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私と5階のおじさま  作者: どんぐり山
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3

「美香-、どうしたのぼんやりして?」

美穂に声をかけられ、中学時代の思い出から帰ってきた。

「ううん、ちょっと中学時代のこと思い出していてね」と言い、卵焼きを口に入れる。

「あー、この流れだと中3の時のあの会話ね」

「そうそう。」

「あの時から美香は私の支えになってくれて、本当に感謝してるわ」

「うん、でも私も助かったんだよ、高校に入ってから美穂が私に告ってくる男子たち全員チェックしてくれたんだからね。」

「イヤー全員失格だったけど…一人除いては」

「星野君ね。うん、でもタイプじゃなかったし、というか全然男子にそんな興味なっかたし。まあ断って正解だったわ」

と話してるうちに朝食を終えて、美穂が食器を下げ始める。

「美香、珈琲でいい?」と聞くと「お願い」と返事が返ってくる。

ケトルでお湯を沸かし始めながら、豆をグラインドしていると、美香が「あ、今朝ね、誰かこのマンションに引っ越してきたみたい。運搬車が4台も駐車してた。」

「へー、そうなんだ」と、相槌を打ちながらミルで挽いた豆をフィルターに入れ、ケトルから湯を注ぎ珈琲を2杯入れ、食卓に戻りコップを美香に渡す。「なんかすごい荷物の分量ね、トラック4台なんて…」

「うんうん、それでその人、5階のペントハウス購入したみたい。荷物がみんなペントハウスエレベーターの前に積み立てられてたから」

このマンションの5階には、一戸しかない。エレベーターも別にペントハウス専用のエレベーターがある。「え、でもあのペントハウスって、私がここを買うときに確か4.5億円ちょっとだったわよ、どんな方が買われたんだろう?」

「ううん、私がここに来るときは運搬社員しかいなかったし。まあ、近々ご挨拶に来るんじゃない?」

「そんなに荷物があると、やっぱりご家族かなー?あのペントハウス結構大きかったから。確か180m2の4LDKだったかしら?」

「うわ、そんなに専用面積あったの?」美香がびっくりしながらコーヒーカップをかたずけ始める。

食器をかたずけ終え、美香が甘えるように寄り添い「ねえ美穂ー、買い物付き合ってくれる?ちょっと欲しい物があって」と聞いてる

「うん、いいわよ私も丁度買い物に行きたかったんだ。夏用のブラウスとか、ワンピースとか。どこがいいかな?」

「銀座かか日本橋辺りは?電車ですぐだし。三越なんかどう?」

「うん、いいかも。それにそこの近くの餡蜜屋さんの餡蜜食べたかったんだー。ちょっと待ってね、すぐ着替えてくるから」

10分ほどで美穂が寝室から戻ってくる。白いボートネックプルオーバーにデニムジーンズ、上着に薄いロングガウンを着て、化粧も薄めに。美香がじーっと睨んでいるので、どうしてと聞くと、

「うん、相変わらず大きいねー」と言われる。

「え、何言ってるの?美香もじゅうぶんあるし、可愛いじゃないのよ?」と言い返す。

「もう、変なこと考えてないで、そろそろ行くわよ」と美穂に言われ、ふたりは部屋を後にした。

確かに美香は可愛い。緩い天然ウェーブの黒い髪を肩まで伸ばし、目がくりくりした、純粋無垢なかわいらしさ。背も若干美穂より低く、見かけもまだ大学生と言っても通り、正に美穂の実の妹と言われてもおかしくない美女だった。学校時代に美穂と一緒に行動していると例外なく男子生徒の注目の的。ただ、美穂と同行しているとやはり男子たちの目は美穂に行きがちなのだった。

しかし正直に言うと、美香はその状況が心地よかった。ほかの女子生徒のコイバナなどあまり興味はなく、寧ろ理数系の授業のほうがよっぽど興味深かった。それに美穂が男子を一刀両断しまくったおかげで美香によって来る男子生徒は、余りいなかった。皆、美香からも同じ扱いを受けると思ったのだろう。その憶測もあながち間違っていなかった。美穂に倣って数少ないが学生時代には男子たちを容赦なく振っていた。

今では就職先も違い、美香は男性という生き物に嫌気がさし始めてきた。美穂が隣にいない今では、男性社員たちから引っ切り無しに声をかけられ、断るのに苦労している。

美香は薬品会社の研究開発グループでマネージャーとして活躍しているが、薬品会社だけあって男性社員の絶対数が高く女性社員は昼食だなんだと誘われることが多い。いくら断っても、しつこい輩はどこでもいる。

美香は、これも仕方ないことか…とため息をつき諦ていた。

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