ふぁーすと
初投稿です。変なところも多々ありますが、応援していただけるとうれしいです。
「ご結婚おめでとうございます、主上。」
長年ずっと顔に張り付けてきた笑顔で、私はお祝いの言葉を夫である帝に言った。
私は松の妃。本名はあることにはあるけど、呪詛とかに使われるとめんどくさいから、普通名乗らない。
ちなみに松とは妃のランクのこと。この国は一夫多妻制で、金持ちの男には奥さんがたくさんいる。(平民は主に一夫一妻)帝の持つ後宮では偉い順に松竹梅とランク付けられている。
……つまり、何が言いたいのかというと、私はこの国で一番偉い女性なのです。
「これで後宮も賑やかになりますことでしょう。主上、私は嬉しゅうございます。」
「……そうか。」
む、せっかく私が気遣って会話をしようとしたのに、表情ひとつ変えずにそれだけか。
「竹の妃様、これからどうぞ仲良くしてくださいませ。」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします、松の妃様。」
まさに国一番の美人ってかんじ!そりゃ、左大臣の娘だもの、しっかりしてそうです。
うんうん、平和だなー、おめでたいなー、なんてぼけっとしてたら、帝が
「えー……松。後で話があるから部屋で待っているように。」
?なによ、もうお役ごめんじゃないの?
「かしこまりました。」
少しも疑問を顔に出さない私、どうよ。誉めて(( えと、お役っていうのは、
「姫様、そろそろお邪魔になってしまうかと。お部屋にいかれませんか?」
「……そうね。では上様、竹の妃様、そろそろ失礼させていただきます。」
どいつもこいつも、私の思考を邪魔して! 礼をして、しずしずと退室する。自室まではわりと遠く、重い十二単で歩くとかなりつかれる。乳兄弟である侍女、右近がなにやら文句を言ってくる。
「姫様、帝の呼びかけへのお返事が遅く、失礼になってましたよ、ダメじゃないですか!」
「いいのよ、それも駆け引きなんだから!(大嘘)それより、その砕けた話し方なんとかならないの?!」
「申し訳ありません、無理です。」
「……他のとこなら即クビよ…………」
妃が二人しかいない後宮はガランとしていて、さみしい。だから誰も聞いていないと油断して常に私達の会話は砕けている。
「でも右近。今日でここともお別れと思うと変な感じね。」
「それもそのはず、なんと姫様は後宮に5才から13年もいらっしゃのですものね。」
「本当。長かったわ……お妃教育なんてもう2度と受けたくないものね。」
「ですが何気に姫様も帝と楽しそうにされてたじゃないですか。」
「……そうかしら///」
部屋につき、日も沈んで、そろそろ寝る準備を……と思っていると、帝のお渡りを告げる使者がやってきた。
「あら、忘れてたわ。右近」
「おまかせください、姫様。私は忘れていませんでしたよ。」
確かに、右近の示す方を見ると、お渡りの準備がされていた。
「流石ね……」
他の侍女達が下がり、右近と二人っきりになった部屋に聞き慣れた声が響いた。
「あー……邪魔するぞ?松」