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緊縛ダークエルフ  作者: クルクルパー
第四章 僕らの緊縛(アンアンチェイン)
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4-8

●4-8


 会長の連れてきた人の群れへ、水の「手」が襲い掛かってくる!


「助けてくれー!」


「うわー!」


 狭い竹林の中の道に、神輿と数十人の若い衆がいるのだ。その後ろには二百人を遥かに越す男女がいるのだ。ぶつかり合ってばかりで逃げる事も出来ない。


「会長! 助けて!」


 悲鳴、絶叫。阿鼻叫喚だった。


「ヤミノ! 逃げなきゃ! 何をしているんだ!」


 だがヤミノは、川の方を向いて突っ立ったままだ。


「逃げるって、どこに」


 僕を見ずに、そう言った。


「どこって、とにかくここにいたら一たまりもないよ!」


「どこに逃げたって同じなんだよ、アタシには……」


 ヤミノは川へ向かって両手を広げた。彼女の視線の先には、水漬女(みづめ)様がいる。


「アタシも連れてってちょうだい」


「何を言うんだヤミノ!?」


 お前は知っているじゃないか! 川に入ったら、体が朽ちるまで水漬女(みづめ)様の虜にされてしまうんだ!


「ただしアタシとこいつの繋がりを切って。こいつはこんな甘っちょろい顔をしているけど、家来にするには頑固過ぎるよ」


 僕との、「繋がり」……?


 水漬女(みづめ)様は頬に手をやり、少し考えてから、


「ふーん、オッケー」


 気軽な声でそう言った。


 ザバッと川から水の「手」が突き出され、僕らの方へ人差し指を伸ばした。


「神力ウォーター・ハイメガ・ビーム!」


 巨大な人差し指の先から、強烈なビームのようなものが放たれた。前に浴びせかけられた水鉄砲のような神力ウォーター・ビームとは、迫力がまるで違う!


「わ! 危ない!」


 だがそれが命中したのは、僕らの肉体ではない。僕とヤミノを繋ぐ、普段は見えない聖縛縄(ホーリー・ボンデージ)の縄が、神力ウォーター・ハイメガ・ビームとの干渉波でバチバチと光った。


 そして。ブツリ、と。


 魔力で作られた縄が、神力の刃で断ち切られた。僕とヤミノの「繋がり」が、切れた。


「良かった……。承一、これでアンタを道連れにしないですむよ……」


 ヤミノが言った。


 そのヤミノの体を、巨大な水の「手」が掴んだ。


「じゃあな……」


 消え入りそうな、ヤミノの微笑み。それが、遠くへと、離れて行く……。


 そして、川の中へ、消えた。




 僕は、ヤミノと繋がったままでいたら彼女を助けられないと、そう思っていた。だから、あいつを助ける為に、繋がりを切ってもらおうとした。


 それなのに。


 現実に、繋がりが切れた今。僕の方が助かる事になってしまった。あいつを見送り、自分だけが生き残る事に……。


「そうはさせるかー!」


 僕は走った。


 既にヤミノは川の中だ。地上からはもう見えない。


 だけど……。僕らにだけ見える、半透明な赤い縄が、切られたその先端が、まだ川岸に残っていた。するすると水の中へ吸い込まれていくそれへと、全力で飛びつく!


「取った!」


 間一髪だ! そして。


「うおお!」


 僕自身の体から伸びている、もう一方の縄の先端と、結びつける! 二本を一つに。切れた繋がりを、切れた心を、もう一度繋ぎ合わせる為に!


「そなた、何をやっておる? アホなのか?」


 水漬女(みづめ)様の声を無視し、川から全速力で離れる。


 水の「手」が襲い掛かってくる! ばしゃっと、真上から叩きつけられる。その衝撃に、意識が飛びそうになる。


 だがその時には、僕の手は、川岸に立つ祠に届いていた。しっかりと掴まる。小さく、ぼろく、心許ない作りの祠だが、これこそが水漬女(みづめ)様が祀られている祠なのだ。おいそれと壊れる事はないはずだ。


 波が僕に覆いかぶさってきた。僕は完全に水の中にいた。川へと引きずり込まれそうになる。祠にしがみ付いていた手が、緩む……。


「くっ!」


 波の「手」とは別に、体の奥、芯が、強く引っ張られる。


 祠にしがみ付きながら、後ろを振り返る。水の中で目を開く。


 うっすらと、細い縄が、僕の体から伸びている。その縄の先にいるのは……、ヤミノだ!


 ヤミノ、僕とお前はもう一度繋がったぞ! だから、僕は耐えねばならない! 負けるかーー!


 ごぼごぼと泡を吹きながら、必死に祠にしがみ付く。


 ヤミノ……、頑張れ……!


 突然、体を包んでいた水が一気に引き、僕はどさっと地面の上に投げ出された。


 げえげえと水を吐く。耐え切った、のか。


「しょ、承一ぃ~」


 ヤミノが、かろうじて川縁にのびていた。


「ヤミノ、しっかりしろ!」


 這うようにしてヤミノのそばに行く。


 それから周りを見渡した。僕とヤミノしかいなかった。あれだけいた学生服を着た若い衆が、一人も残っていない。三百人はいたはずだ。それが全員、川に飲み込まれたのか。


 でも、僕らはまだここにいる。




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