騎士の言葉――現状――
明日、いや今日(9/3)学校が休校なので台風迫る実家からです。
長い間馬車に揺られ、何度か休憩しながらも馬車は進み続けた。
騎士達の沈黙と重い空気で本当に長く感じた旅だった。
馬車は少しずつ速度を落としていく。窓の外には野営地という感じのテントの群れ。
どうやら戦場に到着したらしい。
完全に馬車が止まると、外から戸が開かれた。
「どうぞ勇者殿、こちらへ」
言った男はもちろん鎧姿で、さらに胸元には多くの勲章。
どうやらお偉い人のようだ。
勲章に向けられた目線に気付いたのか、男は言った。
「ああ、これですか。これは」
「将軍、説明は私が」
今まで車内にいて、一言も話さなかった騎士の一人が急に会話に入り込む。
「この方は将軍様です。この方面軍の指揮官でもあられます」
「まぁまぁ、そう堅苦しくせずに。この方は勇者殿だぞ」
「はっ、仰せの通りに」
「それで、勇者殿。我が軍の状況は知ってらっしゃいますか?」
そう言えば、まったく説明されていない。
「いや、何も」
「やはりそうですか。ならば軍議に招待致しましょう」
ということで参加させてもらった。
会場は周囲のテントと違い、一際大きく豪華だった。
先に将軍が入口をくぐる。
「勇者殿をお連れしたぞ」
「失礼する」
それに習って俺も中に入る。
するとテントの中の目、ほぼ全てがこちらを見た。
「どうぞあちらにお座り下さい」
勧められた席は一同が向かう長机から少し離れた場所だ。
席に着くと将軍が話し始める。
「ということで現状だ。報告を」
「今回の襲撃は、我が国の北西部に向けてです。」
「敵の兵力は、おそらく幹部級が一体に低級多数。我が方とは互角の数です」
「地形は平地で特に障害物もありません」
「今は膠着しており、戦略を非常に立て辛いです」
「ふむぅ、あまり良くないな。何か状況を打開する力は……」
「将軍、勇者殿に出てもらうのはいかがでしょう」
悩む将軍に言ったのは魔術士風の老人。しかしその眼は鋭く俺を睨んでいた。
「しかたあるまい。勇者殿、出撃していただけますか?」
ここは誰かが状況を変えなくてはいけない。それは分かる。
だがそこで俺とは……。
しかし行くしかない。
「分かりました。行きましょう」
「では明朝にお願いしよう。それと、誰か随伴させようか?」
多分遠くからの魔法で終わるだろう。
「いいえ、一人で」
「うむ、分かった。ではこれで軍議は終わりにしよう」
言葉と同時に何人かは立ち去る。
しかし、中には俺を睨む奴もいた。
まるで嫉妬しているようだった。
ともかく俺は、明朝出撃する事になった。