三話目
「それで・・・えっと、助けるって何を助ければいいの?」
少女が何から助けてほしいのか、私はまだ知らないのでそこから聞いてみることにする。
「イエティの使い魔・・・あなた達の言葉でいう怪物・・・から逃げているの」
「か、怪物・・・」
漫画やゲームの世界でよく聞く単語。イエティっていうのは確か「雪男」という意味だった気がする。
その「雪男の使い魔」から逃げている・・・?
「どうして?」
「イエティは私達と長いあいだ敵対している種族なの。実は数時間前、ちょっとした私のドジで大勢の使い魔に囲まれたの。数体くらいなら相手できるんだけど、今回は質も量も全然多くて・・・もう私には数分だけあいつらを止めておく魔法力しか残ってないのよ・・」
「ちょっと待って!魔法力?敵対?いったいなんの・・・」
「ごめんね、やつらはもうじき私の魔法、カンジアールを破ってくる。詳しく説明してる暇はないの」
少女の口からでてくるよく分からない言葉に戸惑いつつも、時間が迫っていることがわかる。今、私が何をすればこの子を助けられるのか。それを聞かなくちゃ。
「じゃあ私は一体何をしたら・・・?」
「あなたには・・・・あの・・・私の変わりに・・・う・・」
突然口ごもりだす少女。
「何?どうしたらいいの?」
「えっと・・・その・・・やっぱり巻き込むのは・・・」
「今更何言ってるの!早くしないといけないんでしょ!?」
「う・・・もうどうにでもなれっ!今から私があなたに使い魔と戦えるだけの力を与えるわ!あなたを、私達と同じ存在、「魔法使い」に・・・!」
「魔法使い・・・!?」
これこそゲームやアニメの中でしか聞けない単語。この少女は私を魔法使いにするという。そして、この子も魔法使いという実感のない存在。
目の前にその「非日常なる存在」がこちらを見上げている。
「・・名前は?」
「え・・・落合日名子、だけど」
意を決したかのように、少女は大きく手を挙げ、大きな声で何かを唱えた。
「偉大な魔法使い、ワンダー・ノームへの敬意と共に、潤地音々(うるちねね)の繁栄魔法により、ここに落合日名子の誕生をお伝えします!」
その瞬間、私の周りに白い光があふれて、私を包んだ。
そして瞬く間に消えたと思うと、体中から力が湧いてくるのを感じた。