せかんど
「主上……お待ちしておりました」
「礼はいい。今日は竹の妃の件、苦労をかけた」
「そんな、ご心配には及びません。竹の妃様はとてもお美しい方でいらっしゃるのですね。私、見とれてしまいました」
「……」
主上は何も言わない。何をしにきたのよ?
「主上、今夜は竹の妃様との初夜でございましょう? 行かれなくて良いのですか?」
「……うむ」
あぁ、もう焦れったいなあ。早く行けばいいのに。心配しなくても、朝になれば出ていくからさ。
…………何も言わない主上。もしかして、このことを言いにきたのかな?追い出すことになるし、言いにくいのかも。しょーがないなぁ、切り出してあげますよ!
「主上、もし私の出立のことならご心配なさらず。明日の早朝、後宮から出ていきますので。ほら、準備もできておりますでしょう?」
ニコニコ。微笑んだ私とは裏腹に主上は固まってしまわれた。困惑していると、後ろから右近が笑いを噛み殺しているのか、くくっという声が聞こえた。
「右近?なぜ笑うのです? 主上も、大丈夫でございますか? 流石に今日は出立できませんでしたので、申し訳ありませんが、明日まで我慢なさってくださいませ」
くくっ、また右近が笑う。何事なの?
しばらくポカーンとしてはっとしたようにようやく主上が話された。
「まて、松。出立とは何ごとだ。私は許さないぞ!!」
…………え?