峰集落
「総理、総合福祉施設の件ですが、設置場所として都内の西多摩郡奥多摩町棚澤の廃村、以前の峰集落は如何でしょうか?」
深志は今井に峰集落について、峰集落に設置した際の見取り図など資料を渡す。
今井は資料に目を通して、呟いた。
「峰集落に目をつけたか」
「現在、人がいる場所ですと、総合施設を建てれる程の場所の確保が難しいと思われます。住民の反対が少なからず、多い。だったら住民の居ない廃村に建てる事で、反対意見が抑えられ、且つ、新規開拓と似た意味になりますから、整備の為の人材確保が必要となるでしょう。人材確保がされるということは雇用が生まれ、就労支援にも繋がるでしょう。また峰集落を候補にした理由として、都内での交通アクセスに優れている点です。アクセスに優れているので、各所や我々とスムーズに連携が取れやすいと思われます。」
「なるほど……。では、君の提案に乗るとしよう。それらをもう少し凝って、提案書を用意して欲しい。次の予算審議で提案しよう」
「総理、ありがとうございます」
「頑張ってよ、公康の息子」
今井は深志の肩を軽く叩いて、部屋を後にする。
「公康、君の息子はとんでもない子だね」
「今井さん、息子を買って頂いてありがとうございます。どうか彼奴の事を宜しくお願い致します」
「どうだね、衆議院選は終わってしまったが……次の参議院選で復帰しないか?あわよくば、いづれ、衆議院議員に戻り、再び総理として国を」
今井の言葉を遮るように公康は言葉を挟む。
「今井さん、それは出来ません。私が復帰したら例の方が必ず動きます。動けば、私も今井総理、そして我が息子の身が危ない」
「ふむ……そうだね、君は本意で降りた訳ではないのに申し訳ない。彼奴に関しては私は監視し続けるよ」
「すみません、宜しくお願い致します。」
「ああ、じゃあ、またな。今度一緒に飯でも食べよう」
「はい、是非に」
今井は通話を切ると、ジャケットの内ポケットにスマートフォンを入れた。