044 お姉さん、説教を受ける
「で、一体貴様はエリーゼ嬢に何をしようとしていたのだ?」
冒険者ギルドのフロアの真ん中に受付のお姉さん改め冒険者ギルドのギルドマスターさんが正座してます。
そのまわりをお父さん、ミノルおじさん、冒険者のおじさんとパーティメンバーのみなさん、そして商業ギルドのギルドマスターさんが腕組みをして取り囲んでます。
「はい…エリーゼちゃんを冒険者ギルド員にしようとしてました。」
商業ギルドのギルドマスターさんの質問に丁寧に返事をした冒険者ギルドのギルドマスターさん。
や、ややこしいわね。
「違うよな?嬢ちゃんの冒険者登録に何か理由があったよな。『目的が果たせない』って言ったもんな?」
冒険者のおじさんはギルドマスターのお姉さんの答えに反論した。
確かに言ってたわね。私が冒険者ギルドに登録することでなにか目的が果たせるような口ぶりだったわ。
「おいおい、女性を取り囲んでやる事じゃねえな。とりあえず落ち着こうや。これじゃ答える方も答えにくいだろ?」
「確かにそうだが…ギルドマスター、あなたはうちの娘に危害を加えようとしてた訳じゃないんだな?」
ミノルおじさんが場を落ち着けようとしたけど、お父さんは怒ってる。
「あ、当たり前よ!こんな小さい子に何かする訳ないわ!」
「なら何をしようとしてたんだ?危ない事じゃないなら言っても問題ねぇよな?嬢ちゃんに害がねぇんなら言えるよなぁ!」
ミノルおじさんもたいがい怒ってたわ。普段優しいミノルおじさんが怒るのは、私が危ない目に会うかもしれない時だけ。
「お父さんもミノルおじさんも怒らないでください。私なにもなかったですから。大丈夫ですから。」
「だがよ嬢ちゃん、もし俺達が居なかったらもしかしたかも知れなかったんだ。だからギルマスの目的が分からんうちは許す訳にはいかねぇ。」
「それにちょっと不親切でしたよね。魔力が込めれないなら血を掛けろとか、私には言えないわ。」
「ちゃんと魔力の流し方を説明したらエリーゼちゃんは出来たんだからな。確かに性急過ぎた気がする。」
冒険者のおじさん達が話してる内容はお父さんとミノルおじさんと商業ギルドマスターさんの眉間に皺を入れるのに随分役立ってしまった!
お父さんは目が死んでるしミノルおじさんは怖いくらい笑顔だし、ギルドマスターさんの背後には……鬼?
「大丈夫でした!ケガしてませんしちゃんと魔力の流し方も教えてもらいました!だから怒らないでください!」
私が宥めると目に光が戻り表情が冴えて鬼が消え去ったわ。
ふう、こわぁ。
「とりあえず目的を話せ。この後別の問題もある。そちらの方が重要なのだ。貴様の目論見などどうでもいい位だが……ケジメだ。」
「聞いたら怒らない?」
「内容にもよるがどうせくだらんのだろう?貴様のプライドとかその辺りの問題であろう。怒らないから話せ。」
「どうせ言ったら怒るでしょう。あなたはそういう人だもの。だからあなたには頼りたくないのよ。」
「話すのか?」
「話しますぅ!」
両ギルドマスター間で私にはよく分からない落とし所が見つかったみたい。ギルドマスターのお姉さんは溜息を吐いて話し始めたわ。
「グリース市から来た冒険者がエリーゼちゃんを訪ねて来たの。理由を聞いたら約束で話せない、でも本人に会わせて欲しいって言うのよ。とは言えエリーゼちゃんは一般人でウチも守秘義務あるでしょ?だから苦肉の策でエリーゼちゃんが冒険者になればパーティの斡旋って言う理由を付けて紹介出来ると思ったのよ。」
「……何故商業ギルドに紹介しなかったのだ?」
「あなた達に頼るのが嫌だったんですぅ。負けた気がするから。」
「俺達が間に入って繋ぎを取る方法もあっただろ?」
「あなた達じゃその子は理由を話さないわ。だったらあなた達は絶対エリーゼちゃんに繋がないわよね。」
「ギルドなら追い返せ!住民の安全を守るのは当たり前だろうが!」
「グリース市から駆け出し冒険者の女の子がひとりでここまで来たのよ!?追い返せる訳ないでしょ!」
要約すると、冒険者ギルドマスターさんのプライドはさておき、グリース市に住んでる駆け出し冒険者の女の子が周囲に言えない私との約束を守りながらわざわざ私に会いに来てるのね。
うーーーん、私その子にめちゃめちゃ心当たりがあるわ!
「お姉さん、その子ってもしかして私と同じくらいの年齢で回復士の女の子じゃないですか?」
「えっ!?エリーゼちゃん知ってるの……ぐぅ、守秘義務です!」
もうめちゃめちゃ喋ってるじゃない、今更過ぎる!
「お父さん、きっとあのグリース市で会った雑貨屋さんの娘さんだわ。ほんとに私に会いに来てくれたんだわ。」
私はお父さんに聞いてみたわ。
「ああそうだ間違いないな、私もそう思う。と言うかエリーゼに会いに来たんだからその話をエリーゼにすれば良かったんじゃないのか?本人に関する話なら守秘義務は関係ないだろう?」
私の話を肯定したお父さんはギルドマスターのお姉さんの行動の粗を的確に突いたわ。まったくその通りよね。
「そうか、その手があったわ!」
「そうかではないわ馬鹿者!無理矢理冒険者にするより簡単に思い付くことではないか!!」
冒険者ギルドマスターさんがポン!と手を叩いたとたん、商業ギルドマスターさんから雷が落ちました。
「ば、馬鹿って言った……」
私お姉さんのこと素敵な人だなぁって思ってたのに…残念です。
「その子は今どこにいるんですか?」
「今は私の家。昨日の夜ここへ来たから私の家に居候させてるわよ。私昨日の夜から寝ないでエリーゼちゃんを冒険者にする作戦を考えたのよ。」
半べそで答えるお姉さん。
それなら今日ここに連れてきたら良かったのに。なら解決してたよね!?
でもこれを言ったらまたおじさん達から雷が落ちてギルドマスターさんが困ってしまうわね。
かわいそうだから黙っとこう。
まあちょっと怖かったけど結果的には話が聞けて良かったと思うわ。だってギルドマスターのお姉さんは私と回復士の女の子の事を考えてできる限りの事をしようとしてくれたんだもの。
「ギルドマスターのお姉さん、私嫌われてしまったのかと思ったわ。だって血を出せ血を出せって言うんですもの。でもお姉さんは私達のことを考えて私を冒険者ギルドに登録させようとしてくれたのね。ありがとうございました。私冒険者になってもいいと思ってます。あらためてよろしくお願いします!」
私はギルドマスターのお姉さんにお礼を言ったわ。
「ぐっ!なんて良い子なの!これで外れスキルじゃなかったら最高なのに……」
お姉さんは目頭を押さえてる。
「外れスキル?貴様は何を言っているのだ?エリーゼ嬢のスキルは他の追随を許さない優れたスキルだ。くだらん考え事をするから脳が腐ったのではないか?」
商業ギルドマスターさんがまた噛み付いちゃった。もう勘弁してあげて。
「あの荷車を走らせるスキルでしょ?『そよ風の輝き』が壊滅しかけた時ちょっと見たけどただの荷車だったじゃない。外れよね。」
ギルドマスターのお姉さんはそう言って残念そうに私を見たわ。
そっか、もしかしたらこのギルドにはお姉さんしかいないから外を見ていないんじゃないかな?もしかしたら街や周囲の変化に気付いてないんじゃないかな?
きっと私のまゆげちゃんがおっきくなったのにも気付いてないに違いない。
私、自分の気持ちをハッキリ言いたい!
「お姉さん、私スキルは神様がくれた宝物だって信じてるんです。この世の中に外れスキルや落ちこぼれスキルなんてありません。私のスキルもみんなが応援してくれて助けてくれたから素敵な力を手に入れたの。だから外れスキルなんて言わないでください。」
「ううう、なんて良い子なの……健気よね。大丈夫よ、スキルが外れでも頑張る姿は尊いわ!」
お姉さんが私の手を取って泣いてる。あーあ、とうとう周りの大人達は呆れ始めちゃったわ。
さすがの私もイラッとした。
「お姉さん、ちょっと私とドライブしましょ。『出ろぉぉぉ!まゆげちゃぁぁあん!』」
パチン!ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「なっ!何これ!すっごいおっきい!おっき過ぎるわ!」
ちょっとよく分からない反応を示したギルドマスターのお姉さんを助手席に乗せ、私は街へとまゆげちゃんを繰り出した。




