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私と5階のおじさま  作者: どんぐり山
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1-始まり

「はあ、また今日も終電だったわ…」と、ため息をつきながら早足で薄暗い道路を黙々と歩く女性。彼女の名は坂無美穂さかなしみほ、大手証券会社の社員だ。10年間寝る時間も惜しんで懸命に働き、今はデイレクターまでのし上がったやり手。今日も朝から会議、部下の指導、クライエントとの投資調達、海外の株市場のチェックなど、駆け回っているとあっという間に深夜0時。終電にぎりぎりで滑り込み、今に至る。

「まったく毎日毎日3時間も会議に使うとかありえない。時間の無駄もいいところだわ!」ぶつぶつと小声でつぶやきながら、7分ほどしてマンションの前門にたどり着く。5階建ての築浅マンションだ。

彼女は3年前までは2駅前のアパートに住んでいたが近所で物騒な事件が相次ぎ、引っ越そうと決意。どうせ引っ越すなら治安のいい地域に物件も買ってしまえということで、このマンション4階の角部屋を購入した。

エレベーターを降り廊下の終わりにあるドアまで移動、カギをポケットから取り出し開ける。誰もいない部屋、美穂はいつも自分の部屋に帰ってくると「ただいまー」と、声に出して言う。言わないと寂しすぎるから。

部屋の電気をつけ、カバンを近くのテーブルに置く。「あー、やっと帰ってこれたー」と言い、ソファに身を投げる。夕飯もろくにたべずに今まで働いていたため空腹だが、何かを作る気力もなくただソファに座り込む。「もういいや、疲れたしもう寝よう」と思い、戸締りを確認してから寝室に直行。幸い明日は日曜日なので休日だ。そう、彼女は土曜も出社している。海外での株市場の取引も行っている美穂は、土曜日も基本的に会社で同僚と仕事だ。美穂はブラウスとスカートを脱ぎ捨てベッドにもぐりこみ、数分で眠りに落ちた。


翌朝、美穂はカーテンを通して振りかざってくる日差しで目を覚ました。「うー、寝起き最悪」とおもいながらシャワーを取り、その後に一回り大きいT-シャツと緩めのジーンズに着替える。

キッチンまでぼそぼそと歩いて水道の水を飲みながら冷蔵庫をチェック。「お、ラッキー、食べかけのカレー残ってた」と喜び、レンジでチンし食べようとしたとき、ドアフォンが鳴る。

誰よ、こんな朝早くから、と思い時計を見るとすでに10時をまわっていた。げ、寝すぎた、と思いつつドアフォンのスクリーンを見ると、幼馴染の有山美香ありやまみかがスクリーン越しに、にっこりと微笑んでいた。

「ちょっと待ってー」と言い放ち玄関へ、ドアを開けると美香が何やら袋をもちながら「美穂、まだ起きたてだー」とけたけたと笑う。

「おはよー美香、うん、昨夜も遅かったから。入って入って」と招く。美香は「お邪魔しまーす」といい、テトテトと部屋に入ってくる。うん、相変わらずかわいいなー美香は、と思いながら、「どうしたの?日曜日に」と聞く。

「美穂、まだ朝ご飯食べてないでしょう?きっと昨日もほとんど食事取ってないと思ってご飯作ってきてあげたよ!まだ温かいから一緒に食べようよ」と笑いながら言い、袋からラップに包まれた皿をとりだし食卓に並べ始める。「うわーサンキュー、美香ちゃん大好き!」と後ろから抱きつくと、「はいはい、茶わんとか、お箸とかもってきてね?」と言われたのでキッチンへ、茶わんと箸を二人分得って食卓に戻り、美香がラップを皿からはがす。あらわれたのは、ほうれん草のおひたし、ふわふわの卵焼き、鶏の照り焼き、それにホカホカのごはん。

「美味しそう!」と思わず叫んでしまった美穂に対し美香は、「いっぱい食べて、美穂のためにつくってきたんだからね!」と嬉しそう。しばらくの間、美穂は食べることに集中。食べてる合間に美香を見ると、もぐもぐと食べながら美穂を見守っている。

アー可愛いなー美香ちゃんが男だったらなー、類なことを美穂はいつものことながら、考えていた。それを察したのか、「美穂、何か変なこと考えてた?」と言われ、「うん!美香ちゃん私と結婚して!」と冗談を言う。それを聞いた美香は、「いつものことだけど、私は女性にそういう興味ないからねー」と笑いながら返す。「でもねー美穂みたいに美人でスタイルが良くて、その上に知性的な女性に何で彼氏がいないのかな?」と聞く。

少し間をおいて、「まあ、美穂は余りにも男性に対しての直感が鋭すぎるからねー」と足し加える。

そう。これが美穂の大問題なのだ。彼女の男性に関する感は恐ろしいほどに当たる。



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