第5話 記憶と結果とその先と
ーーある夢を見た。
「囲まれた!?どうする、リーダー!?」
これは・・・。
「ーーー!後ろ!」
「がっ!?」
対処を問うた人が殺された。これは。これはーー!
「ーーー!?くそがぁぁっ!!」
「待て!早まるな、ーーー!」
名前は思い出せない。場所も、相手の顔や所属も。だが、これだけは。これが何であるかだけは覚えている。これはーー
「がっ、はっーー!?」
「ーーー!?」
かつての仲間が殺された記憶だ。
「ああっ、いやっ・・・。いやっ・・・!寄らないで!」
「ーーー!今、助けに行く!」
「きゃあああっ!?」
「・・・・・・あ、あ・・・。うあああああああっ!?」
前世において、俺が単独活動する前にいた仲間だった。俺らはある日、突然賊が襲ってきて、そして、彼らは殺された。俺は、怒りと悲しみのままに力を振るい、奴らを全員殺した。その日からだった。俺が一人で動くようになったのは。二度とあんな苦しみを、悲しみを感じないようにと仲間を集わなくなったのは。
だが、なぜ今なんだ。俺はただ試験をしていただけのはずだ。仲間などというものは一切かかわりがない。なのに、何故・・・。ああ、だめだ。意識が・・・。
ーーーーーギルド内医務室
「・・・さん。・・・ドさん!ジードさん!?」
「・・・う、ん?」
誰かが俺を呼んでいる気がして、目を開ける。
「あ、ジードさん・・・。よかったぁ~」
「・・・受付嬢?」
そこには受付嬢ともう一人がいた。
「よう。目ぇ覚ましたか」
「ギルマスまで・・・」
「お前が目を覚ましそうだと連絡を受けたんでな。あ、ある人も来てるぜ」
「・・・?」
ここには俺を含めて3人しかいないが誰だろうか?
「いいぜ。入ってくれ」
がらがら・・・。と扉を開けて入ってきたのは・・・
「母さん・・・」
「ジーク・・・。心配したのよ・・・」
「・・・。ごめん」
「いいわ、あなたが無事なら」
「ありがとう、母さん」
俺と母さんは肩を抱き合って安堵した。
「それで、俺はどれだけ寝てたんですか?」
あれからどれだけ経っているのか気になって、ギルマスに尋ねる。
「だいたい半日ってとこだな」
「半日・・・。それだけなのか」
正直、数日ぐらいは覚悟していた。ただ、多大な身体的負荷だけで済んだおかげでそこまで長くはならなかったのだろう。
「あ、そうだ。試験の結果」
肝心なことを忘れていた。
「俺の試験の結果はどうなったんですか?」
「ああ、合格だぞ。しかもBランクまで飛び級な」
「・・・はっ?」
おいおい、飛び級制度は聞いてねえぞ。
「試験官が飛び級に値すると判断すると、飛び級で昇格するんだよ。つっても、Bランクまで一気にいたやつは今までで初めてかもしんねえな」
「まじか・・・」
衝撃がでかすぎる。あれだけしかできてないのに、Bランクまで行っちまうとは・・・。
「あれだけで、って顔してんな」
「!」
「言っとくが、あれだけで、じゃねえぞ。あんなに、だ。冒険者始めたてであそこまでできる奴はいねえんだよ。正直Aランクにもしていいと思ったが、周囲への影響、昇格条件の変更等のいろんな理由でB級にさせてもらった。文句は受け付けん」
「文句なんてあるわけねえよ。むしろ嬉しいぐらいだ」
「そうかい。っと、そいやぁお前、仲間って作る気ねえか?」
「仲間・・・」
あのときの記憶の夢は、このときのために見せてくれたのかもしれない。