宇宙の真実
「すると、あなたはすべての宇宙のトップである…と?」
「有り体に言えばそうなるね。そろそろ次の話に移ってもいいかい?」
「あぁ、はい」
いきなり「私が全宇宙のトップだ」と言われても信じられるわけがないが、状況的に話を聞かないとわからないことだらけだ。ここは大人しくしておこう。
「この世界が多元宇宙である、と言うことはさっき説明した通りだけど、たぶん君が知らない世界がもうひとつある」
「それは…?」
「『精神界』と私は呼んでいる。君たちがいる宇宙空間を『物質界』と呼んでいるからその対比でね」
確かに、古代より言われていたことではある。魂だとか神だとかそういう胡散臭い類いのもので、どちらかと言えば哲学に近い話だ。決して科学と同列に語れるような話ではない。
「多分、今君は『科学的にあり得ない』とか思っているんだろう。でも、死んだはずの君がここにいるのはどう説明するんだい?ここはそういうものだと納得しておいてくれ」
……頭の中を覗かれた気分だ。確かに統括体の言うことももっともだし、強引にでも納得しておこう。
「この『精神界』だが、どの宇宙でも存在している。もちろん君の世界でもね。ただ、宇宙によって偏りがあって、極端に言うと99%精神界の宇宙や99%物質界の宇宙があるってことさ」
なるほど、つまりうちの宇宙は物質界の割合が多いんだろう。生まれてこの方そういう霊的なものは胡散臭さしか感じなかったし、仮にあったことが分かっても物質界の割合が多いから多数派に握り潰されることになるのは簡単に想像できる。
「その顔は理解出来たようだね。そう、君の宇宙は『物質界』の割合が多い。だいたい9:1で『物質界』が多いね」
9:1ってなかなかに不利だな精神界。
「そんな君の宇宙は、物質界の理論が主流になっていって、結果として『精神界』の神秘を扱う者たちは淘汰されていった。代表的なのは中世の魔女狩りだね。あれで多くの『精神界』支持者が死んでしまった」
なんと、魔女狩りは本当に特殊な能力を持つ人たちを殺していたのか。これを新しい学説として発表しよう!
俺もう死んでるけど。
「そしてここからがポイントなんだけど、宇宙の中で『物質界』『精神界』を信じている知的生命体の割合で、更に宇宙の『物質界』『精神界』の割合が変動するんだ。君たちの宇宙はそれによって99.999999999%ぐらいが『物質界』になっちゃったんだよ」
俺たちの世界では精神界はゴミクズ同然になってしまっていたらしい。数の暴力って怖いね。
戦いは数だよ兄貴ィ!
「まぁ、特殊な例としてこっちも見てて楽しいからいいんだけどね。とにかく、この宇宙全体のおおまかな概要は説明したけど、何か質問はある?」
そこで俺はすっと右手を挙げる。
「はい、どうぞ」
「俺をここに呼び寄せた理由は?見たところ死んだ人を全部ここに呼んで今みたいな話をしてる訳じゃなさそうだし。暇潰しか?」
多少口調が荒くなったが仕方ない。大事なことなのだ。
「ちょっと惜しいかな?実は──」
そこで俺は驚きの事実を知る。