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 瞼の裏を飛ぶように彼女は走る。僕の手を握りながら。綺麗な手。滑らかな肌なだけではなくて、穏やかな心や人望の厚さ、怠らなかった努力なども読み取ることができる。


 繋いだ手はどんどん暑くなってしまう。そうだ、夏はそこまで来ているんだったな。だが手を離すのは嫌だ。


 彼女が指を差した。見ると綺麗な小川がある。水浴びでもしようか、さっそく向かおうじゃないか。


 川底の石のひとつまで確認できるほど水は透き通る。流れる水は何の色も持たないのに、優美だ。その冷たさはどんなに気持ち良いことだろう。


 ふと、なんだか彼女の手を離してはならない気がした。


 周りのものよりも少し大きい石が水にのまれてゆっくり動き始める。


 一瞬。その石に目を取られたそのほんの少しの時間。


 彼女は、繋がれた手を離した。


 待って。


 言葉が口から出てくる前に。


 彼女は川の向こう岸へ。


 振り返る彼女。


 シャボン玉が弾けるような笑顔。


 その表情は、僕の目にしたものの中で最も鮮やかな輝きを放っていた。


 「じゃあね、ありがとう」

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