異世界への訪れ――現実――
結構大勢の方に読んでもらっています。
でも、出来れば感想とか評価してもらいたいなぁって思わなくもないです……。
王達に見せた、見た目だけはド派手な光魔法は大ウケだった。
そのお陰か聖武具と呼ばれるらしい武器・防具一式をもらった。
ついでに勇者の証、真っ白なコートももらった。
「勇者よ、明日から早速頼むぞ」
「はいっ!」
そのまま意気揚々と与えられた自室に入った。
ベットに横たわると今日の出来事が思い浮かぶ。
(急にファンタジー世界に召喚されて、勇者になって。俺ってどんな主人公だよ!)
そしてある事に考えが至る。
(主人公だから雑魚相手は簡単だし。強敵にも結局勝てるし。あ、そう言えば姫に会ってないな。)
どんな姫か想像してみた。
(何か、いかにも上品な顔と仕草に優しい性格の完全無欠なら良いな。それで勇者の俺に惚れて。)
もう笑いが止まらない。これからの人生、バラ色だ。当面一番の問題は魔王だけ。
しかも勇者だから最終的には勝つのが当たり前。
ワクワクと妄想が止まらない俺を現実に引き戻したのはノック音だった。
「勇者殿、夜分に失礼する」
声は先ほどの魔術士だ。
「どうぞ」
なんだかんだしている内に夜だったようだ。
今更ながらそれに気付く俺。
それはともかく、入って来たのは予想通り魔術士だった。
「どうしたんです?」
「一言礼を言おうと思って」
「礼?」
「ああ。私は王に脅されていてな」
「どんな脅しを?」
「勇者を召喚しろ。さもなくば牢屋にブチ込んで拷問の果てに殺す、とな」
「は?う、嘘だろ?」
あまりの内容に思わず耳を疑う。
ついでに今までの浮かれた気分も吹っ飛ぶ。
「いや、本当だ。今この国の政治はアイツが実権を握ってる。周囲は賛成する奴らばかりで固めてる。
今は魔王がいるから大丈夫だが、居なくなれば気に入らないって理由で他国を侵略しかねない」
「その侵略する時俺も……」
「当然最前線行きだ。なんせお前は魔法だけで国一つを滅ぼせるからな」
俺は驚きを隠せなかった。
勇者がそんな風に扱われるなんて。
頭が上手くまとまらない。
話を変える様に魔術士は壁を見る。
「そうだ、今日もらったコートがあるよな」
「ああ」
「アレが勇者の正装だから、明日のパレードに着て行くの忘れるなよ」
「パレード?」「そうだ。お披露目を兼ねて、だそうだ」
「本当は何のパレード何だ?」
「魔王討伐軍団出発のな。サプライズ参加って所だな」
「はあ………」
「ま、明日は早いからもう寝ろ。今は休むべきだ」
そう言って魔術士は部屋を出ていった。
立った状態からベットに倒れこむ。
色々と良く考えた方が良い。
先ほどとは逆にまったく浮かれない想像をする。
(もしかして俺、このままなら勇者という名の奴隷!?)
想像するだけで身震いする。
(そして死ぬまで武器として、道具として扱われる)
考えれば考える程暗くなる。
明日のパレードも嫌になる。
けれど、と俺は思った。
(間違いなく魔王はいるんだし、勇者の役目は魔王の討伐。そこまでしてから考えよう)
それは甘かったのだろう。だが、あの時の俺には最善策に思えた。
戦いとは何か、戦争が人に何を与えるかを知らなかった俺には。