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断食ダイエット  作者: 前歯隼三
5/6

疲れた心身に歌は響く

 ショクダンジキショクダンジキショク…


(うぅぅぅ)


 ショク・ダンジキショク ショク・ダンジキショク


(あぁあああ)


 ポタリ

 ポタリ

 ポタリ


 全身が燃えるように熱い、外界から一切のエネルギーが断たれ…命は燃料を探し、ついに自らの肉体を火にくべたのだ。

 全身の脂肪が、蓄えられた油に火が灯る。

 絶食前半ではエネルギー節約の為、停滞していた体温が一気に高まり…そして自身が熱くなればなるほど、洞窟内の空気の冷ややかさが増し…襲い来る強烈な寒気。


(ぁぁぁぁぁ)


 ポタリ


 ショクダンジキショクダンジキショク…

 ショク・ダンジキショク ショク・ダンジキショク

 食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食


 ポタリ


 全身が燃える感覚と、氷山に裸で踏み入ったような寒気、全身が内部から溶かされる激痛、腹の中の獣の唸り、脳は慢性的なストレスから逃れるべく現実を閉ざし夢想への回路を開く。そんな中でも変わらぬ鼓動と呼吸音で自身の命をギリギリ感じ、ポタリポタリと額に滴る水滴が世界の存在をターベルに伝える。

 日は登り、そして沈み…太陽と月の踊り、大地のダンス…意識がある時に描いた妄想が閉ざされた瞼の裏に広がる…そして!!


  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食

  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食

 

 太陽の元歩き続けた 日が沈んだなら歩みを止めよう

 全てを投げ出して眠る夜が 明日を歩む力になるのだ


  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食

  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食


 一日三食もしくは五食 食べる幸せ箸を止めよう

 暇になった唇で 頂いた命に感謝を述べよう


  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食

  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食


 ぽたり


「ああああああああああああああああああああああああああああ」


 断食ダイエットの後半戦、ターベルがついに横たわり…空を見上げるだけの置物となってから、延々に流れてくる雑音が…揺らめく夢想の中に映像を映す。

 果てしない荒野を歩き続ける青年が、歩みを止めて大地に寝そべり…満天の夜空に感謝を述べる。

 たったそれだけの映像だが、ターベルは青年が…自分と同じ姿勢で寝ている事に気が付いた。


 ポタリ


  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食

  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食


 命を喰らう人の業 命を求める人の性 人の歩は罪深く 何故神は人を作られたのか?

 歩み続ける人の生 答えを探す人の心 魂は道を探している ならば今一度立ち止まれ


  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食

  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食


 立ち止まって白地図を広げて、見渡せば美しい景色

 行きたい場所がどこか見つかれば 歌いながら歩きだせる


  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食

  食=断食・食 食=断食・食 食=断食・食


 ポタリ


 ポタリ


 ポタリ


 ポタリ

 ポタリ

 ポタリポタリ

 ポタリポタリポタリナポリポタリ


……

…………


 横たわるターベルの頭の下には、いつしか水たまりが出来ていた。

 それは天井から滴った水か、彼女の瞳からこぼれた涙か。唇から止めどなく溢れるヨダレかは…答えを知るのは神様だけだ。


 そんなこんなの経験を経て、彼女の断食1週間は終わった。

正直このシーンを書くために書き始めた小説なのです。酷い話だ。

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