルマス、この際ミノルさんが何者でも構わないぜ。なんなら今日からミノルさんを賢者って呼べばいいじゃねえか。」


 冒険者のおじさんがそう言いながらミノルおじさんの肩に手を置いたわ。


「よせや、気持ちわりぃな。俺はただの街の修理屋さんだぜ?」


 嫌そうな顔をしながら冒険者のおじさんを見たミノルおじさん。


「ははは良いじゃねえか、俺達の街の修理工房主は実は賢者。んーマールの街に箔が付くぜ!」


 その言葉にちょっとだけ空気が和んだ。ナイス冒険者のおじさん!


「ミノル氏すまない、別にあなたを貶めるつもりではないのだ。あなたの言動と容姿を見ていると、ある事に思い当たる節があったのだが。」


「あんたの考えは多分当たりだ。まあその辺りはそっとしといて欲しいな。」


 ミノルおじさんの口許が少し緩んだけど、ものすごい威圧感がギルドマスターさんを突き刺す。


 ひいい!ギルドマスターさんはミノルおじさんの秘密が分かっちゃったみたい!


「え、エリーゼ、私にはミノルさんから何か目に見えない物が出てギルドマスターを包んでいる様に見えるのだが?」


 お父さんが私の耳元でそっと呟いたわ。


「はい、ミノルおじさんの威圧ですね。赤い闘気が発生してます。でも怒ってるわけじゃないわ。これ以上話を続けないようにギルドマスターさんを制してるんです。」


 私のささやきにお父さんは驚いたような表情をしたわ。


「エリーゼ、分かるのか!?」


「はい、私探知スキルLV3ですから。だからミノルおじさんの言ってる魔素や闘気のこと分かりますよ。」


「なんでそんなスキル持ってるんだ?私の娘が遠くに行ったような気がする……」


 あ、お父さんが目に見えて落ち込んでる。


 でも、闘気が見えないのに分かるお父さんもすごいわ。気配察知のスキルとか持ってるのかもね。


「重ねて済まなかった。お詫びしよう賢者ミノル。」


「なんだ?殊勝な態度の割にしっかりディスってくるじゃねえかよ。」


 ミノルおじさんがニヤリとした。いつもの顔だわ。ほっ。


「ははは、何とか場を和ます為に必死なのだよ。」


 ミノルおじさんが威圧を解いた。ギルドマスターさんはほお〜っと大きな溜息を吐いたわ。


「話を続けるぞ。レベルアップのメカニズムは魔素や闘気を取り込む事だ。そして嬢ちゃんの重機からは魔素が大量に噴き出してる。だから重機に乗ってる嬢ちゃんは大量の魔素を吸収してレベルが上がるんだ。」


 ミノルおじさんが気を取り直したようにまた話し始めたわ。


 そうだったんだ、魔素を吸収してレベルが上がるのは知らなかったな。確かに重機達から魔素が出てるのは知ってたけど。


 重機を呼び出した時に出来るブロックみたいな壁、あれ魔素だよ?


「ちなみにステータスは鍛えれば上がるぞ。これは実験結果を聞いてるから間違いない。更に生命力と体力、敏捷、気力は明確に繋がりがあるし、精神力、知力、器用、魔力にも繋がりがあるからひとつの高いステータスの値は他のステータスを引っ張る。嬢ちゃんの精神力は馬鹿みたいに高いから魔力や知力なんかが引っ張られて高いし、俺自身重機に乗って走り続けた時体力値に影響を受けた。よって嬢ちゃんの体力値も引き上げられてる筈だ。」


「そ、それは本当かもしれないぞ。実際に私の体力値が増加した事があるのだよ!」


 ミノルおじさんの説明にお父さんが大きな声で反応したわ。


 そう言えば初めてグレース市に行った帰り、お父さんの体力値が上がった話を聞いたことがある。


「それが本当なら由々しき事態だ。エリーゼ嬢の重機に纏わる秘密は世界を一変してしまう可能性がある。悪人であれば利用しようとするかも知れない!」


「ええええ!!」


 いやん、私の重機は訓練道具じゃないわよ!?


「私のエリーゼが……ゆ、許せん!」


「うちのギルマスを叩き出して正解だったな!彼女はこれみよがしに嬢ちゃんを利用しようとするぞ!」


「これはこのメンツ以外には他言無用だ……しまった、やっぱ衛兵隊長を呼んでおくんだったな。」


「彼には私から話そう。だが、これは領主様には教えられん。権力者に利用されては堪らない!」


 お父さんは怒り出したしみんなもザワザワしてる。


 でもね、私にはあんまり大事には感じられないんだけどな。確かに訓練道具にされるのは嫌だけど。


 だって、誰かの役に立てるのはいいことなんだもの。


「まあ他言無用ってのは理解するがよ、大した問題じゃねえよ。」


 ミノルおじさんがふふんと鼻で笑ってる。


「どういう意味だ?」


「まずこの話は俺達の間だから信用されてるが、普通に聞いて誰が信じるんだ?それに、みんなで嬢ちゃんやこれから未来を築く子供達を守るのが『マール紳士同盟』だろ?なら俺達がしっかりすりゃあいい。最後に、どこのどいつがうちのエリーゼ嬢ちゃんに勝てるんだ?今の嬢ちゃんはそこいらの英雄が5、6人束になっても勝てねえよ?」


 ま、マール紳士同盟ってそんなすごい団体だったの!?ていうか私そんなに強いの!?


「あーまあな……俺達緑銀級程度じゃ二桁居ても歯が立たねえもんなぁ。」


「確かになぁ。フルパワーで掛かっていっても盾で受け止めても貰えないもんな。」


「そうね……強化魔法掛けてても軽くいなされてたわよね。」


「そのくせ素直だからか教えたらなんでもこなしてしまうからさ、こっちも楽しくなって色々教えちまったもんよ。」


 ……私、みんな手を抜いてるものだと思ってました。なんだかすいません。


「という訳で、嬢ちゃんはやりたい様にやればいいさ。自重はいらねぇ、俺達がなんとでもしてやるさ。『マール紳士同盟』ってそういう組織なんだよ。分かったかい?」


 私の頭をぽんぽんしながらミノルおじさんは笑ったわ。


 ミノルおじさん、お父さん、ギルドマスターさん、冒険者のおじさんとその仲間達、あとここにはいないけどきっとモジャおじさんと隊長さんもメンバーなんだろうな。


 私はこんな素敵な大人達に囲まれて幸せです。


 それにやっぱり私は誰かの役に立てたほうがうれしいな。みんなが守ってくれるなら、私も誰かのためになりたいです。


「私は女だから『マール紳士同盟』の事務員さんなのよ。うふふ。」


 パーティメンバーのお姉さんが私の髪を撫でながら微笑みかけてくれました。

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