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緊縛ダークエルフ  作者: クルクルパー
第一章 やって来た厄介な方々
2/49

1-1

●1-1


 時刻は朝の八時ちょうど。


 住宅街の道を、僕は胸を張り腕を振って歩く。堂々と。男らしく。恥ずかしくないように。そう見えるように意識をして。


 気持ちの良い朝だ。新品の高校の制服。新品の学生鞄。


 歩きながら、ブレザーの胸ポケットに手を入れ、新品の生徒手帳を取り出す。改めて確認。恩田(おんだ)承一(しょういち)。僕の名前がしっかりと書いてある。


「よし。問題ない」


 今日は高校の入学式。新しい生活が始まる大切な日だ。青春をどう輝かせるかが、今日という日をどう迎えるかで決まるのだ。


 高校へは歩いて通える。


 今は八時ちょうど。入学式は九時からだが、八時半に集合、説明があるという。


 どんな連中がいるのだろう。どんな友達と出会えるのだろう。そして、どんな素敵な女の子と巡り合えるのだろう。緊張と興奮、そしてときめきで胸が高鳴る。


 落ち着け。おどおどしては駄目だ。余裕を持って、にこやかに、頼りがいのある男に見せなくては。


 生徒手帳をしまい、その手で今度は前髪をいじる。家を出る直前まで鏡の前でねばったけど、歩いている間にそうとう乱れてしまっている。だがまあ、そのぐらい自然な方が良いかな?


 髪型も服装も、朝から父さんに厳しくチェックされた。ネクタイの締め方も春休みの間に特訓された。


 ――「バッチリだ。どこに出しても恥ずかしくない。死んだ母さんに見せてやりたいぞ」


 その言葉がくすぐったかった。


 ――「分かってるな。恥ずかしくない生き方をしろよ。男にとって大切なのはそれだけだ。そうすりゃお前に相応しい相手と出会える。良い娘でも出来たら、俺にも紹介してくれよ」


 そう父さんは言っていた。


「恥ずかしくない生き方、か」


 それが父さんの教えだ。


 自分の頬を打ち、気合いを入れる。分かってるよ、父さん。


 そんな父さんだけど、今日は仕事で忙しいから式には出席出来ない。父さんは、警視庁の組織犯罪対策課の刑事なんだ。確か第六課だと言っていた。強面の父さんにぴったりの仕事だ。


 二年前に母さんが亡くなってから男手一つで僕を育ててくれた、厳しいけど尊敬できる父親だ。


 そんな父さんに教育されて、僕も自分に厳しい男になった、はず。とにかく情けない真似をして父さんに恥をかかせたくないからね。


 反抗期もなくはなかったけど、グレるなんてみっともない事はしなかった。別に優等生になりたいわけじゃないけど、一人の男として一人前にならないと、父さんと死んだ母さんに申し訳ないからね。




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