旅立ち?
器用さってなんだよ!戦闘にほぼやくだたねえじゃねえか!
「ちょっとまて、器用さ以外にも俺にはなにか取り柄があるはず。」
俺はステータスカードを再び必死になって読んでみる。
「ないわよ。あとは全部大体平均位よ。私が全部確認したもの。それにしても器用さってなによ。旅芸人にでもなるのー?」
本当に、ない。他にとびぬけた値は見つからなかった。
「そこらへんにしときなサティ。いくらほかの取り柄が器用さだけだからって…器用さ…ククッ…」
「ババアてめえも笑ってんじゃねー!」
「わ、笑ってなんかいないよ。そうだ器用さだって使い道次第じゃ強力な武器に…なるもんな?」
「後半声のトーンに憐れみを混ぜるのやめてくれ!泣きそうになるだろ!そうだ、きっと器用さがこれだけの値なら魔法だってうまく使えるはずだ!」
「やめておいたほうがいいとは思うわよ?魔法的器用さと物理的器用さって別のものだから。それに物量が圧倒的すぎるものを器用さだけで扱うのは無理でしょ?どうしてもやりたいってなら止めないけど、死体の処理とかめんどうだからできれば森で一人でやってきてね。」
「はぁ、本当に役立たずなのか…?あぁ元の世界に帰ってだらだらと過ごしたい…」
俺が落ち込んでいるとババアが改まったように話し始めた。
「ケンヤにはすまないが、私が言いたいのはこの先なんだよ、私としてはケンヤも無事ブラックだったことだし、あんたたち二人で冒険に出てもらいたいと思ってるんだ。」
思いがけない言葉に先に反応したのはサティだった。
「はぁ!?おばあちゃん何言ってんの?わ、私をこんな男と二人っきりで旅させようっての?道中で何かあったりしたらどうすんのよ!?」
サティの言い草には物申したいところがあるが、そこは置いておこう。
しかし、俺は似非ブラックもいいところの戦闘力だ。俺もあまり気は進まない。
「いや、俺なんて戦力にならないし一人旅と変わんないんじゃねえか?」
「その点なら大丈夫。野営中に見張りがつくだけでも安心できるんだよ。大丈夫サティの剣の腕はかなりのものだ。雑魚モンスター程度じゃ問題にもならないよ。」
「ちょっとまっておばあちゃん、私の意見は無視?」
「サティ、こいつがあんたを襲えるほど甲斐性があるように見えるかい?」
「う、それは見えないけど…」
その評価もその評価で嫌だなぁ。
「サティ、旅に出たかったんだろう?背に腹は代えられないんじゃないか?あんたを拾ってくれるパーティなんてなかったんだろ?」
「うっ…ううずるい…。でも仕方ないのか…」
「ケンヤあんたも大丈夫だね?」
ババアが笑顔で言ってくるが目が笑ってない。
不安はあるが美少女との二人旅である、美少女との二人旅なのだ。
それにせっかく異世界に来たんだからあちこち見て回りたいし、俺に戦闘能力がないとわかった今では望み薄だが、何かの拍子に魔王を倒して元の世界に戻れればとの気持ちもあって、最終的には了承することにした。
「あぁ、よろしくなナイスバディ。」
「ねぇ、今私の名前違くなかった?」
「きのせいだろナイスバディ。」
「あんた言っとくけど変なことしたら手切り落とすからね?」
こえーよ。ごめんねナイスバディ。
なんだかんだで俺の冒険は始まったのだった。