106 擁壁打設
こんちわ!ぴ〜ろんです。
今週も始まりました、よろしくお願いします。エリーゼさん達もがんばって働いてます。みなさんもがんばってくださいね!
それではどうぞ!
「よーし、そうそう、ゆっくりでいいからな。うまいぞ!」
黒オヤジのおじさんの指示でアタッチメントのパレットフォークを取り付けたホイールローダーが箱型鉄筋を並べてる。
運転してるのはなんと若い作業員さんです。
「いやぁやっぱ先入観の少ない若者は重機を扱う事に慣れ易いんだな。こりゃあ捗るぜ。」
「そうですね、重機に興味のある人達へ声を掛けて重機の運転を試してもらったのは大正解だったわ。」
200名の作業員のうちなんと13名が重機を操作できたのよ。
元々重機って誰でも同じように操作できるものなはずなんだけど、やっぱり一般的な乗り物の代表は馬なのよね。
重機に乗って正確に操る感覚は馬の個性を読み取りそれに併せる感覚と全く違うんです。
乗馬が上手ければ上手い人ほど重機の運転が上手くいかないの。そしてほとんどの人達が移動手段として馬に乗ることから自然と重機に適応できない人が増えるってわけです。
その中で13人も重機に適応する人を見つけられたのは僥倖といえるわ。
「ウィルにクレーンを、リリーナにパイラーを任せて俺とロイドでコイツらを重機乗りとして仕込むよ。エリーゼさんは今日から生コン打ちだろ?」
「はい、ミノルおじさんがポンプ打ちます。ポンプ車のハイドくんをセッティング済みですよ。」
私がポンプ打設してもいいんだけど、ハイドくん達が眷属化してコンクリートの瞬間打設量が大幅に増えた。だから私は生コン生成に精神力を使いまくらなきゃならないの。
このことはあらかじめ分かっていたから私はこの3年間精神力を貯めに貯めてきたわ。
その量は聞いておどろけ853億ポイントよ!
この3年間毎日毎日寝る前にMAX貯蓄した結果です。おかげで私の最大精神力は1億に達してしまいました。
生コンは1立米5,000mp。1立米っていうのは縦横高さ1メートルの箱にいっぱいの量のことです。
型枠で囲まれた型枠のサイズが高さ12メートル幅2.5メートル、長さは3,000メートルなんで、壁ひとつに9万立米もの生コンを打たなきゃいけないの。
擁壁1面で精神力4億5千万ポイントの生コン……それが27個もあるんだから貯めなきゃ無理でしょ?
ちょっと貯め過ぎちゃったけどね。
ミノルおじさんはすでに足場のてっぺんにスタンバイ完了してました。
「おーい嬢ちゃん、いつでもやってくれぇ!」
ポンプ車のブームをいっぱいに伸ばして足場上から打設する予定です。
他の壁の型枠をはめたりベース配筋をしたりしてた作業員さんが集まってきたわ。
「みなさん、見学するなら近くでしませんか?実はコンクリートって型枠をトントンと叩いて隅々にまで送り込まなきゃいけないんです。コンパネの継ぎ目とかからコンクリートがはみ出てきたらトントンしてください。」
20人くらいの作業員さん達が木のハンマーを受け取って足場に上がっていきました。
「それじゃ、生コン入りまーす!」
今日の相棒はメリーちゃん。
ハイドくんの後ろに移動させてからホッパーやスクープ部、シュートにお水をかける。シュートをハイドくんのホッパーにセットしてコンクリート排出レバーを引くと、メリーちゃんのコンクリート貯蔵ドラムが逆回転して中に入ってる生コンが排出されるわ。
ドザアアアァァァァ
メリーちゃんをカスタマイズして車体サイズやドラム回転速度をアップさせてるからすごい大量の生コンがハイドくんのホッパーに注ぎ出されてる。
でもハイドくんもカスタマイズ済みなんだよね。
ホッパーから入った生コンを二本の油圧シリンダが交互に吸い取るようにして溜め、スライドシリンダで仕切りをして吸い込んだセメントをパイプのルートに送り出す。交互に動いてどんどん生コンを送り出していくのよ。
その量も力もしっかり強化してあるから生コンをグングンと圧縮しパイプに送る。
「来たきた!嬢ちゃんこのまま打ち込め!遠慮は要らねえぞ!」
「は、はい!」
ハイドくんのブームとパイプがガクガクと揺れてる。
ダダアアアアッッ……
「うおっ!?こりゃあ凄ぇ!」
ミノルおじさんの持つパイプから勢いよく飛び出す生コン。暴れるパイプを抑え込んでる。
これは……うちの商会員じゃないと扱えないわ。黒オヤジのおじさんがギリってところね。
いちおうロイドくんとリリーナちゃんはステータス値が高いからだいじょうぶだけど、ウィルくんはまだ体力ステータスが25くらいしかないの。
それでもその辺りの大人より強いんだけどね。で、元々黒オヤジさんは冒険者や兵士ってわけではないので身体は鍛えてない。たまに重機に乗るから少しは底上げされてると思うけど、鍛えてる3人ほどじゃないと思うわ。
「ミノルおじさん、隣にフューリをスタンバイします。ハイドくんのパイプが届かなくなったら教えて下さい!」
「了解だ!みんな、型枠を軽く叩け!穴開けんじゃねえぞ!」
ミノルおじさんの掛け声で、バラバラと壁を叩き始めた作業員さん達。
しっかり中身が詰まってくると、バンバンした音がマシマシと重たい音に変わってくるの。それ以上叩くと砂と砕石と水分が分離してしまうから叩いちゃ駄目。
塩梅はみなさんに伝えてあるからいい感じなところで移動を始めてます。
「嬢ちゃん、もうパイプがたわない。次のセットを頼む!」
「は、はい!」
ミノルおじさんからフューリのセットを頼まれました。『たわない』の意味はよく分からないけどもうブームの可動範囲限界なんでしょうね。
私はフューリを走らせて足場近くに駐車、アウトリガーを張り出してブームを伸ばす。
お水を入れてパイプ内に循環させ、よそに排出してからブームを上げて準備完了です。
「ミノルおじさん、切り替えますよー!」
ブレンダちゃんをセットしたいところだけど、向こうでリリーナちゃん達がベース土間打ちをやるから使うはず。
メリーちゃんの生コン排出を止めてシュートを持ち上げ、急いでメリーちゃんを移動させる。
作業員さん達が自発的に人払いをしたり誘導をしてくれてるわ。
うん!朝の危険予知ミーティングと事前研修のたまものね!
メリーちゃんのシュートをフューリのドロッパーにセットして生コンを排出したわ。
「ミノルおじさん!出します!」
「おう!!」
生コンが勢いよく吸い上げられて無事に型枠の中に排出されていく。
「ふーっ、切り替え完了です。うーんもう1台ずつ生コン車とポンプ車増やそうかしら……送還したままじゃかわいそうだから車両基地の範囲を拡げないとダメね。」
私はため息を吐きながら指輪の収納にハイドくんを収納し、次のポイントに移動させることにしました。