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私と5階のおじさま  作者: どんぐり山
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色々と思い当たるところがあるので全般的に改訂しておりますが、ノベルの筋書きは変更しておりません。

予めご了承下さい。




「美穂、本当にうな重食べたいの? 夕飯にはちょっと重すぎない?」と眉間にしわを寄せながら言う美香。


「だって、もうお腹すいたし。それに夏には、夏限定のうな重を出前でとれるじゃない?ほらこの鰻のお店、すごいのよ!おひとり分に鰻を2尾ですって!」


美香の頬がひきつる「私、無理。一番小さいのをお願いできるかしら?」


「いいけど、1尾で足りるの?」美穂がインターネットを通して注文しながら美香に確認する。


「うん、多すぎるぐらい...」


「了解、はい、注文完了。45分ぐらいかかるみたいね。」


美穂の肩越しにスクリーンを覗くと、うな重が3箱も注文されていた。


「あ、ちょっと美穂、3箱って間違えたわよ」


「間違えてないわよ、私の夜食もとったから」と、涼しい顔をしている美穂。


「き、聞かなきゃよかったわ…」


「フフフ、別にいいでしょ?私のささやかな楽しみなのよ」


「まあ、そうだけど、栄養どこに行ってるのかしら?」


「知らないわよ。でもたくさん食べれるから幸せよ」と美穂はご円満。


「はあ、そうねー、美穂はいつもそうだったよね。美香のご両親も私にいつも言ってたわ。あの分量の食事がどこに消えるのか、不思議だって」


「そういえば、そろそろ実家に顔出さないと…」と言い、ため息をつく美穂。


「私もかなー?もうだいぶ帰ってないなー」と美香も言い出す。


「喉乾いたから、麦茶もってくる。ちょっとリビングルームでくつろいでいてね」


「うん、わかったー」


コップ二つに、麦茶入りのデカンター。それにクッキー山盛りの皿を持ってきた美穂。美香の前にはまだ食べかけの羊羹が。

「うん、わかってた…」と小声で言いながら「ありがとー」と美穂に一言。


「美香。このオートミールクッキー試してみて。すっっっごい美味しいのよ!」


「うん、意外となんかラムの香りが強いけど、でも確かに美味しいわ」


「よかった、美香がおいしいって言ってくれて」と喜ぶ美穂。


「でもさ、実家に帰った途端に私の両親も美穂のご両親も『結婚しろ!!』とか言わないから、救いだよねー」


「そうね、もう諦めたようね」


「大学生の時は楽しかったよねー、まあ今も悪くはないけど」


「フフ、そうね、美香が大学二年生の時に...」




暫くの間、色々と学生時代の思い出話で盛り上がったところ、ドアフォンのチャイムが鳴った。


「うな重のデリバリーサービスね、きっと。美香ちょっと待ってて」


ドアフォンでチェックし、408号までお願いしますと伝えるとすぐに部屋のドアをノックをする音が聞こえた。


え?早すぎない?と思いながらドアを開けると、5階の神海さんがドアの向こうにいた。


なんでこのタイミング!?と思いつつ、美穂は笑顔で「あ、こんばんは」と挨拶。


「ついさっきは、失礼いたしました。改めてご挨拶に伺いました。神海直樹と申します。よろしくお願いいたします。これは心ばかりの品ではございますが、宜しければお受け取り下さい」と手土産を美穂に渡す。


「まあ、ご丁寧にありがとうございます。本当にそんなにお気を使われなくても...」


「あ、いえ、そんなに大したものでもないので...」


そこに美香が玄関を除くように廊下に顔を出した。


「あー!神海さんこんばんは!」テトテトと玄関に来る美香。


「有山さん、こんばんは」とにっこり微笑む彼。


『ちょっと、なんでそんなに嬉しいの?そして悲しい?』と思ってるうちに今度は…


「毎度ありー!こちらうな重3箱、坂無様のお宅で間違いありませんね」


と玄関に押し寄せてくる鰻屋のデリバリーサービス。


玄関先はちょっとした過密状態に陥る。


すると美香が、「神海さん、ちょっと部屋に上がって?玄関が混雑しちゃってて」


と、さりげなく部屋に招く。


「あ、いや、私はもうお暇しようかと...」


「神海さん、せっかくですので部屋に上がって頂けませんか?」と美穂が返す。


「お邪魔では?誰かお客様がいらっしゃるのでは?」


「え?いえ、いませんよ?」


「そ、そうですか、ではちょっとお邪魔します」


鰻屋の店員がうな重を美香に渡し玄関から出ようと思ったところで、ビクッと後退りする。


「神海様、部屋に戻られないのですか?」と、また二人の護衛たちが玄関前に突然現れ壁のように出口を妨げた。


『うん、これもう完全にカオスね』と美穂が思う。


「ちょっとお邪魔するんで、外で待っててくれないかね?」と彼が伝える


「畏まりました。この部屋には、坂無様と有山様の二人きりと確認済みなので、私たちはここで待機しています」と二人は外に出て、ドアの両側に立った


「ど、どうも...」と言い残し、店員が急いで去っていく。


『あれは流石に私もびびるわー、でもどうしてここには私たち二人しかいないと確認できたのかしら??』と思いながらも、ドアを閉める。


丁度そこにまた美香が玄関に戻ってきた。


「神海さん、上がって上がって!」


「では、お邪魔します」


「へへ、美穂が私以外の方を部屋に招くなんて、めったにないのでちょっと楽しいかな?でも。どうして私たち以外に誰かいると思ったの?」と、上目ずかいで彼に言うと、「ああ、うな重が3個注文されていたので、有山さんたちのほかにだれかいらっしゃるのかと思っていたわけで」と答える。


「あー!あれはね、美穂が、また...」


「あああ!!間違えちゃったんです。二つのはずだったんですけど!」と美穂がとっさに割り込む。


「え?美穂何言ってるのー?だってあれは後で...」


「そうそう、キャンセルしようと思ってたけどもう手遅れで」美穂は、なぜか神海さんに真実を知られたくなかった。


目をまん丸くして美穂を見る美香。


すかさず美穂は彼に「あの、神海さんは夕飯まだでしょうか?うな重ひと箱、余分にとってしまったので困ってて...」


これには、さすがの美香も吹きそうになった。悟られないように笑いを堪えているのが分かる。彼に向かい、「そ、そうねー。神海さんもよければ一緒にいただきましょー、無駄にするのも、もったいないし」と美香も誘う。


「そうですか?それでは、ご馳走になります」と言いながら、皆はリビングルームのほうへと向かった。




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