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私と5階のおじさま  作者: どんぐり山
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月曜日の朝。


相変わらず美香が朝ご飯を用意してくれ、美穂と一緒に食べる。


「美香、あと30分でマンション前で待ち合わせだからね」美穂がコーヒーを飲みながら美香に知らせる。


「そうだったわね、なんか楽しみ!」と、ワクワクしている美香。


今日から通勤は直樹さんの提案通りに送り迎えをしてもらうことになる。ドライバーは直樹さんの護衛さんたちだ。美香を一人で通勤させるのはまだ容疑者も捕まっていないので危険だという点を重視したところ、これが最も安全な方法と直樹さんが進めたのだ。


『本当に、こんなお世話になっていいのかしら?』と思いつつ、美穂も直樹さんの提案に甘えてしまった。


通勤時間的には大して差はないが、楽になるとこは間違いないと思う美穂。電車の混雑も心配しなくていい。それに痴漢、そのほかの事件に巻き込まれる可能性がなくなる。直樹さんも美香だけが送り迎えされるのは気が引けるので美穂さんもと言われ、始めは断ったが最後には彼に頼まれ、承諾した。


マンションのロビーまで下りて、直樹さんと出会う。そこには、2台の車が駐車していた。


「おはようございます、美穂さん、美香さん」手を振りながら挨拶する直樹さん。


「「おはようございます」」と二人そろって挨拶をして、まじまじと車を視る。『うん、これって、普通の乗用車ではないよね』見ただけで、高級車とわかる。美香は車には疎いが、美穂は少しの知識がある。


「あの。直樹さん、これって、ベントリーとマイバッハじゃないですか?」


「そうですよ、よくお分かりですね」


こんな車で会社に乗り付けたらまた会社で大変なことに、と思い頭が痛くなってくる美穂。打って変わって、美香は「わー、乗り心地好さそうね!」とはしゃぎだす。


美香が「私はこっちねー」と言いながら、ベントリーに乗る。「それでは美穂さんはこちらですね」と言いながらマイバッハの後ろドアを開けてくれる彼。


「恐れ入ります」と言いながら後ろの席に乗る。


直樹さんに「行ってらっしゃい」と言われ、会社に向かう。


ドライバーの護衛さんに、「後ろにあるものはご自由に使ってください」と言われたので、いろいろとチェックすると、後ろのセンターコンセルには折り畳み式テーブル、そのすぐ前には水とジュースのボトルが入った小さい冷蔵庫が付いていた。そして、何より座り心地がよすぎる。護衛さんがクラシック音楽を車中に流している。『いけない、こんな風に毎日通勤してたら、もう電車通勤とかには戻れない!』と思いながらも、この通勤を満喫している美穂。ミネラルウォーターを飲み、都会の景色が窓越しに流れていくのを見ながら寛いでいた。


会社に5分ほど早く着いた美穂。護衛さんが車を降り、ドアを開けてくれる。


「ありがとうございます」


「いえ、お帰りの際には、神海様のほうに電話を入れてくだされば5分以内でここに迎えに来ますので」


「恐れ入ります、それでは失礼します」と護衛さんに挨拶をして、会社のロビーへ向かう途中、


「ほー。これはまた贅沢な出勤ですな」と後ろから声をかけられる。


ふりむくと、藤本副頭取がそこにいた。『なんでこのタイミングなのよー』と頭を抱えたくなる彼女。


「おはようございます、副頭取」と笑顔で返すが、それでは終わらない。


「今日はちょっと昼食に付き合ってくれないかね?いろいろと聞きたいこともあるのでな」と捕まってしまう。


「はい、それでは、後程ご連絡をいただければ」


「そうだな、後で秘書から連絡をつけるから」


「はい、承知しました」


副頭取が去っていくと、「ダイレクター、副頭取とのランチのお約束ですか?」今度は彩衣と沙織が美穂の後ろにいた。


『本当になんでこのタイミングなのよー』と思いながらも、「ええ、今日何か話しがあるとか」と適当に答えておく。


「それに私たちも見ちゃったんですよねー、ダイレクターがすごい車から出てくるところ」と沙織が言うと「そうよねー、お話聞きたいなー。もしかして、あ の ひ と か な???」と足し加える彩衣。


『あー!!!どう答えたらいいのこれは???』必死になって考える美穂だが、もうこうなっては真実をはくのが一番無難と判断する。


「えっと、そうよ。彼が電車の通勤は不便だから、これからしばらく送り迎えをしてくれるって」


「ダイレクター、それではまたランチタイムどこか予約取っておきますね」にっこりと微笑む沙織。


「...まったく、貴女たちは。はいはい、どこかに予約を取っておいてね」ため息をつく美穂。


「やった!ダイレクター太っ腹!」彩衣が、またどこか美味しいレストランを見つけたのだろう。


『相変わらずね、この娘たちは』と思いながらも、この二人には何を話してもプライベートの会話はきちんと守ってくれる二人だと知っている。


「はいはい、無駄話してる前に仕事よ!」と三人そろってエレベーターに乗り込んだ。




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