107 訓練生
すいません18時に間に合いませんでした。1時間遅れですが更新です。
ひとつめの擁壁は本当に3日掛かって生コン打設を行ったわ。
「うーん、コレは大変ね。やっぱり生コン車とポンプ車が足りないわ。」
「いやいや、根本的に人数が足りてねえよ。何とか1日で打ち終われねえかなぁ。」
「黒オヤジのおじさんがやってる新人研修がもう少しで終わるから応援がくるわ。」
さすがに物覚えのいい子だったらもう重機の運転出来るんじゃないかな。
その子達に期待しつつ次の型枠に生コン打設を行った。
擁壁に生コンを打ち続けて13日経ちました。
5つめの擁壁を打ち終わったわ。予想より2日早めたわよ、凄いでしょ?
速さを上げたと言うより手際が上がったの。まず生コン車は1台追加、ポンプは思い切って2台リース。眷属化はしてないかわりにハイドくんとフューリのセットのための中継ぎとして借りたわ。
ハイドくんとフューリはいくらミノルおじさんといえどもふたつ同時に操作できなかったの。パワーが強過ぎたみたい。
早く打設をしないとコンクリートが乾いて層が出来ちゃうからつい急いでしまい、ポンプ車のパイプが届かなくなった時のセッティングのタイミングが狂ってミノルおじさんがパイプを保持しきれてないのに生コンを送り込んでしまった。
ミノルおじさんの手から離れたパイプが宙を舞い大量の生コンを撒き散らしたわ。私慌てて足場を駆け上がってパイプを押さえました。おかげでコンクリートまみれになっちゃったわ。
まあ怪我人が出なくてよかった。凄い勢いで跳ねまくるパイプを両手でガッチリ掴んだ私を見た人がそれ以来若干私のことを怖がってるように感じるくらいかな?
ちょっとショックです。私そんなに粗暴に見えるのかな?
話は戻るけど、このような『ヒヤリハット事案』を解決するために主だった人達で話し合った結果、ハイパワーなハイドくんとフューリのセッティングに時間が掛かるから慌てることが分かったの。
だからあえて中継ぎに出力の低いポンプ車を利用、その子で繋いでる間にゆっくり眷属のポンプ車をセットすればいいってことになりました。
この方法なら実質ハイドくんかフューリのどちらかがいれば高速打設が可能なの。二手に分かれて擁壁打設ができるわ。
まあとりあえずはハイドくんとリースしたポンプ車で打設し、フューリはウィルくん達に預けてベース土間打ちの方のスピードアップに努めよう。ウィルくんはクレーンで鉄筋を吊り上げては完成したら土間打ち、ロイドくんは鉄筋の溶接固定をしながら交互に現場実習しに来てる訓練生の指導、リリーナちゃんは杭打ち作業をしながらホイールローダーで鉄筋を準備してる。
超忙しい。けど焦らなくなった分こなせてる。
結果、当初の予定より早く擁壁の生コンが打てたってわけ。
型枠や足場を設置してる作業員さんの仕事の速度や手際も上がったからなお早いわ。
「みんな、待たせたな!ようやくコイツらも重機乗りとしてやっていけるまで成長したぞ。とはいえひとりずつが1、2種類の重機しか乗れねぇけどな。」
夕方ミノルおじさんやロイドくんたちと工事現場の食堂に寄り食事をしていたの。すると黒オヤジのおじさんがたくさん人を引き連れながらやってきて自慢げにそう言ったわ。
いやいやいや、1種類ずつでも全然OKだから!すごいから!
黒オヤジのおじさんは自慢げだけど、後ろにいた訓練生の人達はずいぶん恐縮しちゃってる。
おじさん、プレッシャーになるからあんまり自慢するのは止めてあげてくださいね。
「クレーン乗りが1名、ユンボが3名、ブル3名、ホイールローダー4名の生コン車とポンプ車の操縦とセッティングが2名、計13名だ。ユンボとブルとホイールローダーが運転出来るやつはリフトとロードローラーを操る事が出来るしクレーン乗りはバスが運転出来る!」
やった!これなら私達ジューキの商会員がちょっと無理してた部分のフォローができる。
事故やケガのリスクが抑えられるわ。これは黒オヤジのおじさんが自慢したがるはずね。
やっぱ、マンパワーは大事!いくら重機がすごくても使える人がいなきゃ始まらないもの。
「会長さん、俺がんばりますから!今まで仕事に加われてなかった分がんばりますから!」
「会長さんや商会員の人はすごく忙しそうだし、他の人もがんばってるのに私達はお金にもならない練習ばかりしてたのが心苦しくて……」
集まってきた訓練生13人が口々に頭を下げる。
「何を勘違いしてるんですか?私達があなた方に訓練を要求したんです。それにあなた方は応えてくれました。お礼を言うのは私達の方ですから。ありがとうございました。」
「ああ全くだ、この数日間働き過ぎちまったぜ!明日からは楽させて貰えるってもんさ。」
ミノルおじさんもお酒の入ったカップを片手にニヤニヤと笑ってる。
「俺なんか数ヶ月間タダ飯食わせて貰ったんスから!毎日車両基地の空きスペースで重機の練習やるかまゆげさんを運転させていただいて会長の送迎したくらいっス。皆さん余裕っスよ!」
「わ、私は商会の建物やギルドの建物を見学しては図面に書き起す事ばかりやってました……すいません。」
「皆さん、明日からは共にがんばりましょう。副会長の事ですからきっと自分やリリーナ、ウィルにあなた達のフォローを指示するはずです。分からない事があったらすぐ聞いて下さいね。」
うちの商会員からもフォローが入る。
「なんだよ〜よくわかってるじゃねえか。だから心配すんなよ。」
ロイドくんの言葉に黒オヤジのおじさんがガハハと笑ってロイドくんの肩を叩いてるわ。
訓練生のみなさんはホッとした表情。
「まあ座れや、今日は黒オヤジの旦那が晩飯奢ってくれるってさ!ジャンジャン食ってくれ!おーい俺の酒のお代わりをくれよ!」
「はーいただいま!」
ミノルおじさんが席に着くよう促しながらシレッと黒オヤジのおじさんの奢りを提案してるし。ついでに自分のお酒も頼んでるし!!
「おいミノルさん!その酒代は俺持ちじゃねえからな!」
「はははいいぜ、ならそいつらの晩飯はアンタ持ちな!決まったぜ、食え食え!」
あらあ、ミノルおじさんったら意地悪だけど上手だわ。
「「「「「い、いただきます……」」」」」
「ぐっ!し、仕方ねえな……」
お、おじさん、無理しちゃダメよ!
「ロイド坊達のもだよな?」
ミノルおじさん、煽り過ぎですから!
「そ、そりゃ……まあロイドとリリーナとウィルの分も見てやるか……」
「マジッスか?ゴチっす!」
「わ、私お野菜のサラダ追加で!!」
「副会長、大丈夫ですか?」
「むむむ………お、おう。」
みんな……うちの商会員さん達はほんとに『出来る人達』ばかりだわ。訓練生の人達はすでに馴染んで楽しそうにしてるし、ロイドくん達も楽しそうだし。
「おじさん、後で私に請求書ください。お金をお返ししますから。」
「う、エリーゼさん……はぁ、ありがとう、助かります……」
こっそり黒オヤジのおじさんにそう伝えたらやっと笑顔になった。
よかったよかった。