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ボーイ・ミーツ・ガール

 あの後そのまま畑へ直行し、農作業を手伝わされている。

 しかしあのばあさんマジで日本語を話さない。日本語で話しかけても無視される。俺は掘れだのなんだのというジェスチャーを頼りに農作業を行っていった。


 数時間も農作業をやっていたところで日が暮れてきた。今日はこれで解放されるかな?

 ばあさんが俺に何かを言ったあとスコップを置いて畑の向こうに見える家のほうに戻っていった。

 何かジェスチャーしてたみたいだが暗くてよく見えなかった。

 まぁいっか。俺もスコップを置いてばあさんの後を追った。

 ばあさんのほんの一メートル手前まで来たところで、突然ばあさんが振り返った。

 ん?忘れものでもしたのか?戻んなくちゃかよ…

 俺足疲れてできれば無駄に歩きたくないんだけど、ばあさんがいないと家のこととかわからないし、ついてかなくちゃかなぁ…

 案の定ばあさんはこちらに半歩踏み出し…

 俺の頭を平手でひっぱたいた。

「なにすんだよババアいてぇじゃねぇか!」

 もう一発、今度はげんこつが飛んできた。

「痛ったぁ!ごめんなさいおばあさま何がいけなかったのでしょうか。」

 あのババア妙に力があるせいでげんこつがものすごく痛い。涙目になるくらい。

 ババアはさっきと同じ言葉を放ちながら俺らが置いて行ったスコップを指さした。

 あー、あれを片づけるから持って来いってことだったのね。そんなんわかるかよ。けどもう忘れないなこれ。

 ババアに対するストレスを募らせながらもげんこつの恐怖におびえた俺は、スコップを拾い持っていき、今度はババアのジェスチャーを真剣に見てスコップを所定の場所まで運んで置いた。

 今度はあってたらしく、殴られることはなかった。

 はぁ、これがこの先続くのか…言葉が通じないと苦労するんだなぁ…


 今度こそ本当に作業がおわり、ババアの家へと向かった。

 ババアの家はこの村の一般的なスタイルの木造二階建ての小さなものだった。

 ババアの家には明かりがついていて、なにか食べ物のにおいもしてきた。

 二階建ての家だし、ババアと一緒にだれか住んでいるのだろう。

 ババアが鍵をあけ中に入り、続いて俺も家に入った。

 この世界の家はいわゆる西洋式で靴のまま入るようになっているようだ。そしてこのあまり大きくない家は廊下もなく入るとすぐに生活空間が広がっている。

 目にはいいって来たのは中央に木製の食卓、左手におそらく穀物などの入ってるだろう袋たち、右手に二階へと続く階段、奥にコンロとシンクのようなもの、そしてそこでこちらに背を向け料理をしている…

 美少女。きれいなセミロングの黒髪をおろしているので、はっきりと顔が見えることはないが間違いなく美少女だ。

 今着ているのは部屋着なのだろうか、なんとなく下着の線が見えてる気のする薄い白のTシャツに、その白いもも、すらっとした足がはっきりと見えるほどの短さの緩めの黒のズボンというかなり無防備ないでたちだ。

 ババアが少女に呼びかけ彼女が振り返った。今のサティってのが彼女の名前だろうか?

 やはり美少女。正面から見るとよくわかる。胸は特段大きいということもないが小さくもない。完璧に近いスタイルだった。

 彼女は俺のほうに目を向けると突然怒ったような顔になり、ババアに向かって何やらきゃんきゃん騒ぎ出した。対してババアがそれをいなしている。

 何を言っているのだかわからないが、大方男がここに住むなんてありえないとかそんなんだろうなとは思う。

 しかし、言葉のつかえない俺では何をすることもできず、じっと見ているしかできなかった。

 しばらくして彼女はあきらめたようにため息をつくと夕食づくりに戻った。

 ババアに食卓に着くようにジェスチャーされたので座って待っていたところ、数分で夕食が盛り付けられて出てきた。

 夕食を食べながら彼女が自分のことを指しながらサティと言ってきた。やはりそれが名前だったようだ。

 俺がサティと返すと、彼女は一度うなづいて食べる作業に戻ってしまった。

 言葉を話せないと無言の時間がこの上なく気まずい。本当はもう少し話したい気持ちもあったができないなら仕方ない。俺は黙々と夕食を食べた。

 食べ終わり、満足してるとババアに肩をたたかれた。そちらを見るとババアがいい笑顔で紙とペンを持っていた。

「あれ?もしかしなくても追加コースですかね?いやぁお客さん困りますよ当店は延長はなしd…痛い痛い痛い!ごめんなさいやるのでその俺の肩を砕かんとばかりに力入れるのはやめてください!」

 結局その日寝れたのは食卓のろうそくが尽きた後、つまり4時間ほど後であった。

 こんな農作業と夜の勉強の日々が続いて行った。


 一週、二週と経つうちにだんだん単語や簡単な文が分かるようになっていき、三週、四週と経った頃にはもう市場での買い物だって難なくこなせるようになったし、ジョークもある程度理解できるようになっていった。

 しかし、このころまで来ても会話の相手はもっぱらババアであった。サティは昼どこかに行ってるらしく、顔を合わせる時間が朝食、夕食の時しかなかったのだ。加えてサティはあまりこちらと話そうとしてくれない。塩を渡すときなど必要最低限の会話はするのだがそれ以上はできなかった。

 けれどババアの話でサティのことは少しだけわかった。サティはババアの孫らしい。サティの両親は冒険者をやっていたが、ある時サティをババアに預けて出ていったきり行方不明に。以降ババアが育ててるとのことだ。

 ババアから知れる情報はこんなもん。あれだけの美少女だし仲良くなっておきたいんだがなぁ…

 そんな風に過ごしていたある日の夕食の時間ババアが俺たち二人に言った。

「サティ、ケンヤ、あんたらに話すことがあるから明日は朝食終わっても外に出ないで待ってな。」

「なによ話って…そんなに大事な話なの?」

 サティがいやそうに答えた。

「あぁ、大事だよ。明日話すから今夜はさっさと寝な。」

「おばあちゃんが大事な話っていうくらいだし本当に大事な話なのね。わかったわ。お休みなさい二人とも。」

 顔はまだ納得してないようだがそういってサティは二階に上がっていった。初日にも思ったが育ててくれた恩からだろうか、サティはババアに頭が上がらないらしい。

「ほれケンヤあんたもさっさと寝な。」

「へいへい。」

 俺としては農作業もさぼれるので特に反対することもなく素直に従うことにした。

 しかもサティと仲良くなれるかもしれないし。むしろ少しウキウキしながらその日は寝た。

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