2-12
●2-12
あれよあれよという間に、ヤミノの処遇が決まっていった。
ヤミノは僕のいとことして父さんの保護下に入り、ついでに僕と同じ高校へ転入する事になった。そんな事、簡単に出来るのか? と驚いたんだけど、どうやら父さんは町長や校長先生にも顔が利くらしいんだ。特に校長には無理が通るとか。
「あの男には貸しがあるからな。昔、あいつが女子高生の美人局にはめられた時に、かばってやったんだ。あいつはピュアな恋愛のつもりだった。あの目は嘘をついていなかったからな」
「へえ」
ん? でも、そもそもが、女子高生と付き合おうとしてたわけ? ん?
「それに、編入試験とかって、どうなるの?」
「編入と言っても、今日が入学式ってぐらいだからな。校長に上手い事やってもらったよ」
「なにそれ!? 必死に勉強して入試を勝ち抜いた僕らがバカみたいじゃないか!?」
「承一。そこに直れ」
「な、なにさ」
父さんに促され、対面に正座する。
「承一、お前言ったよな。ヤミノちゃんは自分が面倒見るって。だったら細かい事に気を取られて心をブレさせるんじゃない」
「細かい事って!」
「この世は温室じゃねえ。世の中ってもんは複雑に出来ているんだ。納得出来ない事もある。いや納得出来ない事の方がずっと多い。汚えぞ、この世は。その中で、お前はヤミノちゃんを守っていかなきゃならねえんだ」
「むう……」
刑事として、日々世の中の悪い面と向き合っている父さんの言う事だ。説得力がないわけがない。
「女一人を幸せにするってのは、生半可な事じゃねえぞ。小さい事に右往左往するんじゃない。清も濁も飲み込んで自分の糧にしちまえ。どんと構えて、踏ん張って、一番大切な事を見失わないようにしろ」
一番、大切な事。
「お前の気にしなくちゃならないのはそんな小さな事じゃない。本当にでかい壁がきっと来る。その時にこそ、お前は全力で立ち向かえ」
それは……。そんな事、言われなくたってそのつもりだ。
「ヘイヘイ、承一、頼むぜい!」
ヤミノが余裕の表情で言う。
「お前なあ! まあ、いいけどさ。ヤミノに降りかかる障害は、僕への攻撃でもあるんだし……」
僕とヤミノは繋がっちゃってるんだから。仕方ないよ。それにこいつは家族もいない、頼れる仲間がいない奴なんだから。僕がどうにかしないと。僕が面倒見る。助ける。分かってますよ。まったくもう。




