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136 バス旅行

お久しぶりですぴ~ろんです。


で、でけた!投稿します。

 まゆげちゃんバスは街道をいいペースで走ってます。


 グレース市までは道がきちんと整備されてるから早く走れたけど、それ以降は道も狭いしガタガタしてる未整備道路。


 それでもペースを守れるまゆげちゃんの走破性はすごい。


 とはいえ明らかに車窓から眺める風景は山肌や木々ばっかりになってきたわ。


 最初こそ外を見ては楽しそうにしていたみなさんもさすがに退屈になってきたようです。




「嬢ちゃん、後どれ位したら到着なんだい?」


「明日の朝には王都の前に余裕で着いているはずですから座席を倒してお休みくださいね。」


「護衛任務で緊張してたのに、まさかただの快適な旅になるとはな!暇でしょうがねぇよ。」


「危険が数日間続く方がいいですか?」


「いやすまねぇ、快適が1番だな!ありがとよ!」




「おーいエリーゼちゃん、椅子がベッドになるなんて信じられん!どうやればベッドになるんだ!?」


「座席右側のアームレスト下にあるレバーを引っ張れば椅子が倒れていきますし、押し込めば起き上がっていきますから。」


「そんな装置があんのかよ!やってみるわ。」


「おいお前!それさっき説明受けてたよな!」


「ああ?そうだっけか?まあ良いじゃねえか!」


「ははーん、どうせあれだろ?お前エリーゼちゃんやミルフィさんと話がしたかっただけだろ?」


「「「違ぇねぇわ!」」」


「うるせぇな!良いだろ別に!」




「エリーゼちゃん、この荷車……まゆげちゃんだっけ?なんでこんなに静かなんだい?」


「いちおう魔導エンジンは静音なんですけど音が出ますから車体に遮音の魔法が付与されています。あまり外の騒ぎが聞こえると快適なバス旅行とは言えませんからね。」


「へぇ、凄ぇな!でもよ、魔物や盗賊なんかに襲われても分かんねぇな。」


「私達が運転席で探知をしてますから安心してゆっくりしてください。」


「至れり尽くせりだな!ならゆっくりさせて貰うぜ!」




「エリーゼ様、キッチンでお鍋の中の水を沸かしたくてツマミを捻ったら火も付いてないのにすぐに沸きました!何故ですか?」


「それは『MIH調理器具』という魔導具です。」


「その『MIH』って何ですか?」


「マギインダクションヒーティング、魔導式誘導加熱っていう物だそうです。魔素を魔導サーキット内に規則的に流すと接触している鍋底の魔石が反応して熱が発生するようですね。」


「よくわかりません。」


「すみません私もよくわかりません。ただ車内で火を使うと火災になったとき一般住宅より避難しにくくて危険ですが、この魔導具なら火を使わない分リスクがなくなるってことでいいんじゃないでしょうか。」


「なるほど……良い物で使い易ければ問題ありませんものね。ありがとうございました。」




「エリーゼ嬢、今前方に怪しい影が見えました!私を降車させて下さい。調べてまいります!」


「こっちの探知で調べますからだいじょうぶですよ……えーっと、今のはシカですね。」


「縞模様が見えた気がします!目が光りましたよ!虎じゃないでしょうか!?」


「えーっとシカですね、角がありますよ。」


「あっ……見えました、シカでした。」




「エリーゼちゃん、儂にもまゆげちゃんを運転させてくれんかのう。」


「領主様の精神力ってどれくらいあるか分かりませんけど、私やミルフィ、ミノルおじさん並の精神力がないと10分もしないで精神力枯渇でひっくり返ります。それでもいいですか?」


「うむむ、国王陛下の御前に立つ前にひっくり返ってはいかんか。帰ってから試させてくれ。」




「エリーゼちゃん、一緒に遊びましょ?」


「奥方様、私達は今仕事中なんです。王都に着いてからにしてください。」


「つまんないわ。」


「奥様邪魔です、主に乳が!旦那様方がお待ちですよ。お部屋に戻ってミノル様から教えていただいた『まあじゃん』という盤上遊戯で遊びましょう。エリーゼ様すみません。」


「お気になさらず……」




「嬢ちゃん、大丈夫か?」


「ミノルおじさん……そう思うんならおじさんのところでクレーム処理してくださいよ!自動運転とはいえいちおう哨戒任務だってやってるんですから!」


「す、すまねぇな、とはいえ俺もさっきから護衛の奴らの接待が忙しいんだよなぁ。」


「それってさっきから『チンチロリ〜ン』って甲高くて気に触る丼の中のサイコロの音が出るギャンブルのことですかね!?」


「王都に着いたらなんか買ってやるから機嫌を治してくれや。」


「結構です!ちゃんと自分のモノは自分で買いますから!とりあえずみなさんがことあるごとに運転席へ来るのを止めといてくださいね!」


「おーこわ、へいへい。」




「エリーゼも怒るんだね。ぼく君が怒る所あまり見た事ないからさ。とりあえずこれ飲んで。紅茶だから……」


「ありがとミルフィ、私だって怒りたくはないんだけどね。なぜかまゆげちゃんに大人数乗せて遠出するとみんな騒がしくなるんだよなぁ。」


「まあまゆげちゃんは珍しいからね、みんな必要以上にはしゃぐんじゃない?」


「ナルホドネーソウダヨネーシカタガナインダヨネー」


「ダメだこりゃ……」




 夜が更けてきてやっとみんな眠ったみたいです。


 私の仕事は乗客のみなさまを快適なバスの旅にご招待すること。それには安全確保も含まれるわ。


「ミルフィごめん、ちょっと付き合って。」


「当然だよ?エリーゼはぼくの親友で大事な人だから。」


「ほんとに嫁に行こうかな?とりあえず連れ狩りは友情の確認といえるのか試してみましょっか。」


 停車したまゆげちゃんの窓の前にはたくさんの光る目と黒い影が屯ってる。


「えーっと、おっきなグレイウルフが2体とちっさなグレイウルフが17体ね。」


「小さいって言ってもぼく達よりおっきいよね?」


「だって、あの2体がよりおっきいからしかたがないじゃない。」


「あわせて19体か……奇数だね。ならどっちが沢山倒せるか勝負だよ!」


「そうね、レッツダンシングといきましょ!」


 闇を切り裂くまゆげちゃんのヘッドライトが照らす中、私達は観客のいないステージへと躍り出ました。




「エリーゼ様、ミルフィ様、おはようございます。朝餉の支度を始めさせていただきます……あら?」


「くう〜」


「すう……すう……」


「うふふ、2人ともしっかりしている様ですがまだまだ子供ですものね……あら?ここは……もう王都に着いたんですか、お疲れ様です。さて、みなさんが起きる前までに支度しなくちゃ……」




 こうして私達は無事に王都への着くことができました。

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