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1.羊のお願い
カタン。
隣の家の扉は少し古びていて、開けるたびにそんな小さな音がする。
この家には俺の大好きな女の子が住んでいて、彼女はなんだか、この頃あまり寝れてないみたい。
何でそんなことわかるかって?
そんなの簡単。
俺が、ずっと彼女のこと見てるから。
別にストーカーとかそんなんじゃないよ?
ただ純粋に好きなだけだもの。
例え俺が10歳の子供でしかなくたって、恋や愛の意味がよく理解できなくたって、君を思うこの気持ちだけは恋だって信じてる。
だから俺はこうやって不審者よろしく、夜中に自分の部屋を抜け出して隣の家にやってきたのだ。
とん とん とん。
彼女の部屋の襖を3回。
中からかすかな音が聞こえて、ゆっくりと襖が開いていく。
「真昼、こんばんは。」
ねぇねぇ俺は、君のことが大好きなんだ。
だからお願い、眠れない夜は隣においてくれませんか?