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114 シカでした

「ん?南西600メートル先に生体反応あり。数は3。」


 順調にいやしそうの素材を集めてたら生き物を発見しました。


 たしかギルドの依頼で『食肉の確保』があったわよね。


「 えーっと、生物の反応は……これはシカかしら?」


「シカっスか!?ご馳走っス!」


「行ってみましょう!」


 そうね、とりあえず確認するまでは決定ね。


「それじゃロイド隊長、どういう作戦でどういうルートを使って進みますか?」


 いちおう研修ですからね、まずはロイドくんのお手並みを。


 ロイドくんもそれを理解したのか私をチラッとだけ見て首を傾げ始めたわ。


「そ、そうですね。自分が思い付くのは2パターンです。ひとつ目はセオリー通り少し迂回して風下に回り込み、相手に悟られない様近付いて魔法で拘束する方法です。リスクは低いですが気付かれたら一発で逃げられますし時間も掛かります。」


「ロイド先輩いい方法っス!俺もそれに賛成っス!」


 定石通りのハンティングにウィルくんが乗ったわ。


「もうひとつは?」


「もうひとつは自分のスキル『韋駄天』を使って高速で背後に回り込み、強襲を掛けてこちらに追い込みます。しゃ……エリーゼさん達はここで迎え撃って下さい。メリットは勝負が早く消耗も少ない。リスクは自分が単独なのでミスするとフォローがないです。それに驚いたシカが突撃してくるから危険です。」


「わ、私はこちらに賛成しましゅ。こちらにさえ、お、追い込んでくれたら……アタシの槍が火を吹くからな!」


 槍を構えたリリーナちゃんのスイッチが入った。これなら百発百中で仕留められそうね。


「エリーゼさんはどちらがいいですか?」


 うーん、私なら地図と探知を使って地味に近付き、ギリギリまで近付いたらダッシュで掛かって行って倒しちゃう。


 これじゃ駄目よね。


「二番目の方法は私達らしくていいかも。ロイド隊長が追い込んだらそれを狩りましょ。」


「「「了解!」」」


 ロイドくんが回り込んで追い立てる係、私とウィルくんが左右で音を立ててシカが散らばらないようにさせる係、リリーナちゃんが仕留める係です。


「ロイド隊長が回り込んだら私達も移動して追い立てます。リリーナちゃん、がんばって!」


「了解!」


「ウッス姐さん、行きましょうっス。」


「へっ!トドメは任されたよ!」


 ロイドくんはすごい速さでシカの奥に回り込むため森の中を移動してる。私もウィルくんに声を掛けて移動を促す。


「えっ?姐さんは何故こんな森の中なのにロイド先輩が向こうに着いたのが分かるんスか?」


「探知スキルで見てるからよ。」


「あっそっか!忘れてたっス。んじゃ行ってくるっスよ!」


 テヘッ、みたいな顔したウィルくんは私と反対の方に走っていったわ。もう!走ると気付かれちゃうから!


 とはいえ私も追い立てる場所に移動しなきゃ。グズグズしてたら逃げられちゃうわ。


 森の木々の間を抜けて移動していく。


 移動先でシカを探知したらもうシカは移動を開始してた。ロイドくんがいい距離感で追い立ててる。


 反対の方からガンガンと何かを叩く音がし始めた。ウィルくんね。


 私もピコピコハンマーの柄でバックラーをガンガンと叩いて音を立てる。


 その時、目の前の木と木の間を縦縞の何かが横切っていった!大きい!


 これってまさか、虎じゃない!?見通しが悪いからよく分からなかったけど、虎だったらまずいかも。


「うわっ!縞が見えたっス!虎っスよ!虎やべえっス!」


 ウィルくんの叫び声がしたわ!


 ウィルくんにも虎が見えたの!?シカと虎じゃ危険度が全然違うわ。リリーナちゃんだいじょうぶかしら?


 とりあえず戻ろう!


「どおりゃあああっ!!」


 その時リリーナちゃんの大きな声がした!やばい、急いで戻らなきゃ!


 いくらリリーナちゃんが強くても、虎相手だともしかしてがあるかもしれない!急げ!


「だ、だいじょうぶ!?リリーナちゃん無事!?」


「見なよ!仕留めたぜ!」


 急いで戻った先には槍に2頭のシカの頭部を突き刺しぶら下げてるリリーナちゃんが自慢げに立ってました。


「し、シカでした……」


「3頭来たけど根こそぎ取っちゃダメだって聞いたからよ、2頭で勘弁してやったぜ!」


 遅れてやってきたウィルくんも安堵の表情。


「縞模様がくっきり見えたから虎かと思ったっス!あせったっスー!」


 ウィルくんもかなり慌てていたみたいね。


「ウィルはおっちょこちょいか?どーみたってシカだろうが?」


 ウィルくんを詰るリリーナちゃん。


「エリーゼ姐さんも虎だって言ったっス!」


「えっ!わ、私虎なんて言ってないです……」


 思っただけです。シカでしたって言っただけですう。


 その時、ロイドくんが戻ってきた。な、ナイスタイミング!


「いかがでしたか?……おおっ凄い!大きなシカが2頭も!リリーナ、凄いですね!」


「お、おう!褒められても何も出ねえよ、アタシは任された仕事をしただけだからさ!」


 ロイドくんに褒められたリリーナちゃんはすっごい照れてる。


 ほほーん、リリーナちゃんはもしかしてロイドくんが好きなのかな?


 とりあえず2頭のシカを指輪の収納に入れた。解体は帰ってからやりましょ。


「はああああ、がんばりすぎたぁ……」


 槍をしまったリリーナちゃんはしおしおになったネギみたいに座り込んでしまったわ。戦闘モードが終了していつものリリーナちゃんに戻ったのね。


「ちょっと場所を移動してから休憩しましょっか?」


「「「さんせ〜い!」」」


 みんなの元気なお返事が森の中に響いたわ。

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