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緊縛ダークエルフ  作者: クルクルパー
第四章 僕らの緊縛(アンアンチェイン)
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4-4

●4-4


 竹林の中を流れる小川。そのほとりにある祠。


 僕とヤミノは会長よりも一足早くそこへ来ていた。


「相変わらずしょぼい祠だ」とヤミノ。


「お前、そういう事言うなよ! 夏祭りの時なんかは賑やかなんだぞ。お寺の方だけだけど……。でも、その時にはこちらの祠にも人が流れてくるんだよ。ガチャガチャのおみくじも補充されるんじゃないかな」


「寺からのおこぼれ頼みか……」


「ひどい言い草だな!」


 まあ、平たく言えばそうなんだけど……。でも言えないよね、祠の前でそんな事。




 さて、どうやって水漬女(みづめ)様を呼び出せばいいんだ?


 この間はヤミノが自ら飛び込んだわけだけど、僕はあんな危険な真似はごめんだ。


「どうしたもんかな」


 川面を覗く。水面に僕の姿が映る。


 と思いきや、水の底から、幼い女の子がこちらをじっと見ている!?


「うわああ!?」


 浴衣を着た幼い女の子が、すうっと浮き上がってきた。そのまま水から上がる。


「よく来たな人間と異人よ。この間はわらわを弄んでくれおって。どの面さげて来たのだ?」


「か、神様……」


「そうです。わらわがおこぼれ頼みの川の神です」


 聞かれてたのか。


「それは言葉の綾でして」


「やかましいわい」


 水漬女(みづめ)様はすっかりむくれている。口を尖らせて、幼女がへそを曲げている風にしか見えない。


「そなたらの言うように、わらわはパワーの弱いへっぽこ神じゃ。否定は出来ん。過去の栄光は時の彼方じゃ。だが、あの頃は良かったなどとは言わぬぞ。それは負け犬の言じゃ。わらわは待つ。いずれ力を取り戻せる事もあろう。そう信じなきゃ、やってられんもん。信じる者は救われる、そんな言葉があるとかないとか? わらわは積極的にそういう甘い言葉に縋るぞ。縋りつくしてやるのじゃ。そしてそれが叶わなかったら……、誰のせいにすればいいんじゃ!?」


 うっうう、と泣き崩れる水漬女(みづめ)様。


 神様が泣いているなんてとんでもない事態なんだろうけど、小さい子供の姿なんで、あまり不自然じゃないと言うか……。僕としてもそれほど動揺しないのだった。


「まあまあ、水漬女(みづめ)様、そんな悲しまないで下さい」


 ハンカチを渡す。


「すまんな……。チーン」


「えっ」


「はい、サンキュ」


「いや、そのハンカチ、もういいです。差し上げます」


「本当? もらった~」


 今のはちょっと動揺しちゃったなあ……。




「で? 何の為にそなたらは来たのじゃ? 臆面もなく。わらわの愚痴を聞くボランティアか? 介護?」


「実は、水漬女(みづめ)様に是非会いたいという人がいるんです。水漬女様をこの世界の……いやまあこの辺りの……神様の代表と見込んで、どうしても挨拶したいという、それなりに高貴な人なんですけど、良いでしょうか」


「はあ? そんな物好きがおるはずがない。わらわのようなパワーの無い神が、代表とな? 何を申すか。逆にバカにしとるのか?」


「ち、違いますよ! 本気なんですって!」


「舐めやがって~! わらわの力なんぞを当てにする奴がいるはずないじゃろうが! わらわのようなちんちくりんの神を……。こんな、ただキュートで愛でたくなるだけのベイビードール・ゴッデスにひれ伏したいだなんて、マニアックな豚ぐらいなもんじゃ」


 卑屈! 神様なのになんて卑屈なんでしょう! 自分の容姿には自信があるようだけど。




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