逢魔ヶ刻の告白は
「僕のことを好きになるなんて……バカもいいとこだね」
夕闇に呑まれそうになる時間帯。僕の目の前にいるクラスメイト、矢橋穂乃果さんを冷たく見つめる。
「馬鹿なんて……私は本気なの!」
若干ヒステリック気味に叫びながら言う彼女は、涙をほろほろと流し始める。だからといって僕はオロオロとするそこらへんの男子じゃない。
とりあえず、涙を拭いてもらうためにポケットからハンカチを取り出して、矢橋の涙を拭う。
「どうせ、僕に告白したのも、その涙も、全部ウソなんだろ?」
「そん……な! そんなことはないよ!」
「じゃあ、さっきからあそこにいる同級生さんはなんだろね?」
鋭く教室のトビラの先、廊下を睨む。すると、飛び跳ねたかのように黒い影が飛び上がる。
「だれかいるじゃん」
すぐに呆れた視線を彼女に向けると、彼女も目を見開いて驚いていた。……どういうこと?
「え……私、知らないよ」
「はぁ?」
怪訝そうに矢橋を見るけど、その顔に嘘は感じられなかった。だが、次の瞬間、大きな音をたててそれは入ってきた。
「おめぇらぁ! そこを動くなぁ!」
付いていなかった電気をぱちりと点け、一瞬眩しいと感じながら入ってきた人をみる。
その姿は、あれだ。まさしく怪しいおっさんだった。
「これがみえねぇのか! あぁ!?」
その見えないか、って言われたやつ、ナイフ、のつもりなのか? 僕には百均で売ってるおもちゃのナイフにしか見えない。
「ひぃ、ぁ……」
あれぇ? 本物じゃないよあれ? 矢橋さん鈍いの? ねえ?
まあいいや。とりあえずあの人を無力化しよう。
とりあえず掃除道具入れがすぐ近くにあるからそっから教室掃除するときに使うモップだっけ? あれを取り出して、
おっさんにむけて振り落とした。
「ぎゃふっ!」
一瞬意識が飛んだっぽいから、一気に詰め寄り膝蹴りを見舞う。その後に顎を揺らすように手の甲で殴りつけて、転ばせる。
「はい、終了」
「かっこいい……」
矢橋の恍惚な声な声が聞こえてきたような気もしたけど、まあいいや。
「それで、なんだけどさ。矢橋。お前はさっき、僕がお前を強盗犯から身を守ってもらったから隙になったって言ったけどさ」
つい先日に起きた事件を思い出しながら、僕は言葉を紡ぐ。
「あれも、今回も、武器は偽物だし、そもそも刃の鈍さが違うんだよ」
そういっておっさんが持っているものを取っておっさんに突き立てる。ほら、やっぱり刺さらない。いや、正確にはへこんだだけ。
「いいかい、矢橋。本物はさ……」
僕は腰からとあるものを取り出した。
「こうなるんだよ」
僕はニヤリと口を歪ませてそれをおっさんの心臓に突き刺した。
お読みいただきありがとうございます。
深読みしていただいた想像を、感想、メッセージのどちらかで教えていただけたら嬉しいです。