表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緊縛ダークエルフ  作者: クルクルパー
第一章 やって来た厄介な方々
11/49

1-10

●1-10


 そんな状態が、十分も続いていただろうか。いや、五分かな? もしかして一分足らずだったのかも。全然分からない。僕にはえらく長い時間に感じていたから。


 とにかく、不意に縄が体から解かれ、


「え? あた!」


「いてえ!」


 僕らはどしゃっと壇上に落ちた。


「勝手に、緊縛が解けた?」


「それに、首輪も縄も消えちゃった」


 そう言えば、公園でヤミノが投げ捨てた首輪と縄も、拾いに行ったが消え失せていた。無理矢理外さなくても一定時間が過ぎると解き放たれるのか?


「あ、お前の首に痣があるぞ。鍵穴のような形の。さっきまで首輪が嵌っていたところだ」


「そういうアンタもだぞ」


「え」


 つまりこれが、聖縛縄(ホーリー・ボンデージ)を架されているという印なのか。なんてこった。


「あ、あのお……」


 すぐ横で、校長先生が呟く。


「祝辞の途中だったんだけど……」


 校長は上目遣いで僕らを見て、それから体育館を見渡す。体育館は、悲鳴とどよめきのカウンターのように、静まり返っていた。


「あー、えーと」


 僕は立ち上がり、ヤミノを引っ張って立たせた。それから校長先生を丁寧に起こし、背広をはたいてあげる。


 全校生徒と先生達と保護者。皆が僕ら二人を見ていた。


 僕は演台に向かい、マイクをトンと軽く叩いてから、


「以上です。ありがとうございました」


 ぺこりとお辞儀。


「では、引き続き校長先生のお話をお聞き下さい」


 校長の袖を引き、マイクの前に案内する。続いて、ぼんやりとしているヤミノの手を取り、静かに階段を降りた。生徒達の間にある道を、静々と歩く。つとめて走らないようにした。


 僕らには、誰も、何も言わなかった。ただ、あちこちから、嗚咽と、「大丈夫、大丈夫だからね」と囁き合う声だけがしていた。出口を抜けた頃、校長先生の、「えー」という声とともに、ピガーっとハウリングが一つ聞こえた。


 終わった。終わったのだ。明るく楽しい高校生活を送るという、ささやかな願いが。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ